ライオン株式会社のデジタル戦略におけるNPS活用についてのインタビュー。後編では、ハンドソープブランド「キレイキレイ」でのデジタルコミュニケーションにおけるNPS活用について聞きました!

 
ライオン株式会社 宣伝部 デジタルコミュニケーション推進室 内田 佳奈 氏

ライオン株式会社 宣伝部 デジタルコミュニケーション推進室 内田 佳奈 氏

 
※ライオンが運営する生活に関する課題解決をテーマとしたオウンドメディア
「Lidea(リディア)」における取組みついてはこちら↓
「NPS(ネットプロモータースコア)」でKPIが変わった?!
デジタルコミュニケーションの新機軸を目指すライオンのオウンドメディア戦略を聞く
【前編】
https://smmlab.jp/?p=43794
 
 

「キレイキレイ」のデジタルコミュニケーション戦略を評価する方法とは?

 
藤田:ここからは、内田さんが担当されている「キレイキレイ」ブランドにおける取り組みについて聞かせてください。ブランドのデジタルコミュニケーションを評価する際にも、NPSを活用しているそうですね。評価指標にNPSを使おうと思ったのは、なぜですか?
内田:ブランドサイトやブランドのSNSアカウント・Web広告を運用していく上で、効果を定量的に確認したかったからです。特にブランディングが目的の場合、ソーシャルやWeb広告を、やみくもに運営していると、フォロワー数増加やCTRなどの短期的なKPIに振り回されて本質的な目的を見失ったり、現場が疲弊したりしてしまいますから。それを解決するために、どういった施策がNPSの向上に寄与しているのか明確にすること、そして、単純なアンケート調査の実施ではなく、定期的に調査するNPSの回答者をユニークユーザーレベルでひも付けて個々の「心境の変化」を可視化する必要がありました。
 
 ハンドソープブランド「キレイキレイ」のブランドサイト

ハンドソープブランド「キレイキレイ」のブランドサイト
http://kireikirei.lion.co.jp/

 
藤田:これまで、どんな調査を行ったのか教えてください。
内田:2016年12月と2017年6月に「キレイキレイ」のユーザーを対象にアンケートによるNPS調査を実施しました。アンケートの回答者は初回が2万5000人、2回目は3万人以上です。そのうち約7000人は2回とも参加していただいたので、追跡調査することが出来ました。アンケートで集めた情報は、弊社のDMPに蓄積されているブランドサイトの訪問状況や「Lidea」の閲覧データなどと、ひも付けて分析しています。
 
藤田:これまで2回実施されたアンケートでは、どのような分析結果が出ましたか?
内田:1回目と2回目の結果を比較したところ、NPSが大幅にあがっていました。回答者のうち14%のユーザーの点数がランクアップしていたことが大きな要因でした。
また、NPSの点数がランクアップしたユーザーの行動を分析したところ、Facebookページに「いいね!」をしている割合が高いことが分かりました。これは、約半年間、Facebookページなどを通じて施策を打ってきた効果が、数字として見えたことがとても良かったです。ファンとの関係構築が進んでいることが、可視化できたのは嬉しかったポイントですね。これまで、SNSの施策の効果は、やや不明瞭だったのですが、初めて定量的に計測できました。
 
藤田:ユーザーの行動とNPSの点数をセットで分析すると、点数の意味合いも分かりやすくなりますね。新しい施策アイデアのヒントは見つかりましたか?
内田:そうですね。例えば、これまでID-POS分析などで設定していたキレイキレイのペルソナ像よりももう少し若い世代が、他者への推奨度が高いことがわかりました。また、「キレイキレイ」の推奨者の特徴を詳しく分析したところ、弊社が販売している中高年向けのオーラルケア製品「デントヘルス」のブランドサイトを、よく訪れるユーザーとの親和性があったんです。
想定しているペルソナが異なる製品で、なぜ親和性が見られたのかを色々と調べてみると、「妊婦」というキーワードが見えてきました。妊娠した女性は一時的に口内環境が悪化し、「デントヘルス」を買う傾向があるようなんです。妊娠中は衛生意識も高まる傾向があるので、妊娠中の女性は、両方の製品の推奨意向が高まるという仮説が立てられました。
藤田:すごく面白いですね。「妊婦」という新しい共通軸が見えてきたことで、ブランドをまたいだ施策のヒントも見えてきたんですね。
内田:そうなんです。これまでも「キレイキレイ」を産婦人科でサンプリングするという施策はあったのですが、「デントヘルス」のデータも踏まえて、新しい施策につながりそうです。
 
 

