写真投稿系企画を実施した際、その成果をどのように評価したらよいのか?KPIの設定から、データやレポート、分析結果の捉え方まで、実例を元に解説します!

 
写真投稿企画の分析やレポートはどこに着目すべき?実例からご紹介!【SnapDish ビジュアルマーケティング論考】
 
こんにちは!SnapDish阿部です。
今回は写真投稿企画の分析やレポートについてお話しできればと思います。
もちろん企画内容や広告主様の意図、レポートを作成する会社の考え方によって、どういう点に重きをおくかは大きく変わってくると思いますので、あくまで1例としてみていただければと思います。
 
 

KPIをどこに設定するか?

 
これは前回記事「写真アプリでの投稿キャンペーンを一時的な盛り上がりで終わらせず、意味ある施策にするためには?」の「ポイント5 適切なKPIの設定をしておかないと続けられない」にも書かせていただきましたが、私たちは以下の考え方をお奨めしています。
①ソーシャルコンテンツの質 × ②リーチ量 = ③ブランドリフト量
分析やレポートは、基本的にはこの軸にそって考えています。
 
 

「キャンペーンページのページビュー」は適切ではないことも多い

 
従来のタイアップ系の企画では「キャンペーンページのページビュー」をKPIにすることが多かったように思います。われわれもこの問い合わせを受けることがあります。
しかし、ソーシャル系の企画では、「キャンペーンページ」を見てもらうことだけを目的にするのはもったいないと思います。通常キャンペーンページというのはあくまで媒体やメーカーが作成するもので、「そのページを読む/見る」だけが目的なのであれば、1クリックあたりいくらという広告メニューで適切なセグメントから集客した方がはるかに効率的だと思います。
ソーシャルの文脈を持ったコンテンツは、その文脈の中、つまり現在ではソーシャルフィードのなかでみてもらうのが一番自然に受容されます。私たちはこれを「リーチ」と呼び、後述する「量」のKPIとして使っています。
 
 

ソーシャルコンテンツの質、特にビジュアルを評価するには?

 
まず、写真投稿企画の「コンテンツの質」から見ていきましょう。
写真投稿企画の場合は、なんといってもビジュアルの良し悪しでそこから発生するブランドリフトが全く変わってくるので、どんなビジュアルであったかその傾向を把握することが重要です。
これについては、私たちはレポートの中に下記のような、人気投稿を並べて雰囲気がつかめるようにしたものをいれています。
 
ソーシャルコンテンツの質、特にビジュアルを評価するには?
 
まずはこれを眺めてみて企画開始前にねらっていた世界観が伝わるものになっているかが一番直観的に良否を判断しやすいと思います。
また、たいていの写真アプリは1枚のビジュアルに対して、複数のコメントがつけられるようになっていますので、それを追いかければ発生したコミュニケーションを追いかけることができます。これについては、私たちは1件1件のビジュアルとそこから発生したコミュニケーションを下記のように1枚にまとめ、発生した投稿枚数分束ねたものをご報告しています。
 
 
これを読んでいくと、実際に広告主様のメッセージが伝わっているかどうかが概ね判断ができます。
この質の部分については残念ながらまだ定量化できませんが、ブランドリフトの内容に踏み込まず、媒体や企画の違いをまたいで比較評価するという程度であれば、例えば以下のような評価軸を使うことができます。
3. 意図を超えて素晴らしい
2. およそ意図通り
1. 意図に満たない
0. 問題外
事前の企画時にきちんと狙いが明確化されていれば、評価者が変わってもそれほど大きくぶれることはないでしょう。質の評価が低ければどれだけリーチしたとしてもゼロと評価ができますし、想像もしなかったような素晴らしいコミュニケーションを生み出せればそれも正当に評価できます。
 
 

リーチ量とその詳細をどのような項目で評価するか?

 
次に、量の評価を見てみましょう。
私たちが通常使っている指標は以下になります。
・ 投稿数 : 何件の投稿があったか
・ コメント数 : 投稿に何件のコメントがついたか
・ シェア数 : 投稿が何人にシェアされたか
・ リーチ数 : 投稿がフィード上で何人に見られたか

最終的にはリーチ量で評価しますが、シェア数や投稿数はリーチを発生させる源になりますので、リーチ大小の原因をつかむために集計しています。コメント数についてはソーシャルコンテンツの質の方の目安として使っています。(ちなみにこの数字は、お弁当など個人の記録の側面が大きいような投稿企画だと小さくなり、スイーツやパンなど作り方についての情報交換が行われる企画だと大きくなります)。
 
この「リーチ」については、その中身がわかるよう下記に分類しています。有償リーチのありなしは場合によります。
・ オーガニック直接リーチ: 投稿者の友達
・ オーガニック間接リーチ: シェアした人の友達(つまり投稿とは直接の友達関係にない)
・ 有償リーチ: 広告によって追加でリーチさせた人数

 
なお自分の友達すべてに「シェアする」という機能はTwitterやFacebookなどでは存在しますが、現在のところInstagramでは存在しません(メッセンジャーで個別にシェアできるだけです)。当然ですが、シェアがなければそれによって発生する間接リーチも存在しないため、Instagram投稿企画ではリーチは小さ目に見積もらざるを得ません。
サイズ感としては、私たちがやる施策でのボリュームゾーンは、投稿数で数百、コメント数で数千、リーチで数十万から数百万の下の方、といったサイズ感が多いです。これは企画や商品によってかなり変動しますのでなかなか一概には言えません。
 
 

質×量がどんなブランドリフトを生み出したか?

