世界的なCOVID-19(新型コロナウイルス感染症)流行により、外出自粛・学校の休校・在宅勤務化など、私たちの生活には多くの変化がおきています。
そして、こうした難しい状況において、自社のSNSアカウント運用やSNSキャンペーンの実施に難しさやお悩みを抱えているご担当者もいらっしゃるのではないでしょうか。
そこで今回は、「withコロナ時代に企業がSNSでとるべきコミュニケーション」について、活用事例を交えながら考えていきたいと思います。
生活者が「いま知りたいこと」を発信する
新型コロナウイルスによる感染症については依然として分かっていない事が多数あり、生活者は日々多くの情報を求めています。アライドアーキテクツが実施したアンケート調査では、外出自粛によってSNSの利用時間が増えたと回答した人のうち、利用目的としてもっとも多かったのは新型コロナウィルス感染症に関する情報収集でした。
また、感染症拡大防止に伴う臨時休校や在宅勤務推進など、日常とは違う生活を強いられる中で、生活に役立つ知識も大変需要が高いものです。
こうした生活者のニーズに対し、企業は自らのもつノウハウや知識をSNSを通して提供することができます。
事例①ノウハウを生かして身近な感染症対策を発信| 花王(Kao Corporation)<花王株式会社>
大手消費財メーカー花王の公式Facebookでは、石鹸や洗剤などの日用品の開発を行ってきた同社のノウハウを生かし、感染症対策に有益な情報の発信をしています。
花王の公式Facebookページに投稿された歌に合わせた手洗いを紹介した動画。アニメーションを挟みながら小さなこどもにもわかりやすく正しい手洗い方法を紹介している。
例えば、正しい手洗い方法の提唱については、歌をつけたオリジナルの動画で子供にもわかりやすいものにするなどの工夫をしています。このほか、手作りマスクの作り方、運動不足解消のための簡単なストレッチの方法など、同社が運営するメディア記事コンテンツも有効に活用しながら、様々な情報を発信しています。
事例②在宅勤務だからこそのメイク術などを発信|<株式会社コーセー>
株式会社コーセーの展開するコスメブランド「コスメデコルテ」のInstagramアカウントではストーリーズ投稿を使ったフォロワーとのコミュニケーションに注力しています。
フォロワーのアンケート結果を元に、在宅勤務中のメイクや、マスクをする生活の崩れにくいメイクのポイントを説明している。
普段と違う状況の中、メイクやスキンケアでも生活者は今までとは違った悩みを抱えています。コスメデコルテのアカウントでは、メイクやスキンケアに対して今、どんな悩みをもっているのか、ストーリーズの質問機能を活用してアンケートを実施。コスメ企業がもつ知識を生かしたアドバイスを行っています。Instagramの媒体特性を生かした施策事例です。
事例③ライブ配信で生活者と一緒にトレーニング|NTCライブ<ナイキジャパン>
在宅時間が増え、運動不足に悩む生活者は少なくありません。
スポーツ用品メーカーのナイキジャパンでは、YouTubeのライブ配信機能を活用し、自宅から参加できるナイキトレーナーによるワークアウトのライブセッションを行っています。
NTCライブではヨガなど、ストレッチ効果やリラックス効果のあるセッションから、少し激しめのワークアウトであるフルボディイグニションまで、様々な運動強度のライブセッションを配信。スキージャンプ選手の高梨沙羅さんや、お笑い芸人のゆりやんレトリィバァさんをゲストを迎える回もあり、視聴者を飽きさせない工夫もされています。
「生活者の日常にちょっとした楽しさを提供する
生活の大きな変化や自粛生活の長期化は、私たちに大きなストレスをもたらしています。花王生活者研究センターの調査によると、今回のコロナウイルス感染症拡大防止に伴う外出自粛などの変化によって、回答者の55%が「いつもよりストレスがたまっている」と答えています(※1)。
ストレスを多く抱える生活者に対し、自社ならではのちょっとした楽しさの提供することも、コロナ禍において企業がSNSを通して実現できるコミュニケーションの1つです。
