ソーシャルテレビを具体化する時が来た!〜日本テレビ・ハリーポッター祭りとNHK文研シンポジウム〜
3月14日にワーナーブラザーズの試写室で日本テレビによる「ハリーポッター祭り」の発表会があった。
日本テレビは今年2013年、映画ハリーポッター全8作を放送するそうだ。それはすごい!ハリーポッターはいま中高生のうちの子供たちがともに育ったコンテンツなので感慨深いものがある。
その話は置いといて、そのハリーポッターはJoinTVをフル活用すると言う。それはまずですね・・・とイチから書くと大変なので、日経ニューメディアのよくまとまったこっちの記事をざざっと読んで。・・・はい、読みましたか?わかりやすいね、この記事!
それからソーシャル仲間の大元さんもASSIOMAで解説的な記事を書いている。これも読むとさらによくわかるね、うん!
人の記事を紹介ばかりしててもダメだね。それでさらにぼくの注目ポイントをあげておくよ。それはね、今回のJoinTVが”Off Air”も大事にしている点だ。これは新しい。そして本質的だ。
これまでのJoinTVは番組を観ながらのものだった。いちばん派手だったのは11月のエヴァンゲリオン放送時のセカンドスクリーンだった。視聴中に手元のスマートフォンで映画に合わせて遊べるよ、というものだった。
ハリーポッター祭りでももちろん、観ながらの遊びは楽しめる。でもそれだけでなく、視聴後にも楽しめる仕組みが出来ているのだ。
テレビ局の人たちは、本能として番組をライブで観てもらうことにしかカラダが対応できなかった。だからこそ、ツイッターでライブ視聴を盛り上げられそうだと言うことでソーシャルテレビに注目した。でも番組が終わったらすぐにまた次の番組のライブ視聴!となるもんで、ネット上に集まった人びとにはある意味、興味を持てなかった。
つまり、テレビ局はテレビの前に集まる人にしか興味がない。テレビの前に集まったひとがスマートフォンを手にその番組について語り続けるのだけど、次の番組が始まったらもうそれはやめてほしいわけ。次の番組に目を向けて欲しい。でも番組が好きだからこそ、もっといま観ていた番組について語りたい。次の番組はそうでもないんだよねー、なんて時にはギャップが起きていた。
ハリーポッター祭りではどうやら、ネット上に”ハリーポッター好き”な人を留めていくらしい。だから”Off Air”という言葉をわざわざ使っている。そして下の図のような循環を引き起こしたいらしいのだ。
これを観た時、ん?えーっと、なんかちょっと似た話がなかったっけ?と思ったら、あやとりブログにぼくが書いた「視聴者はユーザーになる。テレビはフリーミアムをめざそう。」という記事に近かった。もちろんハリーポッター祭りはフリーミアムになってるわけではないし、そもそもマネタイズはないわけだけど、構造が近いと思うわけ。
つまりね、ソーシャルテレビはそっちに向かっていくよ、ということ。
テレビを入口に、スマートフォン上に人が大勢集まる。これをつなぎとめてなんかかんか、しなくちゃね。ということだ。
ハリーポッター祭りの発表会を聞いていてぼくがすごいなあと思ったのは、社内的に良く話を通したなというところ。さっき書いたテレビ局の本能からすると、上の写真の循環は「なんだと?!」ってことになるのだ。「このOffAirってのはなんだよ。視聴者をネットに連れだすんじゃねえよ」なんてことを、誰かに言われてもおかしくない。というか普通のテレビ局の感覚だと「ありえないだろ」になる。
そこを説き伏せたのか、それとももうとっくにそのレベルのコンセンサスは日本テレビではとれているのか、その辺はわからない。ただ、例えば金曜ロードSHOWのスポンサーに何て言うか、という議論はあったはずだ。あるいはそのあとの番組に対してどうするの?という問いかけもあったはず。そこを乗り越えたのだろうから、大したもんだ、すごい勢いだなあと思うんだな。
