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新型コロナウイルスの影響により企業の販促活動におけるデジタル化が急速に進んでいます。その中でも、生活者が多くの時間を過ごし、情報取得のインフラとしても機能している「SNS」をどのように日頃の販促活動に活かすかに大きな注目が集まっています。

そこで今回は、大手メーカーから小売・外食、金融まで、幅広い業界のSNSプロモーションに携わってきたアライドアーキテクツ株式会社 プロモーション事業部部長 鈴木悠真にインタビュー。各業界におけるSNSを活用したデジタル販促プロモーションの現状と課題、成功のためのポイントや、今後のデジタル販促の展望について話を聞きました。

この数年間の販促領域の変化とは

ーまずは鈴木さんの担当業務と、どのような企業を支援しているのかお聞かせいただけますか?

私はアライドアーキテクツ株式会社のプロモーション本部で営業・コンサルティング・マーケティング部門の責任者を務めており、SNSを軸に企業様のプロモーションを支援しています。

2017年に中途入社して以来、食品・飲料・製菓や化粧品などの大手メーカー企業から、外食チェーン、小売、金融やアパレルまで、主に「to C向け(コンシューマー向け)」に商品やサービスを展開している企業様のプロモーションを支援してきました。

-「SNSを軸としたプロモーション」とは、具体的にはどのような内容なのでしょうか?

弊社は、“生活者を味方にする”SNSプロモーション統合管理ツール「echoes」を展開しており、主にechoesの利用を通じて、企業様の目的にあわせたSNSプロモーションを企画・実行しております。echoesシリーズとして、現在は「echoes on Twitter」「echoes on Instagram」という二種類のサービスを提供しています。

従来、SNSを活用したプロモーションというと、「ファンを増やす」「リーチを拡げる」など直接売上に結びついたのか見えにくい施策に終始してしまうことが多かったですが、「echoes」の強みは、その先の成果までしっかりとつなげられることです。ただフォロワーを獲得するだけではなく、「echoes」の仕組みを活用して店舗やアプリ・WEBサイトの集客数を増やすところまで支援しています。

Twitterプロモーションツール「echoes」では、商品・サービスの認知からアプリのダウンロード・来店まで、目的別に5種類のサービスメニューを提供している。各企業の課題にあわせて最適なメニューを提供することにより着実に企業の成果向上に貢献し、「販促・売上につながるTwitterプロモーションツールNo.1(※)」として評価されている。

※株式会社ショッパーズアイ調べ(2020.12.8〜10)調査対象:(1)SNSマーケティング実施企業勤務352名(2)SNSマーケティング/Twitterキャンペーン/Twitterインスタントウィンキャンペーン実施企業勤務292名(係長クラス以上)

-鈴木さんがSNSを軸にした企業のプロモーション支援を行う中で、この数年間にどのような変化がありましたか?

大きく分けて2つあります。一つはSNSトレンドの変化です。2010年代前半にSNS利用者拡大の中心となったFacebook・Twitterから、2017年頃には「インスタ映え」という言葉が流行語となるほど一気にInstagramが拡大、その後も若年層を中心にTikTokが拡大、2021年に入ると音声SNSのClubhouseが登場など、ソーシャルプラットフォームの多様化が進んでいます。

これらの変化に伴い、企業がお客様と接点を持てる場所としてどのSNSでどんなプロモーションをやるかも大きく遷り変わっています。

もう一つは新型コロナの影響による変化です。自粛生活において外出の機会が減り、生活者は何かしらの「目的」を持って外出するようになりました。消費行動においても、店頭で実際に商品を見ながら買い物をする「店頭購買」よりも、事前に何を買うか決めて買い物をする「計画購買」へのシフトが顕著になっています。

それに伴い、企業の販促活動においても「買い物に行く前にいかに接点を持てるか」がこれまでよりもさらに重要になっています。そのために各社が力を入れているのがデジタル上での接点の創出です。中でも、コロナ後に生活者がより多くの時間を過ごすようになったSNS上における接点の重要性が増してきています。

(参考)「新型コロナがもたらした【新しい生活様式】における消費者のSNS利用実態調査」から一部引用

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新型コロナ後にSNSを利用する時間が増えた、もしくは減っていないと回答した人が約90%を占めている。また、全体の約70%が今後商品・サービスに関する情報収集にSNSを利用したいと回答している。

本調査の結果はこちらから無料でダウンロードいただけます。
「新型コロナウイルス感染症拡大以降の新しい生活様式における消費者のSNS利用実態調査」

デジタル販促の鍵「SNS」を使いこなすコツ

-企業の販促活動におけるSNSの重要性がより増してきているということですね。一方で、SNSを上手に活用するためにはコツが必要であり、上手くできる企業と苦労している企業に分かれているように思います。ズバリ、SNSを上手に使いこなすためのコツは何なのでしょうか?