事例④コロナ禍であることを考慮したTwitterキャンペーン|ハーゲンダッツ<ハーゲンダッツジャパン株式会社>
ハーゲンダッツジャパンの公式Twitterアカウントでは、外出自粛規制中のGW期間に「選んで投稿 GWキャンペーン」を実施しました。
新商品である「キャラメルホリック」の発売に伴ったこのキャンペーンのテーマは「おうちでついついやっちゃうこと」。公式アカウントをフォローし、4つの選択肢のなかから1つを選んで応募が完了。その場で当落が確認できるインスタントウィン形式を採用しています。
このキャンペーンではあえて、「コロナ/自粛/おうち時間」などというコロナ渦のキーワードは出していません。しかし「おうちでしちゃうこと」というテーマで今の状況下に上手に企画をフィットさせ、「あるある」と思ってしまうような選択肢を用意してユーモアを交えたキャンペーンに成功しています。
事例⑤アートの力で在宅時間を豊かに|森美術館<森美術館>
新型コロナウイルス感染症の拡大防止のため、美術館や劇場といった芸術鑑賞施設も営業を自粛しています。
そんな中、森美術館のFacebookアカウントでは、「ARTISTS COOKBOOK BY MAM」と題し、休館中の特別プロジェクトとして、世界各地のアーティストから寄せられた料理写真とそのレシピを順番にご紹介する連載投稿を実施しています。
レシピだけではなく、そのストーリーなども合わせて紹介した読みごたえのあるコンテンツで、フォロワーに豊かな在宅時間を提供している。
「食文化×アート」をテーマにした同連載は、レシピに加えて料理にまつわるストーリーも掲載され、読み応えがある投稿になっています。アート好きなフォロワーの好奇心を満たし、ストレスを抱えがちな生活者のリラックスを促すような企画といえます。
事例⑥商品使った大胆なレシピ動画が大反響|サッポロポテト公式<カルビー株式会社>
カルビー株式会社が販売しているサッポロポテトの公式TikTokアカウントでは、同社の商品を活用したレシピ動画を投稿し、在宅時間の楽しみを提供しています。
動画では、サッポロポテトを使ったチーズボールやチョコトリュフ、シュガードーナツなど、公式アカウントの発信としてはかなり大胆な食べ方を提案したレシピの紹介をしています。また、「#おうちで過ごし隊」「#今こんなことやってみた」など、時勢にあったハッシュタグを活用して投稿の発見を促しています。
投稿をみたTikTokユーザーからは、「作ってみたい」や「カロリーが気になる」など様々なコメントが多くよせられ、反響の高さが伺えます。
事例⑦商品をテーマに幅広い楽しさを発信|カルピス”水玉通信”<カルピス株式会社>
乳酸菌飲料カルピスの公式Twitterアカウント、「カルピス“水玉通信”」では、日頃から商品に絡めた様々なアイディアやネタの投稿を実施しています。
イラストレーターに依頼した、自宅でプリントアウトして楽しめる塗り絵の提供や(左)、カルピスの好みの濃さを聞く投稿(右)など、在宅時間を楽しんでもらえるようなをしている。
外出自粛が続く現在は、商品をモチーフにした自宅で楽しめる塗り絵の投稿や、好みのカルピスの濃さについてのアンケートなど、フォロワーが楽しみ、話題にしやすいような投稿をしています。商品をテーマに、様々な角度から楽しさや話題を提供に成功しているアカウントです。
生活者に繋がりと安心を感じてもらう
また、この未曾有の状況において生活者は多くの不安を抱えています。ビデオリサーチ社が実施したアンケート調査では、コロナ禍に不安を抱えていると答えた人は98.1%。ウイルス対策や社会全体が非常事態となっていることに、生活者は不安を抱えていることがわかります(※2)。
また、LINEが全国の大学生を対象に行なったアンケートでは、コロナによる外出自粛によって「やる気が起きない」「不安を感じる」に続いて「さみしさ・孤独を感じることが増えた」との回答も多くなっています(※3)。
生活者が様々な不安や孤独を抱える今、企業はより生活者の目線を大切にし、つながりや共感の意識をもってもらえるような寄り添ったコミュニケーションが求められます。
事例⑧「誰かと話すこと」の大切さをWEB動画で訴求|SUNTRY 「話そう。」<サントリーホールディングス株式会社>
