新型コロナウイルスの感染拡大により人々の生活様式や消費行動が大きく変化する中、企業の販促・プロモーション活動も大きくアップデートする必要に迫られています。各社はこの激動の変化の時代を、どのように乗り越えようとしているのでしょうか?
今回は、カルビー株式会社 マーケティング本部 PR宣伝担当 小島 彰朗 氏に、ニューノーマルにおける同社のデジタルコミュニケーション戦略についてインタビューしました。
※本記事は2021年6月17日(木)にアライドアーキテクツ株式会社が開催したセミナー「デジタル販促×SNS最前線#3 withコロナ時代の2021年にリテール・メーカーが挑戦するSNSを活用したデジタル販促戦略とは?」の内容を編集したものです。
「実際に手に取って食べていただく」サンプリングが困難に、代わりにデジタル販促に注力
-コロナ禍以降、カルビーの販促活動にはどのような変化がありましたか?
コロナ禍により、リアルなサンプリングイベントがまったく実施できなくなってしまいました。
カルビーは創立70周年の老舗企業です。「じゃがりこ」「かっぱえびせん」など、一つ一つの商品の認知度が既に80~90パーセント程度まで取れている中、実際に手に取って食べていただくサンプリングイベントは、「おいしい」を伝える大変重要な販促施策でした。
サンプリングができなくなった代わりに注力したのがデジタル販促です。
コロナ禍による自粛生活がスタートした2020年4月にリニューアルした「Jagabee」でも、当初予定していたサンプリングイベントが実施できなくなってしまった代わりに、さまざまなデジタル販促施策に予算を投下しました。
例えば、2020年の夏にはRoomClipが開催するイベント「おうち夏祭り」に協賛、ユーザーの皆様がそれぞれのスタイルで「Jagabee」をおうちで楽しむ様子を投稿いただくキャンペーンを展開しました。新しくリニューアルしたパッケージをお部屋に飾って楽しんでいただいていたり、また食べ方についても、ディップにしたり、パンの上にのせてピザパン風にアレンジしていただいていたりと、私たちも思い付かないようなさまざまな「Jagabee」の楽しみ方を発信していただくことができました。
さらに、インスタグラム公式アカウントの運用も始めました。自分たちで投稿を手作りすることで「Jagabee」が大切にしている「素材感」を伝えたり、鮮やかな色は原則使わずにペールカラートーンに統一することで「ほっと癒される世界観」を作るように心がけています。また、「ポッタ」というJagabeeのキャラクターをメインに据えた施策も展開し、イラストを使った発信とそのキャラクターの奮闘劇も描くことでほっこり感と身近さを演出しています。まだまだフォロワー数は少ないですが、一定数のリーチと強い共感を生み出すことができ、リピートにつながる良い影響が出ていると感じています。
このように、「Jagabee」の「じゃがいもの味がちゃんとする」というキーメッセージ、「ほっと一息をつくときに寄り添う存在」という商品コンセプトをさまざまな角度から伝えていった結果、デジタルでもしっかり「おいしい」と「好き」を醸成することができ、売上につなげることができました。
デジタルでも「お客様との 1 to 1コミュニケーション」を大切に
-デジタルを通じた顧客コミュニケーションにおいて、大切にしていることは何ですか?
私たちは「エリアマーケティング」「SNSマーケティング」「ファンマーケティング」の3つの側面からデジタルを通じた顧客コミュニケーションを設計していますが、その全てに通じる軸として大切にしているのがお客様との 1to1 コミュニケーションです。
私たちは従来から「堅あげポテト応援部」、じゃがりこファンのための会員制ファンサイト「あつまれ!とびだせ!じゃがり校」(2021年3月終了)など、さまざまな取り組みを通じてお客様とのコミュニケーションを大切にしてきました。
これに加え、2020年9月には、従来からのファン組織をまとめる位置づけとして「ルビープログラム」というアプリをローンチしました。こちらは、カルビー商品をお召し上がりいただいた後にそのパッケージを追ってたたみ(折りパケ)、アプリで読み込むとルビー(ポイント)が貯まるプログラムです。貯まったポイントでじゃがいもの収穫体験や工場見学、ルビープログラムオリジナルのファンミーティングなどに参加いただけます。
「折りパケ」を楽しみながらポイントを貯めることで、より愛情をもってカルビーの商品に接していただきたい、そして貯まったポイントで特別なイベントにご参加いただくことでよりファンになっていただきたいという想いで運営しています。
デジタル施策の効果をより高めるために
-最後に、これからのデジタル販促施策の展望を教えてください。
デジタル販促施策の企画の質を高めるために、社内で研究チームを作りました。Twitter、Instagram、noteなどカルビーの各SNSの中の人が集まり、議論を交わすことで、今後より確度高く、デジタルを通じてお客様の「おいしい」と「好き」を醸成し、購買につなげていくことを目指しています。
また、さまざまなデジタル販促施策の位置づけを改めて明確にすることで、営業など社内の各部門との連携をさらに強化することも大切だと考えています。従来より、各デジタル施策がマーケティングファネルのどこに位置づけられているかという定性的な資料は作成していましたが、社内からは「各デジタル施策をどのように商談に活かしたらよいかわからない」などの声も上がっていました。
これからは、営業が販促施策を理解することでよりスムーズに小売店との商談が進み、その結果多くのお客様のお手元に商品が届く、そのようなプラスの循環を作り出していきたいですね。