SNSの画像を見たときの「食べたい!」「欲しい!」をどうやって購買に結び付けていくのか?購買につながる態度変容を起こすポイントを、写真アプリの投稿画像と関連データから考えます。

 
写真アプリで「購買につながる態度変容」を発生させるためのポイントはなにか?~1500万枚の料理写真から徹底分析~【SnapDish ビジュアルマーケティング論考】
 
こんにちは! 料理写真共有アプリSnapDishを運営しているヴァズ株式会社の阿部です。
きょうは、弊社が保有する1500万投稿の料理写真と関連データを使って、購買につながる態度変容を起こすポイントについてお話しできればと思います。
 
先日「10代女性、ファッションなどは検索サイトより写真SNSで検索」という内容のリリース(2017年2月13日、電通、http://www.dentsu.co.jp/news/release/2017/0213-009153.html )が出ていました。記事にもなっていたようでしたが、ご覧になられましたか?
ほかにもいくつか面白いデータがでていましたのでぜひご覧いただければと思いますが、今回注目したいのは同調査で発表されていた「およそ4人に3人の割合で、SNSのほかのユーザーの写真・動画(ビジュアルコミュニケーション)の影響で何らかの購買/消費行動を行ったことがあると回答」というデータです。
写真SNSが人々の行動に与える影響力が徐々に高まっていると言えます。
 
私たちが運営している料理写真共有アプリ「SnapDish」で先日とったアンケートでも、聞き方や母集団が異なりますが回答者の94%の方が「アプリがきっかけで商品を購入したことがある」と答えていました。私たちのアンケートは母集団が「写真SNS利用層」に偏りますので数値が高めに出るのは当然ですが、若年の一般層に限らず、デジタルメディアに触れる全ての層でこうした傾向が強まっていると言っていいでしょう。
 
では、人はどのようなビジュアルコミュニケーションに触れた時に、モノを購入しようと思うのでしょうか?購買につながる態度変容はどんな時に起きているのでしょうか?
下は、このコラムをお読みいただいているみなさんの多くもご存じと思いますが、いわゆる購買ファネル(パーチェスファネル)と言われている図と、従来そこで行われてきた主要なマーケティング施策です。
なお、きょうの記事では私たちが使えるデータということで食品・飲料を例にお話ししますが、商品や販売経路によっては、AIDMAモデルの代わりにAISASモデルを使っていたり、チラシ・店頭施策の代わりにSEMなど異なる施策を行っていたりするかもしれません。なるべくその場合にも役に立つ内容にできればと思いますので、適宜読み替えて参考にしていただければ幸いです。
 
図3
 
このモデルと施策が、昨今これだけでは完結しなくなっているという実感は、みなさん多かれ少なかれお持ちなのではないでしょうか? 図にすると下記のようなイメージです。
 
図4
 
冒頭の調査は、このごちゃごちゃっとした部分をビジュアルコミュニケーションで補える、ということだと思います。
きょうのテーマはここです。ビジュアルコミュニケーションツールを使って、どのように購買につながる態度変容を起こせばよいのでしょうか?
 
 

ビジュアルコンテンツが態度変容につながる局面とは?

 
ビジュアルコミュニケーションをきっかけに購入したのはどんなとき?企業の投稿を見たから?人気・有名な人が投稿しているのを見かけたから?それとも?
私たちは、「写真SNSが購買にどのように影響を与えるのか」という疑問について、先日ちょうどユーザー調査を行いました。
アプリを使うユーザーに対して、「アプリで見て買った商品はありますか?」と聞いて購買経験率を測定し、あわせて「その商品を購入したいと思った時はどのような時ですか?」という、購入のきっかけを聞いたのです。
選択肢として用意したのは以下です。
 
A、アプリ内で人気の人が投稿しているのを見た時
B、アプリ内で仲のよい人が投稿しているのを見た時
C、該当商品を使った、特定の美味しそうな料理/レシピを見つけた時
D、テレビや雑誌等で話題になっていた商品を、SNS(=SnapDish)上で見かけた時
E、アプリ内でみかけた商品を、実際に店頭で見かけた
F、自分がモニターで当たって試してみた時
G、いろいろな人がその商品を使って美味しそうな料理を投稿しているのを見た時
 
さて、どれが上位だったか、予想がつきますか?
 
