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新型コロナウイルスの影響によりイベントやチラシ、サンプル配布など従来の販促活動に制限がかかる中、アース製薬はSNSを中心としたデジタル販促に注力しています。

2020年には、同社が戦略的に自社のSNS公式アカウントやSNSメディアに投稿した動画が一般ユーザーの目に留まりTikTokで大きな話題に。同社商品の関連ハッシュタグがオーガニックで1億回以上も再生され、店舗から商品がなくなるほどのヒットにつながりました。

今回は、アース製薬株式会社 マーケティング総合企画本部 マーケティングプランニング部の稲積 大輔 氏に、SNSを活用した同社のデジタル販促戦略についてインタビューしました。

※本記事は2021年6月17日(木)にアライドアーキテクツ株式会社が開催したセミナー「デジタル販促×SNS最前線#3 withコロナ時代の2021年にリテール・メーカーが挑戦するSNSを活用したデジタル販促戦略とは?」の内容を編集したものです。

コロナ禍で従来の販促活動の継続が困難に SNSへの注力を開始

-コロナ禍以降、アース製薬の販促活動にはどのような変化がありましたか?

コロナ禍の影響で、従来実施してきた各種イベントを通じたプロモーション活動がほとんどできなくなってしまいました。オフラインでお客様へのリーチができない現状を補うため、素早く実行できるデジタル関連のプロモーション、中でもSNSを活用した販促活動に今まで以上に注力するようになりました。

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アース製薬株式会社 マーケティング総合企画本部 マーケティングプランニング部 メディア・デジタル課 稲積 大輔 氏。同社のプロモーション全般を担当、中でもSNSを中心としたデジタル販促活動に注力している。

Twitterに注力、コロナ禍ならではの企画にチャレンジ

-SNS販促に力を入れているとのことですが、その中でも特に注力しているプラットフォームはありますか?

SNSを活用した販促施策の中でも、特に注力しているのがTwitterです。アース製薬では害虫対策商品などもあるためビジュアルのコミュニケーションには向かず、テキストだけでも生活者とのコミュニケーションがとれるTwitterがもっとも向いていると判断しています。

現在のTwitter公式アカウントのフォロワーは約10万人です(2021年8月時点)。実際に投稿を行う「中の人」は1名、プレゼントキャンペーンなどの企画やTwitter広告出稿を含め合計3名体制で運用しています。社内にデザイン知識があるメンバーやコピーライターもおりますので、SNS用のクリエイティブ制作も代理店さんだけに頼らず自社で行うこともあります。

-Twitterでは具体的にどのような販促施策を行っていますか?

例えば、2020年4月の最初の緊急事態宣言の際は、生活者の「ステイホーム時間を充実させたい」という需要の高まりにより、入浴剤の売上が上がる傾向にありました。そこで、自社でスピーディーに入浴剤に関するクリエイティブを制作、そのような内容をつぶやいている方向けにTwitter広告を出稿しました。

また、Twitterで「日本初!?Zoom背景デザインコンテスト」も実施しました。コロナ禍以降、さまざまな企業が自社で用意したZoom背景を配布していましたが、我々は、せっかくやるならただ配布するだけでなく、よりユーザーさんとのコミュニケーションが取れる企画にしたいと考えました。

そこで、アースジェット プロプレミアムを題材にZoomの背景デザインを募集したところ、我々が想像した以上の数の作品を応募いただけました。この企画を通じて、多くの方にリーチできただけでなく、ユーザーさんとの1to1のコミュニケーションを深めることができたと感じています。

<実際の受賞作品>

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左側:大賞。アースジェットを並べて花火に見立てた季節感のあるデザイン。
右側:特別賞。アースジェットから出ている七色の虹の鮮やかさが印象的。

Twitterでは他の企業公式アカウントとのコラボも積極的に行っています。「#モンダミンアンバサダー」の企画では、他社の企業公式アカウントの中の人に弊社の商品「モンダミンディスペンサー」を提供しました。その逆方向として他の企業さんから商品を提供いただき、アース製薬公式アカウントで紹介することもあります。

企業としてはお互いのアカウントのフォロワーさんに新しい情報をお届けすることができますし、またフォロワーの方々にもこのような企画を楽しんでいただけているのではと思います。

各SNSに戦略的に話題の種まきを。「#バブルーン」はTikTokで1億回以上再生に

-SNS販促施策を立案する際に意識していることはありますか?

昔のようにマスメディア一辺倒ではなく、今はそれぞれの年代に応じて様々なメディアを利用する「多チャンネル化」が進んでいる状態です。よって、アナログもデジタルも、さまざまなメディアにコンテンツを配置していく必要があると考えています。

2020年には自社のInstagram、Facebook、YouTube公式アカウント、およびママ系の外部メディアに公開したコンテンツ、弊社のトイレ・洗面台用洗剤「バブルーン」を使用した様子を伝える動画が一般ユーザーの目に留まり、TikTokでシェアされ、「#バブルーン」のハッシュタグが1億回以上もの再生回数を記録しました。

元ネタは我々が戦略的に仕込んだものですが、それを一般の方に面白がっていただけたことで予想以上に大きな話題となり、店頭から商品が消えるほどの反響となりました。

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「#バブルーン」はTikTok上で1億回を超える再生回数を記録、約1ヵ月間トレンドTop10にランクインし、大きな話題となった。

SNSはどこで火が付くか分からないところが面白いかな、と。だからこそ、さまざまなチャンネルにコンテンツを配置し、ユーザーの方々にそれぞれの楽しみ方をしていただける情報を提供していくことが大切だと思います。

今でも、テレビCMが最もインパクトがある施策であることに変わりはありません。しかし、スマホが普及し多くの方がそれぞれのメディアで過ごすようになっている現在、やはり従来のようにマスメディアで不特定多数の生活者に同じメッセージを届けるだけでは足りないと実感しています。

今後もそれぞれのSNSの特性を理解し、SNSで話題にしていただけるような企画作りにチャレンジしていきたいですね。また、そのためにも生活様式や価値観が多様化する生活者一人一人にしっかりと向き合う1 to 1コミュニケーションを心がけていきたいです。