約7000人の追跡調査から見えたブランディングの課題

 
藤田:逆に、今回の調査から、なにか見えてきた課題はありますか?
内田:1回目と2回目の結果を比べたところ、推奨度の高いユーザーが「商品を他者に推奨する理由」として最も多く上げていたのは、2回とも「殺菌や除菌、抗菌などの効果が高いから」という機能価値でした。
「キレイキレイ」はこれまで、主に機能価値を訴求してきましたから、そのことが調査結果に明確にあらわれたわけですが、それは逆に言えば、機能的な価値しか生活者に伝わっていないということの裏返しでもあるんです。今後、お客様の裾野を広げるには、「キレイキレイ」の新しい価値を訴求していかなくてはいけないということが、改めて浮き彫りになりました。
 
藤田:同一ユーザーの態度変容を追っていくことで、ブランドイメージの変化も見えてくるわけですね。そうなると、調査対象の数だけでなく、ユニークユーザーを追跡して定点調査が行えることも大切ですね。
内田:それは、すごく大切です。統計的にも有意なサンプル数を確保できて、ユニークユーザーの追跡調査を行えるのが、「モニプラ」のすごくいい点だと思います。
 
藤田: Lideaだけでなく「キレイキレイ」のデジタルコミュニケーションのNPSを調査する際も、「モニプラ」を使っていただいていますが、「モニプラ」をご利用いただいたきっかけがあれば、教えていただけますか?
内田:ユーザーが「キレイキレイ」をなぜ好きになってくださったのか、なぜFacebookページをフォローしてくださったのか、そのあたりを聞いてみたいと思ったからです。「モニプラ」のアンケート機能を使えば、多くのユーザーの声が聞けるのではないかなと。
また、「モニプラ」の機能の中で良いなと思っていたのが、コメントの拡散機能です(編集部注:ユーザーがキャンペーンに参加するとき、LPにコメントすることが出来、それを自身のSNSアカウントにも任意でシェアできる機能)。この機能を使うことで、キャンペーンの情報がSNS上で拡散し、ブランドの認知拡大につながるので、「キレイキレイ」のSNS活用の目的に合うと感じました。
 
藤田: ここまでお聞きしてきて、NPSを顧客ロイヤリティの把握だけに留まらず、かなり工夫して活用されていると感じたのですが、NPSを上手く活用する秘訣はありますか?
内田:DMPを中心に、NPSの調査設計をしていることが、大きいと思います。NPSの変数を、アクセスログと紐付けてきちんと算出できますから。その変数に、モニプラで集めたユーザーの情報をシンクロさせていることが、上手くいっている理由かなと思います。
それから、NPSの使い方に関するポイントとしては、点数に影響を与える外部要因を考慮することです。例えば、「ビール」のNPSなら夏に高くなり、冬になると下がるといったように季節によって変動傾向があると思います。また、アンケートに対するインセンティブや、質問の内容によっても点数は変わってきます。つまり、やろうと思えば意図的に点数を上げたり下げたりすることが、できてしまうんです。恣意的な点数の調整を避けるという意味でも、株式会社ロックオンのようなNPSの扱いをきちんと理解している、中立的な立場の会社に分析を任せることが、大切かなと感じています。
 

株式会社ロックオン コーポレート戦略本部 マーケティングプラットフォーム戦略部 部長 中川 仁 氏

株式会社ロックオン コーポレート戦略本部 マーケティングプラットフォーム戦略部 部長 中川 仁 氏


藤田:中川さんに伺いたいのですが、ライオンさんの取り組みも踏まえて、DMPを上手に活用するためのヒントを教えてください。
中川:内田さんからもあったとおり、SNSのフォロワー数やCTRなどの短期的なKPIは関係者にもわかりやすく、もちろん重要な指標ではありますが、NPSはもっと本質的な指標と捉えています。
ライオンさんにはそのNPSへの理解を、WEB担当者だけでなく、製品に関わる幅広い社内他部署の方にまでご理解をいただき、一丸となって取り組むという社内姿勢・環境づくりができているということが、DMPやNPSの取り組みがうまくいっていることのベースにあると考えています。
 
藤田:デジタル戦略でのNPS活用について、今後はどのような取り組みを考えていらっしゃいますか?
内田:今後は動画の評価方法としてもNPSを利用したいと考えています。視聴回数は広告費をかければ増えますから、視聴回数そのものは本質的なKPIとは言えません。ソーシャルにおける動画の評価指標として、NPSは効果的ではないかと考えています。
また、すでに取り組み始めていることなんですが、「モニプラ」を使ったNPS調査の取り組みを、ライオンのウェブ施策全体に広げていきたいと考えています。弊社はメーカーなので、CPA効率を追求するよりも、生活者にブランドのことを、どれだけ好きになってもらえるか?どうしたら好きになってもらえるか?が重要です。そのための施策の評価指標としてNPSを活用していきたいですね。
 
藤田:NPSを多面的に活用していくことで、ライオンさんが取り組むデジタル施策のKPIが、ガラリと変わるかもしれませんね。今回は貴重なお話を聞かせていただき、ありがとうございました。
 


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詳しくはこちら↓
http://www.aainc.co.jp/news-release/2017/01577.html


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