日本のアフィリエイトとブログ活用を牽引してきた「WADA-blog」和田亜希子さんによる「中国向けインバウンド・越境EC」情報の新連載!

 
中国在住経験を持ち、中国のインターネット、ソーシャルメディア事情に詳しい和田亜希子さんが、毎回中国向けビジネスに取り組むマーケターのための情報を分かりやすくまとめてご紹介する、読んですぐに実践できる「中国マーケティング」入門ガイドです。
 
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ちょうど一か月ほど前、新海誠監督の最新映画「君の名は。」が大旋風を引き起こしていました。
といっても既に封切から数か月が経過した日本の話ではありません。2016年12月3日に封切となった中国で「君の名は。」(中国語「你的名字。」)が大ヒットし、驚異的な動員数となったのです。
数字で見てみましょう。
 

<日本>

 

  • 公開後3日間(金土日)動員96万人/興行収入12.8億円
  • 9月22日までの28日間で興行収入100億円突破
  • 10月3日までの39日間で1000万人動員

 

<中国>

 

  • 初日7596万人民元(12.5憶円)
  • 公開3日間(金土日)動員数未確認/興行収入2.89億人民元(42億円)
  • 12月17日までの16日間で邦画収入トップ(約90億円)

 
●君の名は。興行成績 – Wikipedia
●「君の名は。」中国で邦画収入首位に 公開16日で90億円 – 日本経済新聞
●《你的名字》上映11天内地票房破5亿 – 猫眼电影(中国語サイト)
 
公開3日間の興行収入は日本の3倍以上。ソーシャルメディアでのクチコミにより拡散され、それまで新海誠監督の名前を知らなかった層も映画館に足を運びました。著作権の問題で現在は提供中止となっている「風景写真を新海誠風にする」アプリも、その拡散に大きな一役をかったようです。
この「君の名は。」ニュースに、中国市場の規模と可能性をあらためて実感させられたという人も多かったのではないでしょうか。
 
 

購買力を高める中国市場と中国進出ブーム

 
ご存知のように、人口比では日本の10倍以上(日本1.2億/中国13.5億)。
一方GDPでは日本4兆ドルに対し、中国11兆ドルとなっています(2015年)。
 
●名目GDP(USドル)の推移(1980~2016年)(中国, 日本) – 世界経済のネタ帳
 
「あれ?僅差で追い越されたのつい数年前じゃなかったっけ?」
そう思った方もいるでしょう。
中国がGDPで日本を上回り世界2位の地位に躍り出たのが2010年。その後も鈍化したとは言え高い経済成長率を続け、為替相場の影響もあり、ドルベースでのGDP格差は広がっています。結果、私たちの生活圏で目に見える変化として現れたのが「中国語しか聞こえてこない国内観光スポット」そして「爆買い」です。
もちろん、1人あたりGDPでは依然日本との開きが大きいのも事実ですが、それもどんどん詰められています。日本で「富裕層」というと、何やらごくごく一握りのイメージがありますが、貧富の差が大きくかつ人口も非常に多い中国では、富裕層の数も日本の比ではありません。中間層も確実に経済力をつけています。
また65歳以上人口が1/4以上に達し「超高齢化社会」に突入している日本と異なり、まだまだ現役世代のウェイトが大きく、今後の経済成長も見込めます(ただし30年以上続いた一人っ子政策のため人口バランスが歪み少子高齢化が課題に)。
 
「飛躍的な成長を遂げる中国巨大市場にチャレンジしたい」
第三次とも第四次とも言われる中国進出ブームが盛上ってきたのは2010年以降。過去は主に安い労働力を頼っての製造拠点移転でしたが、2000年以降は、購買力を高めてきた中国の消費者が「潜在的な見込顧客」としてターゲティングされました。いまやその購買力は明らかに顕在化しています。
 
「日本市場のみに頼っていては確実に先細りする」
「まだまだ伸びしろの大きな中国市場への進出・開拓こそが生き残る道」
そう中国向けビジネスに期待を寄せる企業は、メーカーだけではありません。小売りや外食などサービス業でも同様に中国進出への期待感が広がっています。
また観光立国を目指す政府方針のもと、各自治体や百貨店などの小売り、そして外食産業にアミューズメント施設などもインバウンド需要狙いで「来日外国人客」への積極的なアプローチを展開しており、主ターゲットはやはり隣接超大国の中国です。
しかし40代以降の世代には、過去の「中国進出に失敗した企業」の記憶が残っているかもしれません。
既に中国進出ブームも数年が経過している段階で、「いまさら遅いのではないか」と考えている人も少なくはないでしょう。「いつ弾けてもおかしくない」と言われ続けている中国の不動産バブル崩壊懸念がブレーキとなっている企業も多いはずです。
本当に「今こそ」なのか。
そして中国向けに本格的にビジネスを開始するとしたら、、どの程度の利益が見込めるのか、どの程度まで初期投資すべきなのか。広大な中国消費市場に対して効率よくアプローチするにはどうしたらいいのか。リスクはどこにあるのか。どうコントロールすればいいのか。
 
そのすべての答えが「インターネット」にあります。
 
 

