SNSの中でも、拡散性が高く幅広い層にリーチできるメディアとして活用が進むTwitter。
昨今は、新商品プロモーションなどの認知獲得だけでなく、よりブランドを身近に感じ購買のタイミングで想起してもらうためのコミュニケーションを取るために活用する企業が増えています。
今回は、Twitterで人気のアース製薬、沢の鶴の2社をお招きし、ブランド想起につなげるために、日々のTwitter運用においてどのような工夫をしているか、コミュニケーション施策として成果が出ている企業間コラボの内容について語っていただきました。
※セミナー概要:
Twitter×企業コラボの裏バナシ #2
~アース製薬・沢の鶴が語る、ブランド想起につなげるコミュニケーション施策とTwitter運用ノウハウ~
アライドアーキテクツ株式会社が開催したセミナーイベント。2022年9月13日にWeb上でのライブ配信形式で実施された。
登壇者
スピーカー(50音順)
モデレーター
Twitterを通じて生活者の身近な存在になり、ブランド想起につなげたい
ー木嶋:
本日は、ブランド想起につなげるために、日頃からどのようにTwitter運用をしているかお聞きしていきます。まずはTwitter運用の背景・目的をお話しいただけますか?
矢野氏:
沢の鶴は、1717年に灘の西郷で、米屋の副業として※のマークを掲げて酒造りを始めた会社です。昨今のアルコール業界は、少子高齢化や若年層のアルコール離れを背景に苦戦を強いられており、弊社もまさにその課題に直面しています。
以前はテレビCMも打っていましたが、売上の減少から広告費の予算削減が余儀なくされ、それまでのマーケティング活動が維持できなくなってしまいました。そのような中でこれから売上を維持・拡大するためには、今までと別の方法でしっかりと若年層にリーチする必要があると考え、SNSの活用をスタートしました。まずは2012年にFacebookを立ち上げ、その後2016年からTwitterとInstagramも運用しています。
ー木嶋:
2016年にTwitterを立ち上げた後、本格的に活用を開始したのが2018年5月でしたね。その時点で6,000だったフォロワー数が、2022年9月段階で10.9万まで成長していますが、この約4年間はどのような方針で運用してきたのですか?
矢野氏:
Twitterに注力し始めた当初はフォロワー数を重視して運用していました。フォロワー数が5万を超えたころからは、フォロワーとのより深いコミュニケーションを意識し、KPIをエンゲージメント率やインプレッション数に切り替えて運用しています。
投稿している内容は主に4種類です。
- 自社の取り組みの紹介
自社が開催するイベントなどの情報を紹介しています。 - クチコミ紹介
ユーザーの「沢の鶴」に関する投稿には積極的に関わっていき、RTや引用RTで紹介しています。 - ●●の日に合わせた商品訴求
例えば「今日8/11は #山の日」としてお庭でできるキャンプメニューと一緒に日本酒を楽しむ様子を投稿するなど、季節感を大切に投稿しています。 - 相性の良い料理×お酒の訴求
例えば暑い日には、氷を入れてキンキンに冷やした日本酒と、ゴーヤーの苦みが効いたゴーヤーチャンプルーをおすすめするなど、料理と日本酒をあわせて楽しむ方法をご紹介しています。
矢野氏:
私は企業側の立場にいますが、Twitterは「フォロワーの隣に座っている気持ち」で運用することを大切にしています。企業目線ではなく、ファン代表のような目線で投稿することで、より身近に感じていただけるのではないかと思っています。
こうした投稿を通じて、お酒や料理を目の前にしたときに、沢の鶴のことを思い出していただくことを目指しています。
ー木嶋:
続いて、アース製薬さんのTwitter運用の背景・目的をお聞かせください。
成田氏:
アース製薬は1892年に創業した日用品のトータルメーカーです。
我々は商品認知の高齢化/メディアの多様化に悩みを持っています。テレビCMを打つことで大きなインパクトがある時代もありましたが、今は「バスロマンは認知されているが、購買に繋がらない」「モンダミンは知っているが、どこの会社が作っているかは知らない」といった状況も見られるようになりました。
こうした課題を解決するためには、企業側から商品に関するメッセージを一方的に伝えるのではなく、日頃から生活者が頻度高くアクセスしているTwitter等のSNSでの発信・交流を通じて、「アース製薬」を身近な存在に感じていただき、ファンになっていただくことが大切だと考えました。
ー木嶋:
成田さんは、2019年9月からTwitter運用を担当され、当時5千だったフォロワー数を、2年半で約20万にまで成長させていますが、この間はどのような方針で運用してきたのですか?
