spartyセミナーレポート

パーソナライズシャンプーのD2Cブランド“MEDULLA”を展開し、急成長を遂げている株式会社Sparty。
同社の急成長の背景には、戦略的な広告LP運用による新規顧客獲得があります。

アライドアーキテクツでは、そんな同社の広告LP戦略についてお話いただくべくオンラインセミナーを実施。同社が広告LP戦略を考えるうえで大切にしている点や、具体的な効果検証方法にいたるまで、EC通販事業の新規顧客獲得を飛躍させるポイントについて様々なお話を伺いました。今回は、同社のLP戦略の失敗談まで飛び出した充実のセミナーについて、たっぷりとご紹介していきます。

スピーカー
株式会社Sparty プロモーション担当 坂口 光氏

モデレーター(五十音順)
アライドアーキテクツ株式会社 SaaS本部長 藤田 佳佑氏
Appier Japan 株式会社 セールスチームマネージャー 麓 貴史氏

戦略的なLP施策に欠かせないのは、「LPの目的」の定義

藤田氏:本日は、「新規顧客獲得を飛躍させる、 EC通販企業のLP戦略の裏側」をテーマに、株式会社Spartyの坂口さんをスピーカーにお迎えしてディスカッションしていきたいと思います。私は本日モデレーターを務めますアライドアーキテクツ株式会社の藤田です。よろしくお願いいたします。

麓氏:Appier Japan株式会社の麓と申します。本日藤田さんと共にモデレーターを務めます。我々はAIテクノロジーを駆使したweb接客ツールやMAツールの提供を通し、お客様のECサイトや自社アプリの改善施策をご支援しています。今回は新規顧客獲得を飛躍させるLP戦略がテーマということで、事業会社さんをご支援している立場から色々とお話を伺っていきたいと思います。よろしくお願いいたします。

坂口氏:株式会社Spartyの坂口です。2年前ほど前より通販業界にてプロモーションやマーケティング施策に従事してきました。Spartyには2019年に入社し、新規顧客獲得を目的としたプロモーション全般を担当しています。本日はよろしくお願いします。

spartyセミナーレポート 坂口氏

Q1:LP戦略を考える上で最優先にすべきことは?

A:LPの目的をしっかり定義して運用すること。

藤田氏:早速ですが最初のテーマ「LP戦略を考えるうえで最優先にするべきこと」についてお話をお伺いしたいと思います。定性的なもの、定量的なもの色々あると思いますが、Spartyさんが最も大切にされているのはどんなことでしょうか?

坂口氏:LPでは「この商品で何が実現できるのかを伝える」ことを1番大切にしています。もちろん薬事法の観点からお伝えすることが難しいこともあるのでそこには注意しながら、お客様にしっかりと商品を理解してもらうことを目的として、LPに掲載するコンテンツや導入するツールを選んでいます。

Q2:LPで商品理解を促すための工夫とは?

A:ファーストビューの工夫は必須。その他コンテンツの表示順や内容を工夫することで商品理解を促し、CVRの改善につながる。

藤田氏:商品についての的確な理解を促すという目的を達成するためには、具体的にどのような点に気をつけていらっしゃいますか?

坂口氏:まず、お客様がLPに遷移した時の第一印象である、ファーストビューを大切にしています。お客様に理解していただきたいMEDULLAの1番大きな特徴は、自分の髪に合わせてオーダーメイドできるという点です。そのためLPのファーストビューは、その特徴をいかに理解してもらうかをポイントにおいて制作しています。具体的には、5色のシャンプーのボトルを並べて商品の「カスタマイズ性」を伝える画像を使用することや、掲載するテキストにもカスタマイズ性を訴求する要素を取り入れています。

spartyセミナーレポート MEDULLA
「MEDULLA」の新規獲得用広告LPのファーストビュー。商品の1番の特徴であるパーソナライズに対応したシャンプーであることが的確に表現されている。

麓氏:ファーストビューで「カスタマイズ性」訴求を行うと決めるまでには、他の訴求軸も試されたのでしょうか?