実は、私たちが企業様や広告代理店様からいただく問い合わせで一番多いのは「有名人やアプリ内で人気の人に投稿してもらえたりしないんですか?」というご質問です。つまり上の選択肢のAを重視する視点と言ってもよいと思います。
確かにジャスティンビーバーの投稿でピコ太郎があれだけブレイクするのを見れば、そんな気持ちになるのもわかります。話題性という意味では芸能人さんや有名な方の投稿というのは絶大な力を持っています。
 
一方、そうしたソーシャルメディアでバズりやすい話題が、実際に商品の購入につながっているのだろうか?という疑問も(これは実際にお客様から「Youtubeで動画が話題にはなったが売上にはつながらなかった」というご相談をいただいたことがきっかけでした)、私たちの中にはありました。
結果、どの選択肢を選んだ人がもっとも多かったのでしょうか?
 
 

多様な投稿に接触することが購買行動の後押しを促進

 
下記が、アンケートの結果です。
 
図1
 
最も多くの人が選んだのは、Gの「いろいろな人」がその商品について言及しているのに触れた時に影響されたという答えでした。
これは、回数の概念を含んだ選択肢という意味では、広告でいうと「フリークエンシー」という考え方にやや近いと思います。
 
しかし、発信源がそれぞれ異なる情報に複数回接触しているという意味では、「同じCMを何回まで見せると態度変容が発生するか」というフリークエンシーの考え方とは異なります。これは、単一のマーケティングコミュニケーションプランではなかなか捉えがたい種類の接触と言えるかもしれません。
 
一方で、Aの「人気の人」やBの「仲のよい人」の投稿に影響されたという選択肢を選んだ人は、10%未満と想像以上に少ない結果になりました。有名だったり人気だったりする人の投稿に単純に接触させるだけではそれほど食品飲料を購入する効果の後押しにはならない、と言ってもいいでしょう。
(美容系ではもう少し有名人の影響が強いとも聞きますので、このあたりは商材の種類によって実施すべき施策の軽重は異なると思います。)
 
また、Dの「テレビや雑誌で話題になっていた商品」をアプリ上で見かけた時という回答が20%程度存在していることを考えると、クチコミ施策で有名な人を起用しようとして無理な施策になるよりは、単に広告施策でリーチをとってクチコミ施策と組み合わせるだけの方がシンプルに施策ができるようにも思います。
 
ちなみに下記は前回の記事でもご紹介した、実際の態度変容が発生しているコメントの抜粋ですが、ここでも「みなさんの投稿を見て」「いろんな使い方がある」ことを知って、購買意向が高まっていることが見てとれます。
 
WS000609
 
 

ビジュアルであることで、コンテンツの多様性と直感的理解が強化される

 
多様な情報に触れるという意味では、ビジュアルであることがその効果を強化している側面があります。
下は、あるお酒について言及している投稿を、テキストのみとビジュアルつきとで抜き出したものです。
 
図7
 
お酒の美味しさや、肴とあわせた時の楽しみを、さまざまな言葉で表現するのは簡単なことではありません。人によっては、「美味しい」「酒もらった」といった通りいっぺんの言葉しか出てこないこともあるでしょう。
そこにビジュアルがつくと、大きく条件が変わります。
 
世の中に、ビジュアルが全く同じ食卓風景というものは存在しません。文字であれば、例えば異なる複数の風景を「テーブルの上に皿が2つ」といわば抽象化して表現することができます。しかし写真の場合、「どんなテーブルなのか」「どんな皿がどう置かれているのか」「背景には何が見えるのか」「皿には何が載っているのか」という情報が自然に含まれてしまいます。そのため、投稿する人がそれほど意識せずともコンテンツの多様性が担保されるのです。
 
