TikTok Shop_海外トレンド編

TikTokが新たな収益の柱として注力する「TikTok Shop」が、2025年6月についに日本市場に正式参入する見通しとなりました。すでに米国や東南アジアで爆発的な成長を遂げているTikTok Shopの日本上陸は、国内EC業界に大きな変革をもたらす可能性があります。ショート動画とeコマースを融合させた新たなショッピング体験は、従来のECプラットフォームとは一線を画す革新的なモデルとして注目を集めています。

本記事では、TikTok Shopの基本概念から市場動向、海外での成功事例を解説します。

TikTok Shopとは?

TikTok Shopの機能と市場動向

TikTok Shopは、TikTokアプリ内で動画を視聴することで商品を発見、閲覧、購入できるeコマース機能です。2019年に中国で開始され、その後、東南アジア、アメリカ、イギリスなどで展開。また2025年中にはイタリア、ドイツ、フランスの欧州3ヶ国、そしてブラジルでもサービス開始が計画されています。

TikTok Shopは単にECサイトへの導線ではなく、アプリ内で決済まで完結できる機能を予定しており、いわゆる「インアプリショッピング機能」です。ユーザーはTikTok動画を視聴しながらシームレスに商品を購入できるため、「見る」から「買う」までの導線が非常に短いのが特徴です。

市場規模と成長率

TikTok Shopは世界的に急速な成長を遂げています。特に米国市場では驚異的な成長率を記録しています。

国別のTikTok Shopの数

TikTokショップの地域別GMV(総商品取扱高)

一方、ソーシャルコマース全体の市場規模も急速に拡大しています。SNS経由のオンラインショッピングは2023年には1.2兆ドル(約180兆円)、2030年には8兆ドル(約1,200兆円)を超えると予測されています。TikTok Shopはこの成長市場において、最も勢いのあるプラットフォームの一つとなっています。

従来のeコマースとの違い

TikTok Shopは従来のECプラットフォームと比較して、以下のような特徴的な違いがあります:

項目 従来のeコマース TikTok Shop
ユーザー体験 目的志向型(検索→閲覧→購入) 発見型(エンターテイメント→発見→購入)
コンテンツ形式 静止画像中心、テキスト説明 短尺動画、ライブ配信中心
購買導線 複数ステップ(検索→商品ページ→カート→決済) 超短縮(動画視聴中にワンクリックで購入)
マーケティング 広告と自社コンテンツが中心 UGC(ユーザー生成コンテンツ)が主体
アルゴリズム 検索履歴・購入履歴ベース 視聴行動・エンゲージメントベース
コミュニティ性 低い(レビュー程度) 高い(コメント、共有、リアクションなど)

最も大きな違いは「エンターテイメント性」です。TikTok Shopでは、ユーザーは商品を探すためにプラットフォームを訪れるのではなく、エンターテイメントを楽しむ中で自然と商品に出会い、購入に至るという新しい購買体験を提供しています。これにより、従来のECでは難しかった「衝動買い」や「発見型購買」を効果的に促進できるのが特徴です。

海外事例から学ぶTikTok Shop業界別成功パターン

アパレル・ファッション業界

ファッション業界はTikTok Shopで最も成功している分野の一つです。

ARADOX(ベトナム):ベトナムのアパレルブランド「PARADOX」は、TikTok ShopにおけるGMV(流通総額)が3〜5億ドル規模に達し、世界的にもトップレベルの成功を記録しています。特に若年層向けのカジュアルウェアが人気を集めています。

GymShark(イギリス):フィットネスアパレルブランドのGymSharkは、インフルエンサーマーケティングとTikTok Shopを組み合わせることで大きな成功を収めています。特にフィットネス愛好家によるリアルな着用シーンの動画が購買意欲を高めています。

コスメ・ビューティー業界

ビューティー製品もTikTok Shopで高いパフォーマンスを示しています。

Hair by Bellami(アメリカ):ヘアエクステンションブランドのBellamiは、TikTok Shopを導入してわずか3ヶ月で収益を約45倍に増加させることに成功しました。特にビフォーアフターを見せる変身系コンテンツが効果的でした。

Rare Beauty(アメリカ):セレーナ・ゴメスのコスメブランドRare Beautyは、TikTokでのメイクチュートリアルとショップ機能を連携させ、特に「自然なメイク」を求めるZ世代に人気を博しています。

食品・飲料業界

ユニークな食品や飲料もTikTok Shopで成功しています。

Chipotle(アメリカ):ファストフードチェーンのChipotleは、TikTokでのチャレンジキャンペーンとショップ機能を組み合わせ、オリジナルメニューの販売促進に成功しています。

特色あるスナック菓子:海外の珍しいスナック菓子や巨大グミなどのユニークなお菓子は、開封動画やASMR動画との相性が良く、TikTok Shopでの人気カテゴリーとなっています。

ホーム・ライフスタイル業界

家庭用品やガジェットも高いコンバージョン率を示しています。

便利グッズ・時短アイテム:「こんなものがあったのか!」と驚きを与える便利グッズは、TikTok Shopでの衝動買いを促進します。特に、使用シーンをビフォーアフターで見せる動画が効果的です。

ホームデコレーション:部屋の模様替えやDIYコンテンツと連携したホームデコレーション商品も人気です。特に「#RoomTransformation」などのハッシュタグと連動したキャンペーンが効果的です。

TikTok Shop参入に向けた準備

日本企業が今から準備すべきこととしては、以下のポイントが重要です。

・コンテンツ制作体制の構築
 短尺動画の制作ノウハウの蓄積
 トレンドに即応できる機動的なコンテンツ制作体制

・インフルエンサーネットワークの構築
 自社商品と親和性の高いTikTokインフルエンサーの発掘
 長期的な関係構築とコラボレーション体制の確立

・物流・カスタマーサポート体制の整備
 突発的な注文増加に対応できる柔軟な物流体制
 SNS経由の問い合わせに迅速に対応できるカスタマーサポート

・データ分析・マーケティング体制の強化
 TikTokの特性を理解したマーケティング人材の育成
 パフォーマンスデータの分析と迅速なPDCAサイクルの実施

・商品開発・調達の見直し
 TikTokで「映える」商品特性の研究と商品開発
 トレンドに即応できる機動的な調達体制の構築

まとめ

2025年6月に日本上陸予定のTikTok Shopは、従来のeコマースとは一線を画す「エンターテイメント型EC」として、日本の小売市場に大きな変革をもたらす可能性があります。その成功の鍵は「エンターテイメント性」と「コミュニティ」にあります。

単なるECプラットフォームの追加ではなく、消費者の購買行動そのものを変える可能性を秘めています。「見る」「楽しむ」「買う」が一体化した新しいショッピング体験は、日本のEC市場に新たな風を吹き込むことでしょう。

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