坂口氏:はい。商品のクオリティが伝わるような「髪の毛がサラサラな女の子の画像」を使用したこともありましたが、それほど高い成果はでませんでした。また、「おしゃれなシャンプー画像」も試しましたが、やはりカスタマイズ性を訴求した画像の方が、CVRの改善幅が大きかったです。

ただ、媒体によっては違うファーストビューの方がCVRが良い場合もあります。大切なのは様々な可能性を試して効果検証することで、媒体ごとに最適なLPにしていくことだと考えています。

麓氏:CTAについてはどんな検証や工夫を実施していますか?

坂口氏:CTAボタンの文言については様々なパターンを検証しています。現在は「今すぐカスタマイズする」という文言にしていますが、こちらもたくさんの文言を試してたどり着いたものです。また、ボタンの色についても同様で、検証した結果、現在採用している緑色のボタンになりました。

麓氏:何色のボタンがいいのかは顧客層にもよるかもしれませんね。MEDULLAさんのお客様の年齢層はどのあたりがメインなのでしょうか?

坂口氏:20代後半から30代後半です。

麓氏:それくらいの年齢層は緑を押しやすいのかな。これが50代~60代だと、ゴールドのボタンが効くという傾向もあるんですよ。

藤田氏:また、ファーストビューにCTAボタンの要素がないのは、ブランドの世界観を重視した結果でしょうか?という質問もいただいています。

坂口氏:これは世界観を重視したのではなく、LPを見てある程度商品を理解してもらった後にCTAを置いたほうがCTRが良かったためです。

麓氏:確かに、CTAボタンはファーストビューからは少し離れた場所にありますよね。

坂口氏:はい。元々はもう少しファーストビューに近いところに表示していました。しかしファーストビューとCTAの間にコンテンツを入れて検証したところ、いくつかコンテンツを挟んだ方がCVRが良かったため、現在の形に落ち着いています。間にどんなコンテンツを置くのかについての検証は、今後もっと様々なパターンを試してみたいと思っています。

麓氏:現在LPには、テレビCM動画も掲載されていますが、掲載位置は結構下ですよね。これはどういった狙いがあるんでしょうか?

坂口氏:メディアコンテンツの近くの場所として今はここに掲載していますが、どこの位置が良いのかについては、正直まだ検証が追いついていません。
その他のコンテンツ掲載位置の工夫でいうと、権威コンテンツなどお客様が商品に対して納得してもらうためのコンテンツは機能性訴求よりも上に表示しています。こちらもテストの結果、CVRが改善したのでここに置いているという背景があります。

ブランドの世界観を守ることで、商品に対する納得感を醸成する

Q3:商品に納得して購入してもらうにはどんな工夫が必要か?

A:LPから遷移するコンテンツページを活用。ブランドの世界観を守ることで納得感の醸成につながる。

藤田氏:少し定性的なお話も伺っていきたいと思います。市場には既に多くの競合商品がありますが、その中でお客様に「MEDULLAは自分に合ったシャンプーである」と納得してもらうためにはどういった工夫をされていますか?

坂口氏:そこは広告LPではなく、広告LPから遷移するカスタマイズ診断ページで伝えています。特にカスタマイズページのUIUXはとてもこだわって制作しており、カスタマイズ診断を通して「自分に合っている」という納得感とブランドの世界観をお伝えできていると思っています。

spartyセミナーレポート カスタマイズ
CTA後に遷移する「カスタマイズ診断ページ」。診断を通して「自分に合っている」という納得感を醸成できるよう、ブランド担当がUIUXにこだわって制作している。

藤田氏:実際に質問に答えてカスタマイズしていくことで、「私に最適なシャンプーが得られる」と思ってもらえるんですね。

坂口氏:はい。このページはブランド担当が管轄しており、ブランドの世界観との整合性に配慮しながら制作しています。

藤田氏:坂口さんはこのページについてはご意見されないんですか?

坂口氏:はい。もちろんこのページのデザインがCVRに影響することはあると思っています。ただ、このページはブランドの世界観をつくっていくうえで大切な要素なので、敢えてCVRの改善は追わずに、まず世界観を崩さないようにすることを最優先にしています。

世界観重視だけれど“広告っぽいLP”である理由とは

Q4:広告LPとブランドの世界観はどう折り合いをつけるべきか?