成田氏:
もともと私が担当になるまでは、何月何日にどんな内容の投稿をするかをしっかり決めて運用していました。ただ、それによって例えば虫よけスプレー「サラテクト」の投稿予定日が雨だった時に投稿のエンゲージメントが下がってしまうなどの弊害も生まれていたのです。
そのため、私が担当後は運用体制を変更し、日々のトレンドや天候にあわせて臨機応変に投稿内容を変えたり、一方通行ではないコミュニケーションを心がけたりするようになりました。
その一環で始めたのが「おはようございアース🌏」というお決まりの言葉で始まる朝の挨拶投稿です。
最初はほとんど反応がありませんでしたが、地道に続けていたところ、徐々にいいねやコメントをいただけるようになってきました。挨拶いただいた方には私たちからも返信する、親しみやすい絵文字を使って投稿するなど試行錯誤を重ねたことで、「アース製薬=おはようございアース」がだんだん根付いてきたと思います。この挨拶投稿をきっかけに、他の投稿も楽しんでいただけるようになりました。
おはようございアース🌏
— アース製薬株式会社🌏 (@EarthOfficialJP) September 27, 2022
水曜日!
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| ◜𖥦◝ )ソロ~…
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|―u’
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|’ _つ つ
|―u’🌏., コトッ
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| ヒュン
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本日もよろしくお願いします🫡#アース隊🌏
成田氏:
日々の運用においては、ユーザー視点で投稿することを大切にしています。例えば、商品紹介に際して、社内の各ブランド担当から「これを伝えたい」というオーダーをもらいますが、それをそのまま発信するのではなく、まずはその商品を自分自身で使って感想を伝えるようにしているんです。このような方針に切り替えてからの方が、フォロワーの方からの反応が良いと実感しています。
ー木嶋:
お二人とも、Twitterを通じてブランドを身近に感じてもらうために、かなり細やかな運用をしていらっしゃいますね。こうしたTwitterの運用には、一日どれくらいの時間を使っていますか?
成田氏:
毎朝挨拶をしてこまめにリプライもしているので、ずっとTwitterに張り付いているのでは…と思われがちですが、実際に費やしている時間は、1日を通して合計1時間くらいです。
矢野氏:
私も同じです。Twitterやその他SNS運営だけでなく、ECやオウンドメディアなどデジタル施策全般を統括しているので、TwitterやSNSに割く時間は1日1時間程度ですね。
新たなフォロワーとのつながりを求めて企業間コラボ施策に注力
ー木嶋:
次に、Twitterにおけるコミュニケーション施策として取り組んでいる企業間コラボについて、実施の背景や得られている成果をお話しいただけますか?
矢野氏:
沢の鶴では「日本酒×〇〇」の〇〇に隠れた日本酒ユーザーにアプローチするために、日本酒から半歩ずらした親和性の高い企業様とのコラボに積極的に取り組んでいます。
ユーザーの方が「なぜ沢の鶴とこの企業がコラボするのか?」について納得できるストーリーが描けるところとコラボすることを重視しています。
また、こちらは企業間のコラボではありませんが、最近トレンドになっているアウトドアシーン「日本酒×キャンプ」のアプローチでキャンペーンを行ったところ、直前に実施したTwitterキャンペーンと比較して、総リツイート数:330% 、総インプレッション:480% 、総エンゲージメント数:325%の成果を出すことができました。
ユーザーの皆様に、「日本酒×キャンプ」のストーリーを自然に受け入れていただけて、自分ごととして捉えてもらえたことが成功の要因だったと考えています。
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— 沢の鶴【公式】🎼さわぁ~の つぅ~る🎶 (@sawanotsuru1717) March 10, 2022
🏕️ #キャンプ で楽しむ、米だけの酒 燗酒セット
プレゼント #キャンペーン🎁
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焚火で暖を取りながら🍶☺️
期間中10名様🎯その場で当たる🎯
本日最終日🍶🏕️
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🎁当選者にはすぐにDM📩
🔸https://t.co/2qYzgR4TH2 pic.twitter.com/tGlqsEDvCW
矢野氏:
また、複数の企業が合同で行うコラボキャンペーン企画にも参加しています。
2022年7月にアライドアーキテクツ社「echoes」が主催した「#夏の企業公式コラボフェス」に参加した際は、自社だけではリーチできないユーザーとつながることができ、企業間コラボを行うメリットを改めて実感しました。
アース製薬株式会社・沢の鶴株式会社が導入しているechoesの支援内容とは?
▶商品認知の拡大やクチコミ創出、オウンドメディアへの誘導の仕方にお悩みならこちら
ー木嶋:
アース製薬さんも企業間コラボに積極的に取り組んでいらっしゃいますが、その背景や得られている成果を教えていただけますか?