まずは「SNS」と一括りにせず、それぞれの媒体のユーザー層や機能面の特徴、得意な点/不得意な点をしっかりと理解することです。その上で、SNSのどの媒体に何の目的を持たせるかを明確にし、適切なKPIを設定することが大切です。

「とりあえずおしゃれな発信をしたいからInstagramをやろう」「バズりたいからTwitterでキャンペーンをやろう」「競合他社もみんなやってるからLINEをやろう」といったケースでは、しばらく運用した後に、「何でこれやってるんだっけ?」という状態に陥ってしまうことが非常に多くあります。

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アライドアーキテクツ株式会社 プロダクトカンパニー プロモーション事業本部 プロモーション事業部部長 鈴木悠真

-SNSを「何となく」始めてはダメということですよね。

その通りです。SNSを上手に使いこなす企業は、変化の激しいSNSのトレンドも理解しながら、しっかりとそれぞれの媒体の特徴を活かして、販促活動全体の中にSNS施策を組み入れています。

SNSマーケティングはあくまで「何らかの目的を達成するための手法」ですから、SNSをやることそのものを目的にしてはいけません。これは現在の「DX化の波」と共通の事象だと思います。デジタル化することが目的ではなく、「デジタル化することで何を得たいか」が大切なのです。

この点を常に意識しているかどうかで、SNSやデジタル施策を上手に企業の販促活動に組み入れられるかが大きく異なってくると感じています。

Twitter、Instagram、LINE、FacebookからTikTok、note、Pinterestまで。SNSに関する最新情報をまとめた完全ガイドはこちら。
SNSマーケティングとは?特徴・施策・媒体別活用ポイントを徹底解説【2021年度版完全ガイド】

企業の販促活動におけるデジタルシフトを阻む壁とは

-そのようなデジタル施策を販促活動のためにうまく取り入れられる企業と、苦労する企業にはどのような違いがあるのでしょうか?

変化に柔軟に対応できるかだと思います。新型コロナの影響により、10年かけて起きる変化がこの1~2年で急激に進行しているような状況なので、従来からのオフラインでの販促のやり方がしっかり固まっている企業こそ、新しいデジタル施策への投資判断が難しいという事情もあるのではないでしょうか。

例えば、ずっとチラシに予算を投じてきた企業であれば、そのノウハウが蓄積されており、チラシを一回配れば大体どれくらいの集客があるなどの見込みが立てやすいですよね。一方で、SNSを含めデジタル施策はまだ取り組み始めて日が浅い企業様が多く、ノウハウが不足しています。さらに、店頭などオフライン上で売上が立つ商品に関しては、デジタル上で行った施策がどう売上に貢献しているか分かりにくいという難しさがあります。

そのため、「デジタル販促施策を行ったら本当に売上が上がるの?」「SNSプロモーションをしたら本当に店頭にお客さんが来るの?」という話になりがちで、新しくデジタル販促施策に投資しようという判断スピードも遅れてしまいます。

-デジタル施策のオフライン売上への影響がまだはっきり見えていないことが、企業の販促活動におけるデジタルシフトを阻む要因になっていると言えそうですね。

そうですね。逆に言えば、これからは「デジタル施策をどうオフライン売上につなげるか」のノウハウをいち早く確立できた企業に勝機があると感じています。ニューノーマル時代においてデジタル化が推進されたとしても、生活者がスーパーマーケットやコンビニエンスストアなどの小売店に行くライフスタイルそのものに変わりはありませんから。

販促・プロモーション施策 課題
(参考)メーカー(化粧品・薬品・食品など)、広告代理店、小売企業等に勤める担当者にアンケート調査を実施、多くの企業が販促プロモーション施策における「効果の可視化」を課題に挙げた。

デジタルとオフラインの融合が各企業のテーマに

ー鈴木さんが今まで支援してきたSNSプロモーションの中で、オフライン売上への影響が可視化できた販促事例を教えてください。

「echoes on Twitter」を活用してTwitter上でフォロー&リツイートキャンペーンを開催、オフラインの店舗で利用できるクーポンを配布した施策では、SNS上でのフォロワー増加数やリツイート数だけでなく、実際にオフラインで何人が来店したかまで可視化できました。

SNSプロモーションというと、「コミュニケーション」「ファン施策」といった目的がメインとなり、直接的な「販促」という意味では予算を割けない企業が多いのが現状です。

しかし、このようにSNSプロモーションから直接的にどれだけの来店があったか、売上が立ったかが可視化できるようになると、SNS施策を従来のチラシやPOP、CMなどと同じように直接売上に影響を与える施策として位置づけられるようになります。「この施策にこれだけ投じたら、これくらいのリターンがある」というルートをより多く持てることは、企業様にとって大きなことではないでしょうか。