もちろん、家電や不動産など「調べて買う」のが当たり前の商品では、ビジュアル有無だけでなくテキストの内容が重視されることが多いですが、食品や飲料などの最寄り品に関連する領域では「そこまで興味がないからわざわざテキストなんて読まない」ことも多いはずです。
そもそも興味があまりない状態の人とコミュニケーションをする場合、ビジュアルで直感的に伝えることができなければ、そもそも態度変容につながる機会すらも失ってしまいます。
 

逆にうまくいかないパターンは、クチコミの内容をひとつのメッセージだけに統制しようとするとき

 
ここまで述べてきたポイントは、逆から見ると「うまくいかない企画」の示唆も与えてくれます。
たまに「特定の写真・レシピだけを投稿する企画をやってくれないか」という依頼をうけることがあります。私たちの経験からすると、このパターンでユーザーの態度変容コメントがきれいにでてくる確率は低いと言わざるを得ません。
それも当然です。ご紹介したアンケート結果からすれば、もっとも態度変容効果が高いと思われる「多様な投稿」に触れる機会を損ねてしまうからです。
実際に想像してみてください。同じようなビジュアルばかりが流れてくるタイムラインって、全く楽しくなさそうじゃないですか?
 
 

まとめ:ユーザーが多様性を楽しめる「余白」を作ることで、購買ファネルのステージ深化確率を上げられる

 
企業の広告宣伝の伝統的な考え方からすると、「メッセージを多様化してしまえ」しかも「その内容を第三者にゆだねてしまえ」という観点はなかなか受け入れがたい側面もあると思います。
もちろん企業が発信するメッセージについてはシンプルであるべきです。複数のメッセージは伝わりづらいですし、私自身もこうして記事を書いたり講演したりするときは、伝える内容を絞り、繰り返すのが鉄則だと思っています。
 
しかし、ユーザーを巻き込んだコミュニケーションを設計するときは、必ずユーザーが多様性を楽しめる「余白」を大きくとっておくべきだと思います。
広く知ってもらうための施策としては、広告ほど効率のよい仕組みはありません。しかし、そうした広告での接触だけで「買ってみよう」というほどの深い態度変容を起こすのは簡単ではないでしょう。
 
そのとき、ビジュアルコミュニケーションを上手に取り込むことで、購買ファネルのステージ深化の確率をあげることができます。図にするならば下記のような形になるでしょうか。各施策を補強するようなイメージです。
 
図8
 
私たちのアンケート結果からすると、広告施策と組み合わせて接触したり、クチコミに複数回接触させたりすることで、大きく購入確率をあげられることになります。
 
冒頭にも書いた通り、ビジュアルコミュニケーションの場は、段々と無視できない影響力を持ちはじめています。マーケティングの施策に取り込む場合は、ぜひこの記事でご説明したよう、「なるべく多様な投稿を引き出し、それに接触させていく」という点に気をつけて取り組んでみてください。
気になるところがあればどんどんお問い合わせいただければ幸いです。
 
 


<筆者プロフィール>
阿部 樹
阿部 樹 (Tatsuki Abe)
ヴァズ株式会社取締役。ウェブ系コンサルティング会社、事業会社を経て、190万ダウンロードを超える人気料理写真アプリ「SnapDish」を運営するヴァズ株式会社にジョイン。事業開発担当として食品・飲料メーカー様のクチコミ構築支援にあたっている。
SnapDishアプリアイコン
 
レシピと料理のカメラアプリ SnapDish
https://snapdish.co/
 
iOS
https://itunes.apple.com/jp/app/ren-qi-liao-linoreshipito/id439571223
Android
https://play.google.com/store/apps/details?id=com.vuzz.snapdish


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