A:ブランド理解と購入促進は別物ととらえ、使い分けを行う。

麓氏:一方で、LPにはかなり「広告の要素」が強くでている印象です。ブランドの世界観と広告LPのクリエイティブの違いについてはどう折り合いをつけているのでしょうか?

坂口氏:私たちは「ブランドの世界観を伝えるためのもの」と「新規のお客様を獲得するためのもの」は別物だと考えています。そのため、ブランドの世界観を伝えるためのコンテンツと、購買につながるような商品理解を促すコンテンツでは、担当しているデザイナーも変えています。

藤田氏:目的に応じて表現するものを分けているんですね。

坂口氏:はい。例えば、公式Instagramのアカウントでも、ダイレクトに商品購入を促すような投稿をすることはできると思います。ただ弊社の場合、Instagramは世界観を表現する場と位置付けているので、そうした投稿は行なっていません。ここでは世界観を伝える、ここでは購入してもらうためのアプローチをする、といったように意識的に使い分けを行なっています。

spartyセミナーレポート Instagram
同社のInstagramでは、洗練された商品画像とともに、ヘアケアのティップスや髪によいレシピ投稿も織り交ぜて、ブランドの世界観や思想を伝えていくようなコミュニケーションを行なっている。
画像引用:MEDULLA Instagram投稿(左)MEDULLA Instagram投稿(右)|medulla_jp

これまでのLP戦略・LP改善施策での“しくじり”

Q5:LP戦略での失敗は?

A:掲載コンテンツのデータ量が多すぎてページが重たくなり、CVRが下がってしまった。また、1つの媒体で成功したものを全媒体に横展開したらCVRが悪化した。

藤田氏:ここまでLPについての全体戦略や様々な構成要素についてお伺いしてきました。現在のような成果が出るLPにするまで、御社が実施してきたLP戦略や改善施策での「しくじり」についてもお聞かせいただけますか?

坂口氏:しくじりは、大きくは2つあります。まず1つ目は、動画やGIFを掲載したらページが重たくなってCVRがすごく下がったことです広告LP戦略として、「動画やGIFをいれた方がCVRが上がる」と言われ、多くのLPで取り入れられていたと思いますが、動画やGIFが多すぎるとページが重くなり、表示不良が起きたり、読み込みスピードが遅くなったりします。これはお客様にとって大変なストレスですし、実際にCVRも半分くらいに落ち込んだので、それ以降はかなり気をつけています。

藤田氏:なるほど。2つ目はいかがですか?

坂口氏:2つ目は1つの媒体で効果がでたものを全媒体で使用したらCVR下がってしまったことです。ファーストビューの検証の話でも触れましたが、広告を出稿する媒体や掲載面ごとに成果がでるLPは異なります。「この媒体で良かったから他でもやってみよう」と安易に判断するのはやめたほうがいいと思っています。

spartyセミナーレポート 登壇者
Appier Japan 株式会社 麓 貴史氏(写真左上)
アライドアーキテクツ株式会社 藤田 佳佑氏(写真右上)
株式会社Sparty プロモーション担当 坂口 光氏(写真下段中央)

LPの成果を正しく測るための効果検証方法とは

Q6:LPの成果を正しく測るための効果検証方法とは?

A:トラブルを見つけるために数字は1時間ごとに確認。検証パターンは増やしすぎず、まずは要素の違う2パターンで検証しながら、細かい部分を見ていく。

藤田氏:次にLPの検証について具体的なお話を伺いたいと思います。まず、LPの良し悪しを判断するためのCVRはどれくらいの頻度で確認しているのでしょうか?

坂口氏:計測ツールを使って15分ごとに数字を出せるので、CVRに大きな変化がないかは1時間ごとに確認しています。また最終数値は日毎に出しています。

藤田氏:1時間ごとに数値を確認するのは何か問題が起きていないかを見る目的でしょうか?

坂口氏:はい。例えばカスタマイズ診断ページの動作が遅くなるだけでもCVRに大きく変影響することがあります。そのためCVRが突然大きく下降した場合には、自分たちでテスト購入を行い、購入までの導線上にトラブルが起きていないかを確認しています。

麓氏:効果検証については2パターンで行なっていますか?それとも複数パターンを作って同時に検証を行なっているのでしょうか?