さて話は変わって今度は3月15日、ハリーポッター祭り発表会の翌日だね。NHK文研のシンポジウムがあったので行ってきた。
はいここで軽く知識として知っておきましょう。NHKには2つの研究所があります。愛宕にあるのが放送文化研究所。主に調査分析を行っている。もうひとつ、砧には放送技術研究所があり、その名の通り技術系の研究所。要するに文系と理系の2つの研究所があるわけね。その文系の方のシンポジウムが開催されたというわけだ。
このブログの読者なら、そう言えばと思い出す記事があるはず。そうそう、「NHK放送文化研究所のシンポジウムに行ったのだけど・・・」というタイトルで書いたアレ。勇んで観に行ったら話がかみ合わずに終わっちゃったよ、というシンポジウムだった。この時、司会をしていた小川さんはそのあとでお会いし、勉強会に参加してくれるようになった。ぼくにとっては、いいオマケがついてきたのだった。
今回参加したのは「ソーシャルパワーがテレビを変える」と題したもの。今年は小川さんは司会ではなく、途中で調査結果を報告していた。テーマとしては相当ソーシャルテレビに踏み込んだものになっている。
議論は、テレビ側としてNHKの桑原さん、そして日本テレビの若井さん。若井さんはJoinTVを送りだしたメディアデザインセンターの長なので、ぼくからすると前日から続いているプログラムという感じになる。このお二人に対し、突っ込む側としてニコ動のドワンゴ杉本社長、メディアに強いと注目の茶髪の大学教授、鈴木さんが登壇した。
議論がかみ合わなかった去年と比べるとぐっと良い内容になった。打合せもちゃんとあったんだなあと思えた上で、けっこうスルドイ切り込みもあって、充実した、それでいてちょっとハラハラもする議論になっていった。
丁々発止もあり、和気あいあいでもありという空気の中、時として滲むのが、やはり既存メディア対ネットの構図。強いメディアの側からネットでも支配権を手に入れたいテレビ側と、そうはさせない、させたくないネット側。そんな構図がかいま見える瞬間があった。
テレビ側は、各局横断的に使えるプラットフォームを持ちたがっているように感じられた。それは必要な気もする。でも無理がある気もする。ただいずれにせよ、ダブルスクリーン前提でいろんなことが進むだろうし、そうなるとダブルスクリーン実際どうする?という悩みが出てくる。途中の地方局の方の質問で、地方ではアプリ作るお金ないのよね、みたいな話も出た。
テレビは番組を見せながら、手元のスマートフォンでどう楽しませるのか。そしてそこでビジネスを展開できるのか。今年はそこを本気で考え、形にしていく必要があるだろう。
SMMLabでは、マスメディアの代表であるテレビが、今後ソーシャルメディアとどのように影響しあうのか、企業のマーケティング活動をどう変えていくのかに注目し、「ソーシャルテレビ推進会議」の公式サイト「ソーシャルテレビラボ」からの寄稿記事を、SMM Labが一部編集してご紹介しています。
ソーシャルテレビラボ http://socialtv-lab.org
<ライター紹介>
境 治 (Osamu Sakai)
メディア・ストラテジスト。1987年、東京大学を卒業し、広告代理店I&S(現ISBBDO)に入社してコピーライターとなる。92年、TCC(東京コピーライターズクラブ)新人賞を受賞。93年からフリーランスとなりテレビCMからポスターまで幅広く広告制作に携わる。
06年、映像制作会社ロボットに経営企画室長として入社。11年7月からは株式会社ビデオプロモーションでコミュニケーションデザイン室長としてメディア開発に取り組む。
著書『テレビは生き残れるのか』
ブログ「クリエイティブビジネス論」:www.sakaiosamu.com
ツイッターアカウント:@sakaiosamu
メールアドレス:sakaiosamu62@gmail.com
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