成田氏:
アース製薬では、お互いのフォロワーをミックスさせるために企業間コラボキャンペーンに取り組んでいます。事例を3つご紹介します。
①ドスパラ【公式】とのコラボ
株式会社サードウェーブさんが展開するパソコン専門店「ドスパラ」の公式アカウントとコラボキャンペーンを実施しました。
ドスパラのフォロワーはパソコンが好きな若い層、アース製薬のフォロワーは主婦層が中心であり、お互いのフォロワー層に被りがないので、お互いに新規ファンを獲得するチャンスと考えて行ったものです。
キャンペーンの当選商品は両方の層に受け入れられる内容を意識し、「パソコンの疲れを入浴剤で癒す」という訴求にしました。お互いに異なる分野の企業同士のコラボの場合も、このように最終的な着地に共通のストーリーを持たせることができれば良いのではないかと考えています。
キャンペーンの結果、約8,000名の新規フォロワーを獲得することができました。
②Coleman Japan(コールマンジャパン公式)とのコラボ
親和性の高い新規ファンの獲得を目指してコラボする場合もあります。
アウトドアブランドのコールマンさんとは、コールマンのロゴ入りの「サラテクト」を開発し、それをプレゼントの一つにするキャンペーンを開催しました。弊社の商品と相性の良いキャンパーの方からたくさんフォローしてもらえたのでありがたかったですね。
③ロート製薬公式アカウントとのコラボ
ロート製薬さんとは、以前から同じ製薬会社としてTwitter上での交流があり、その流れで「製薬会社同士でコラボキャンペーンをすることで話題になるのでは」という話になり、実施に至りました。
テーマは「#ロートとアースで真夏をさっぱり過ごそう」とし、お互いにそのテーマに沿った商品をプレゼントにしています。
ー木嶋:
こうしたコラボキャンペーン企画を立てる場合、相手先の企業にどのように声をかけているんですか?
矢野氏:
TwitterのDMで連絡を取り合う場合がほとんどです。コラボキャンペーンの始まりから終わりまでDMのやり取りに終始し、最後まで一度もお会いせずに終わるパターンも多いです。弊社からお声がけする場合もありますし、お声がけをいただくこともたくさんありますね。
成田氏:
我々も同じくDMを中心に連絡を取り合っています。キャンペーンの内容についても、両アカウントのダブルフォローにするか、プレゼント商品は何にするか、配送はどうするか…など、お互いにDMやオンライン会議でやりとりしながら決めています。
ー木嶋:
一度も会わずにDMだけでやりとりしているのはとてもTwitterらしい印象を受けます。その一方、他企業とコラボすることにリスクを感じることはないでしょうか?どのようにリスクヘッジしているのか教えてください。
矢野氏:
普段どのようにアカウントを運用しているのか、投稿から伝わってくる人となりはよく見るようにしています。
成田氏:
まったく同じです。相手の企業さんの普段の投稿をしっかり見るようにしています。投稿やクリエイティブの表現については、薬機法に抵触しないようになどしっかり確かめながら運用すればリスクヘッジできると思っています。
コラボキャンペーンの運営についても、「echoes」のコラボキャンペーン機能を活用して抽選や当選発表などもスムーズに行えているため、大きな工数を割かずに実施できています。
カウントダウン投稿、コミュニティ運営。新たな取り組みにも挑戦
ー木嶋:
最後に、Twitter運用において新たに行っている取り組みがあれば教えてください。
矢野氏:
農業機械などの製造・販売をするヤンマーホールディングスさんと一緒に「新しい酒米を作る」と掲げてクラウドファンディングを行い、その告知をするカウントダウン投稿とキャンペーンをTwitterで行いました。
「2022年6月1日、何かが起こる」という投稿から始め、段階を踏んで情報を公開するに連れて、フォロワーの方からも多くの反応をいただくことができました。
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— 沢の鶴【公式】🎼さわぁ~の つぅ~る🎶 (@sawanotsuru1717) May 23, 2022
🌅2022年6月1日、何かが起こる…✨
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成田氏:
2022年2月から、Twitter上でファンコミュニティ「#アース隊🌏」を結成しています。2022年9月時点でメンバーは約500名。Twitterスペースやライブ機能も活用しながら、メンバーとより深いコミュニケーションをしています。
結成の目的は、コミュニティの中で一緒にキャラクターを開発したり、新商品のお知らせをいち早く行ったりしながらコアファンを育成することで、ファンからのUGCを創出することです。実際に、今はコミュニティのメンバー同士の会話や、「#アース隊🌏」のハッシュタグと共にUGCを投稿してくれる方が増えてきています。
成田氏:
投稿のネタを自分一人で考え続けるのには限界がありますが、アース隊の皆さんがUGCを投稿してくださるので、それをRTや引用RTするだけで自分の投稿に置き換えることができます。アカウント運用を継続する上でも、コミュニティの存在の有難さを感じています。
ー木嶋:
身近で楽しいTwitterアカウントを通じて好きになってもらい、ブランド想起につなげるために、新たなチャレンジを欠かさないところがとても素敵だなと思いました。本日は、ありがとうございました!