坂口氏:弊社では2パターンで検証しています。最初にLPの要素が大きく違う2本のLPをテストし、その後細かな要素を見ていく場合が多いです。
基本的には複数のパターンを同時に検証するのではなく、2つのパターンを短期間でテストし、その数字をもとに検証するようにしています。

藤田氏:正しい検証ができたと判断するタイミングは検証期間で区切っていますか?それとも一定のCVがでてきたら判断されているのでしょうか?

坂口氏:状況にもよりますが、CV数が100になった時のCVRを1つの判断軸としています。もちろん明らかにCVが伸びない場合にはその前に止めてしまうこともあります。

SpartyがLP改善に取り組む上で大切にしていること

Q7:LPを改善していく上で大切なことは?

A:LPの後にあるコミュニケーションとの整合性をもたせることが大切。そして、お客様の声を傾聴し、顧客理解を深めることも効果的。

藤田氏:ありがとうございます。こうした効果検証をはじめ、御社が「LPの改善に取り組む上で大切なこと」についてお話いただけますか?

坂口氏:LPの後にあるコミュニケーションとのギャップを感じさせないUIUXにすることは大切だと思います。
私たちの場合、LPの後にはブランドの世界観を重視したカスタマイズ診断ページがあります。そのため、CVRを上げることだけを重視したLPでは、カスタマイズ診断ページへ遷移したお客様に違和感を与え、離脱が生まれてしまいます。そうすると結果的にコンバージョンにも繋がりません。

もちろん商品は購入していただきたいですが、同時にお客様に商品を通してトキメキを感じてもらうことや、最高のカスタマーサービスを伝えることもとても重要だと考えています。

藤田氏:購入にいたるまでのお客様の行動や心理状態など、全体をみてLPを作っているんですね。その他、意識的に取り組まれていることはありますか?

坂口氏:弊社は実店舗も持っていますので、店舗にご来店したお客様がどの広告をみて来店したかをヒアリングし、お客様の把握するようにしています。
また、弊社は定期購入型商品です。定期購入のお客様のマイページには商品に対するフィードバック機能をシステムとして組み込み、お客様のリアルな声の把握に努めています。

藤田氏:こうしたフィードバックをLPや広告のコミュニケーションにも反映されているのですね。

坂口氏:はい。かなり参考にしています。たとえばテレビCMをLPに掲載する時も、実は悩んでいたんです。ただ店舗にいらしたお客様から「CMを観て来店しました」という声をいただいたので、それならばとLPに掲載することにしました。

藤田氏:ちなみに、LPを修正する時のアイディアはどのように出されていますか。社内の知見に基づいて出していますか。それとも他社LPを参考にしていらっしゃるのですか。

坂口氏:両方です。私が起点となってやることもありますし、外部のパートナーさんやアフィリエイターさんからアイディアをいただいてテストすることもあります。

麓氏:実際にLPを修正しようと思った時は、まず何から取り組まれていますか?

坂口氏:まず修正する要素の洗い出しをします。また、LPの修正案を練る場合にも、実店舗の担当者からお客様の声をヒアリングすることは行なっています。

藤田氏:店舗でお客様と接点をもつ方からフィードバックをもらえる環境は、とても良いですね。

坂口氏:はい。実際に来店するお客様は広告を見てらっしゃる方も多く、広告がお客様にどのような影響を与えているのかを把握できるのは、戦略を立てるうえで大変有効だと思っています。

藤田氏:ありがとうござました。今日は株式会社Spartyの坂口さんから新規顧客獲得を伸ばすためのLP戦略についてお伺いしました。

効果的なLP戦略を立てていくためには、日々丁寧な効果検証を行うことが必要なんですね。そして、的確に効果検証を行うためには、購入までの導線、お客様が広告に接触する時の心理状態、ブランドについてどう認識しているかなど、お客様の状態を正しく理解することが重要です。

LP戦略で新規顧客獲得を伸ばしていくためには、こうしたお客様についての理解を深めつつ、広告接触から購入に至るまでのお客様の行動を、線で捉えていくことが大切なのではないでしょうか。