 
ここまで述べてきた質と量をかけ合わせた結果、どんなブランドリフトがどれくらいの程度発生したのかは、人の心の中身の変化になりますので、常時測定可能な指標はありません。アンケートベースで行うことが多いと思います。
アンケートについては私たち自身でも定期的にやっており、例えば以下のような数値が出ます。
質×量がどんなブランドリフトを生み出したか?
 
この場合あくまで私たちの媒体で接触できるユーザーが母集団になります。そうすると他媒体の効果との比較が難しいため、複数媒体で実施するキャンペーンなどでは、お客様側でパネル調査を行うケースも多いようです。
実際、パネル調査の結果をお聞きすると、ソーシャルできちんと作れたコミュニケーションに接触した方は、購買や体験を行ってくださる率が顕著に高いそうです。ただ、こうしたパネル調査はコストもかかりますので、質×量である程度は評価してしまおうというのが冒頭に示した考え方です。
 
 

さらに深く、コミュニケーションの中身を分析するには?

 
ここまでお話ししてきた「質×量=リフト」という考え方は比較的どんな写真投稿企画でも共通して使える分析のフレームワークです。しかし、それ以外にもインサイト抽出を行いたい、など一歩踏み込んだ分析を行うこともあります。
例えば下記は、ある商品に関連して会話されている会話データから「買う」という表現について深堀したものです。同時出現する単語と、実際にそれが会話されているシーンをレポート化しています。
 
同時出現する単語と、実際にそれが会話されているシーンをレポート化
 
この分析では「買いだめ」や「まとめ買い」という会話が出現しており、該当商品にまとめ買いニーズがあることがわかりました。これを「美味しい」「簡単」「野菜」「カロリー」など、分析対象商品の価値と関係するいくつかのキーワードで行っていくと、商品の価値がどのように受容されているのかを浮き彫りにすることができます。
もちろんこれまでもアンケートのフリーアンサーなどのデータを使ってこうした分析を行うことはできたと思いますが、「商品やその利用シーンについての会話」が分析対象になり、より自然な発話を分析できるという点がソーシャル系企画の強みだと思います。おもしろいインサイトを発掘できることもありますし、TwitterやInstagramでも分析可能なツールはでていますので、興味ある方は試してみるとよいでしょう。
 
ただし、テキストマイニングを行ったことがある方は想像がつくかと思いますが、この種の分析手法は分析者によって解釈が分かれたり、インサイトの質が変わってきたりすることが多く、また定量的な色合いを強くすると当たり前の結果しか出てこないなど、使い方がやや難しい部分があります。
 
 

さらに深く、ブランドリフトに至る経緯を明らかにするには?

 
もうひとつ踏み込んだ分析として、「私も買ってみた」「大容量のタイプを買い増した」「追加で買ってきた」などの深い態度変容にいたったユーザーを見つけ、このユーザーの行動や発話を時系列で分析していく、ということを行うケースもあります。
下記は私たちがそうした分析時にご提出するフォーマットの一部です。これだけではカスタマージャーニーの全体はわかりませんが、「買う」や「リピート」に至った前後はわかります。
深い態度変容にいたったユーザーを見つけ、このユーザーの行動や発話を時系列で分析
POSデータ等でなく、写真アプリで「購買した」という発話を分析することの強みは、こうしたストーリーや、そのビジュアルを明らかにできる点にあります。
 
下記はある企画で「ほしくなってきた!」とコメントしてくださった方の態度変容を時系列に追いかけたものです。16日間で12ビジュアルに接触した後に、そのようにコメントしてくださっていることがわかりました。
ある企画で「ほしくなってきた!」とコメントしてくださった方の態度変容を時系列に追いかけたもの
 
さらにこのケースでは、あるビジュアルが複数のユーザーの態度変容にかかわっていることがわかりました。
こうした態度変容のポイントが可視化できれば、これに近い体験を拡張していくことで「ほしくなってきた!」という態度変容を増やすことができると想定できます。
 
 

まとめ: 投稿数だけ、PV数だけ、という評価ではちょっともったいないと思います

 
ここまで写真投稿系企画の質・量やその結果としてのブランドリフトの評価、また投稿データの深耕として、会話データや時系列の分析などをみてきました。
「投稿数」や「キャンペーンページのPV数」は、従来使われていた指標などとの類推でわかりやすい指標ではありますが、ソーシャルキャンペーンの指標として常に適切であるわけではありません。
もし、自社の企画の評価の仕方に迷いがある場合は、ぜひ下記の考え方を使ってみてください。
①ソーシャルコンテンツの質 × ②リーチ量 = ③ブランドリフト量
 
この機会に投下コストに見合った成果が得られているか、きちんと評価してみてはいかがでしょうか?
 
 


<筆者プロフィール>
阿部 樹
阿部 樹 (Tatsuki Abe)
ヴァズ株式会社取締役。ウェブ系コンサルティング会社、事業会社を経て、190万ダウンロードを超える人気料理写真アプリ「SnapDish」を運営するヴァズ株式会社にジョイン。事業開発担当として食品・飲料メーカー様のクチコミ構築支援にあたっている。
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