インターネットで今や日中は“地続き”に

 
一昔前、「海外進出」は非常にリスクの大きな決断でした。
そりゃそうです。言葉も文化も生活習慣も異なる“未知だらけの地”で勝負するわけですから。リサーチも流通網の構築もゼロスタートですし、いい提携パートナーに出会えたとしても、現地の消費者ニーズをダイレクトに把握し、それに対応してゆく段階まで到達するのは並大抵のことではありません。
島国日本の企業にとって、海を越えた市場は心理的にも非常にハードルの高いものでした。
ところが今、事情は大きく異なります。
格安スマホが出回り、通信費が非常に安い中国のインターネット利用度は非常に高まっています。その現状はおそらく、大多数の日本人の想像を超えるものです。
日本人以上に「ネット上での発言・情報発信」意欲が高い国民性もあり、ソーシャルメディアも非常に盛り上がっています。“中国版Twitter”と言われることも多い微博(ウェイボー)でのクチコミが、日本での爆買いなどにつながることも多々。
EC市場も非常に熱気があります。既に小売・流通が成熟した段階でインターネットが登場した日本では、一般ユーザがパソコン画面上の写真だけを見て躊躇なく注文ボタンを押せるようになるまでに時間がかかりました。送料コストの問題もあります。ところが中国では、経済成長とインターネット時代が同時到来したため、「リアル店舗では買えない商品も格安で入手できる」オンラインショップはあっという間に人々の生活の中に根付きました。
高いシェアを誇るタオバオの売上ランキングを見つめていれば、いま中国でどんな商品が売れているのか、どういった商品に人気が集まっているのか、生々しすぎるほどに理解できます。
例えば外食ビジネスに関わっている人ならば、中国のグルメサイトを見ることで多くの情報が得られるはずです。例えば日本料理店が既に飽和状態となっているエリアとそうでないエリアがわかりますし、日系で成功しているチェーン各店舗の口コミを分析することで、中国市場進出で留意すべきポイントや、中国人が日系飲食チェーンに何を期待しているのかもつかむことができます。グルメクチコミサイトの人気上位店から料理長が引き抜かれるなんてことも起きているようです。
そう、つまりインターネットを介して私たちは今、中国消費者の嗜好・関心・動向を高度なレベルでダイレクトに把握できるようになっているのです。
 
「でも中国語がわからないから・・・」
 
一体どのサイトの何を見たらいいのかもわからないという方も多いでしょう。
でも考えてみてください。日本と中国は同じ漢字圏です。いくつか「コツ」さえ覚えれば、ある程度の情報をつかむことが可能です。無料で利用できるGoogle自動翻訳もありますし、正確に読み込みたいレポートがあれば、オンライン上の翻訳者プラットフォームを活用し、安価で人力翻訳してもらうことも可能です。
この連載では、インターネット活用した中国市場向けインバウンド・越境ECビジネスや、中国進出を検討する企業担当者の支援を第一の目的とし、中国の主要ポータルサイトやソーシャルメディアなどの紹介、タオバオはじめとするEC市場の動向、そして越境ECや中国でのウェブマーケティングに取組むために必要な情報をご紹介してゆく予定です。
業界によってもビジネス展開形態によっても必要な情報は大きく異なると思いますので、担当者の方々が直接、中国の検索エンジンを活用して必要な情報を見つけ出すことができるよう、「インターネットを活用した情報収集」のTIPSもご紹介できればと思っています。
幕を開けたばかりの2017年。
今年を、中国市場向けビジネスを本格スタートさせる「元年」とすべく、一緒にインターネットを介した情報収集を、そして中国市場へのアプローチ方法を模索していきましょう。
 
 

<TIPS>中国語のサイトを読み解く「簡体字」

 
ちなみに次回は、昨年CNNIC(日本のJPNICと同様の機関)から発表された中国国内のインターネット利用状況統計データを見ていく予定です。こうした統計データは、翻訳され日本語のニュースとしても流れますが、あくまで抜粋された一部だけ。全文はやはり中国語のサイトで見る必要があります。
CNNICの「報告下載」ページを開けば、様々なインターネット関連の調査報告書を探すことができます(下載は「ダウンロード」という意味)。
 
●中国互聯網絡信息中心─報告下載
 
また政府も様々な統計データを発表しており、その中には業種別の貴重なデータもあります。漢字を手掛かりにすれば自社に関係ありそうなものも見つかると思います。
 
●中華人民共和国国家統計局
 
こうしたデータを読む時、頻出「簡体字」だけでも覚えておくと、内容理解度が格段にあがります。例えば・・・
 

  • 电→電(家电/电视)
    价→価(价格/物价)
    业→業(工业/饮食业)
    产→産(资产/产出)
    长→長(增长/特长)
    动→動(变动/移动)
    升→昇(上升/升幅)
    计→計(统计/计算)

 

いかがでしょう。
こうした対照表を見ていると、次第に簡体字の略され方のパターンも見えてくるはずです。

お時間ある時に是非一度、中国語のサイトを覗いてみてください。
きっとそれが大きな「一歩」になるはずです。

簡体字に関しては本も何冊か出ていますので、そういったものを活用してみるのも一つの方法かなと思います。

●Amazon.co.jp: 「簡体字」で本を検索

 
 


<筆者プロフィール>
profile_wada和田 亜希子(Akiko Wada)
都市銀行、検索エンジン等を経て2001年独立。企業からの受託でクチコミを活用したマーケティング、アフィリエイト・プログラム導入運用支援などを行うかたわら、「東京ビアガーデン情報館」「台湾温泉ガイド」などの専門サイトを企画運営。主な著書「アフィリエイト・マーケティング実践マニュアル(翔泳社)」「ひとつの ブログで会社が変わる(技術評論社)」「ミニサイトをつくって儲ける法(日本実業出版社)」。


 
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