-さらに、SNSを入口として販促施策を打つことで、「来店後もユーザーとつながりを持ち続けることができる」「どんなユーザーが来店したかが可視化できる」良さもありそうですね。

その通りです。従来のアナログな販促施策では、結局どんなユーザーが来店したのかを知る術も限られていましたし、継続的な接点を持つためにはポイントカードやメルマガの登録などのアクションが必要でした。

一方、SNSを入口として集客すれば、おのずとユーザーとの関係性の継続やユーザー層の可視化ができます。例えば「一回クーポンを使ったユーザーにもう一度クーポンを配る」といった施策も可能です。

こうしたデジタル×オフラインの融合はこれからさらに進んでいきますし、効果計測の精度も上がっていくと考えています。

来店者数や店頭売上増加などのコンバージョンに直結し、かつ効果測定がしやすいデジタル販促手法をまとめた記事はこちら
デジタル販促とは?手法10選・事例まとめ~来店客数&店頭売上アップにつなげよう~

デジタル×販促施策の展望

-最後に、鈴木さんが考える今後のデジタル×販促施策の展望をお聞かせください。

今後は各企業単位での販促施策のみならず、メーカーとリテールという業界の壁を超えて、より進化した販促施策が生まれてくると考えています。

その一つの方法として、私たちが現在力を入れて取り組んでいるのが「echoes Coupon ドラッグストアサンプリング」です。

この仕組みを利用することで、メーカーはTwitterやInstagram上のSNSキャンペーン当選者にダイレクトメールでデジタルクーポンを発行できます。そして、当選したユーザーは、そのデジタルクーポンを提携のドラッグストア(※)店頭に提示することで割引価格で商品を購入したり、当選賞品を受け取ったりすることが可能です。

メーカーは「ドラッグストアの店頭でキャンペーン賞品を配布することで配送コストを削減できる」、ドラッグストアは「キャンペーン賞品の受け取りをきっかけに、ユーザーの来店きっかけを創れる」、ユーザーは「信頼できるメーカーからの当選賞品を、いつも利用している身近な店舗で好きな時に受け取ることができる」三方よしの仕組みになっています。

(※)「echoes Couponドラッグストアサンプリング」提携のドラッグストア(五十音順):コクミン、ココカラファイン、サツドラ、Tomod’s(2021年6月16日時点)

ドラッグストアサンプリングの仕組み
echoes Couponドラッグストアサンプリングの仕組み。SNSキャンペーンを開催し、当選者にユニークなクーポンURLを送付。当選したユーザーはそのURLを開くことでモバイル上でデジタルクーポンを参照でき、提携のドラッグストア店頭で提示することで当選賞品を受け取ることができる。

echoes Couponドラッグストアサンプリングの詳細はこちら
echoes Couponドラッグストアサンプリング

-この仕組みが、「これからのデジタル販促施策」として優れている点は何ですか?

従来、メーカーはユーザーと直接つながれる機会が限られており、どんな人がどこから流入して何を買ってくれるのかを正確に知る術がありませんでした。また、メーカーとユーザーがSNSを通じて直接つながったとしても、あくまでコミュニケーションをする目的であり、その費用対効果は見えにくいのが実情だったと思います。

しかし、このechoes Couponドラッグストアサンプリングの仕組みを利用することで、直接顧客との接点を持たないメーカーでも、SNS施策による購買への影響を可視化できます。さらに、ドラッグストア側が持つ顧客情報と突き合せることで、クーポンを利用したユーザーの性別・年齢などの属性だけでなく、そのドラッグストアへの来店頻度、どんな商品と一緒に自社の商品が購入されているのかなどユーザーの可視化も可能です。

また、リテール側にも、デジタルを活用することでよりお客様一人一人を理解し、適切なコミュニケーションを取ることで顧客のLTVを上げていきたいというニーズがあります。メーカーとリテールが連携することによって、リテール側も顧客に対してより幅広い提案をすることができ、結果として顧客への価値提供=ロイヤリティの向上につなげていくことができます。

echoes Couponドラッグストアサンプリングを導入しているドラッグストア「ココカラファイン」のインタビューはこちら
【メーカーとリテールが一緒に販促を】ココカラファインが描く、デジタル販促のこれから

オンライン・オフライン、メーカー・リテールなどの従来の壁を超えて、よりデジタル化する生活者にどのように最適なコミュニケーションを創りだしていけるかが、今後の企業の販促活動における鍵になるのではないでしょうか。

私たちアライドアーキテクツは、SNSマーケティング支援企業からマーケティングDX支援企業へと、新しい領域への挑戦を進めています。「販促・プロモーション領域」においても、自社テクノロジーを活かして、ニューノーマル時代における企業プロモーションの進化にさらに貢献していければと考えています。

-本日はありがとうございました!