飲料メーカー大手サントリーでは、「話そう。」と題したWEBキャンペーンを実施しています。
気軽に人と会ったり、話したりすることが難しくなっているなか、「オンラインでも電話でもいいから誰かと話そう」という啓蒙を行っているこちらのキャンペーン。
キャンペーンLPには、総勢37名のタレント、アスリートが、それぞれ3〜4名のグループを作って「話そう」を実施したWEB動画を掲載しています。
キャンペーン実施を告知した動画には2000件近いリツイートと5,500件を超えるいいねがついた(左)。またオンライン会話用のオリジナルフィルターの提供を通して、同社の提案する「話そう」をより楽しんでもらえるような取り組みも実施した(右)。
そして、同社のTwitterの公式アカウントでは全13回の動画を1つづつ紹介。動画への導線を作りながら、リツイートによる拡散も発生させています。「お酒や飲料を通してつながりをつくってきた」同社ならではのメッセージが、多くの生活者の共感をよんだ企画です。
事例⑨ハッシュタグ投稿を通して生活者同士のつながりをつくる|JAPAN AIRLINES【JAL】<日本航空株式会社>
ハッシュタグの利用を促し、生活者同士のつながりを作っている事例もあります。
日本航空株式会社の公式Twitterアカウントでは、「#旅を夢見て」を用いて、コロナウイルス感染症の収束を願い、旅の情報の発信を行っています。
このハッシュタグは現在、旅行業界の他の企業アカウントや、一般のTwitterユーザーにも利用が広がり、Twitter上にはコロナ収束後の旅行を望むたくさんの写真投稿が発生しています。同じハッシュタグの利用を通じ、たくさんの生活者につながりの意識を提供することに成功しています。
事例⑩在宅時間の増えた子育て世代に寄り添ったアカウント運用|小学館 kufura(クフラ)<株式会社小学館>
子育て世代の「暮らしのくふう」を支えるがコンセプトのWEBメディア、KufuraのInstagramアカウントでは、子育て世代の目線を大切にしたアカウント運用を行っています。
外出自粛が続く中、子育てしながらの在宅勤務に悩みを抱えている生活者は少なくありません。同アカウントでは、フォロワーから外出自粛における暮らしの悩みを投稿のコメント欄で募集。その悩みをもとにメディアの記事を作ることで、よりターゲットのニーズにあったコンテンツの提供を目指しています。さらに、コメントに対しても1つ1つ細やかな返信を行うなど、フォロワーの立場に立った、丁寧なコミュニケーション姿勢がうかがえます。
また、さっと作れるお昼ご飯や、自宅で遊びのアイディアなど子育てメディアならではのノウハウを、ビジュアルを工夫しながらわかりやすく発信。メディアのターゲットである子育て世代に寄り添い、共感をうむInstagramアカウントです。
いかがでしたか?今回は、事例を交えながらwithコロナ時代におけるSNSを用いたコミュニケーションについて考えてきました。
どんな施策を行うにしても、まず重要なのは生活者の目線をもつことです。
センシティブな世の中だからこそ、いつも以上に受けとり手の立場にたったコミュニケーション設計を心がけることは大切です。上から目線ではなく、生活者と共にこの危機に立ち向かう、そんな姿勢が伝わるコミュニケーションは生活者の共感を呼ぶことでしょう。
また、発信する内容やメッセージは背伸びをしすぎる必要はありません。普段のコミュニケーションの延長線上で、それぞれができること伝えられることを発信していく。それはひいては自分たちの会社の姿勢や製品を生活者によく理解してもらい、愛着をもってもらうことにも繋がっていくのではないでしょうか。
コロナ禍のSNS活用には、こうしたちょっとした配慮と、自分たちならではのメッセージ発信が大切なのかもしれません。
※1)新型コロナウイルスが暮らしに与えた影響 ~8,492人の調査からみえた生活者の現在~|くらしの研究
※2)「コロナ禍」で生活者が消費している”モノ”と”コト”|株式会社ビデオリサーチ
※3)不安や孤独、収入不安も。コロナ禍における大学生への生活影響|LINE株式会社