写真投稿キャンペーンを成功させるために設計段階で考えておきたいポイントをご紹介します!

 
写真アプリでの投稿キャンペーンを一時的な盛り上がりで終わらせず、意味ある施策にするためには? 事例から見る5つのポイント【SnapDish ビジュアルマーケティング論考】
 
こんにちは! SnapDish事業開発チームの阿部です。
 
ソーシャルメディア、特に写真アプリを使った施策というと、ぱっと思いつく範囲で「投稿キャンペーン」や「自社アカウント運営」などがあるかと思いますが、きょうはそのうち投稿キャンペーンを上手に設計するポイントについてお話しできればと思います。
 
「投稿キャンペーンをやっても、リーチが稼げない」「売上とのつながりが不明確」という課題はよくきくところですが、例えばCMで狙っているコミュニケーションについて盛り上がりを演出したり、ファンを育成したりといった役割では、投稿系企画の果たす役割は無視できません。特に生活者がソーシャルメディア上で過ごす時間が長くなってきている現状ではなおさらです。
 

ポイント1 投稿することが自然な設計になっているかどうか

 
一般的にキャンペーンの参加動機は、「おもしろそうだから」「プレゼントがほしいから」などが考えられます。
 
しかし、キャンペーンとしての面白さやプレゼントなどを考える前に、ソーシャル系の企画ではもっと大事なことがあります。
 
その企画で求めている投稿が自然なものかどうかということです。
 
例えば、旅行先の美しいシーンや、イベント会場で出会ったフォトジェニックなブース、美味しいお店の料理、友達に伝えたいくらい感動した記事。こうした機会があれば、多くの人は自然にソーシャルメディアに投稿します
 
こうした、「共有することが自然である」状態と、キャンペーンの企画とがかみ合うことで、より多くの方が企画に共感し、参加してくれるようになります。
 
もちろん投稿企画自体の面白さや、プレゼントの良し悪しも人に動いてもらうためには重要な要素ですので、ソーシャルの投稿企画をうまく動かすには、下記の3つの要素の掛け算で考えるとよいかもしれません。
 
①投稿することの自然さ × ②面白さ・目新しさ × ③プレゼント
 
よくやる失敗としては、②を追求するあまりに①を損ねてしまうことでしょう。
 
例えば、料理系の企画でいえば、「デコ○○」「○○アレンジレシピ」などといって、それをすることにあまり必然性がないのにデコやアレンジを強要するような企画がそれにあたります。
 
PR的な側面を重視して短期的な「話題性」だけを狙う、という企画では②と③偏重でもよいと思いますが、それ以外の場合では3要素のバランスが大事だと思います。
 
 

ポイント2 ソーシャルで盛り上がるテーマは余白が大事

 
次に、これは以前の記事でもとりあげた内容ですが、「ソーシャルで盛り上がるテーマは余白が大事」という点で、これは非常に重要なポイントです。
 
Twitterのトレンドに、大喜利のようなタグがあがっていたり、または写真をコラージュして遊ぶ企画があがっていたりするのをご覧になったことはないでしょうか?
 
私は、こうしたトレンドにはソーシャルで盛り上がる企画の特徴がよく出ていると思います。投稿テーマはあくまでお題であり、企画を面白くするのは「参加者の投稿」であるという設計ができれば、企画は自ずと盛り上がります。
 
これを判断するのは比較的簡単で、投稿した人が「他の参加者の投稿も見たい!」と思える企画になっているかどうかです。
 
もし、広告主の言いたいことを繰り返させるだけの企画であれば、参加者が何人いたとしても投稿内容に大した違いはでてこず、自分が投稿した後に他の人の投稿を見たいとは思わないでしょう。
 
また、こうした参加投稿に接触した人にとっても、単に知人が企業のメッセージを代弁しているシーンに接触するだけで終わってしまい、それ以上の体験を作ることは難しいでしょう。
 
こうした「とにかく指定の体験をしている人が増える」ことが大事な企画は、写真アプリやソーシャルメディアのような「ソーシャル性」の強い媒体よりも、例えばモニター系サイトのような、広告主が指定する体験をそのままなぞることが自然であるような場の方が適しているように思います。
 
ソーシャルの企画の強みのひとつは、生活者自身の言葉でブランドのよさを語りなおしてもらえること、つまり信頼できる第三者の力を借りることでメッセージの受け手の態度変容をより強く引き出せることにあります。広告主のメッセージを代弁しているだけ、と受け手に感じ取られてしまったら、この効果は大きく減少してしまいます。
 
例えば、メーカー指定の「レシピ」をとにかく作ってほしいというような企画や、「パッケージを開けて食べるだけ」というような企画は、それにあたるでしょう。そうした企画はどちらかというとInstagramやSnapDishのようなソーシャル色の強いアプリには不向きです。
 
逆に、ビジュアルの多様性がメッセージの効果を強めるような企画、例えばお弁当のバリエーションを引き立たせるような企画や、スイーツのビジュアル、料理のアイディアを競うような企画は、ソーシャル向き、写真アプリ向きと言えます。
 
この設計を考えるにあたっては、下記を整理してイメージしておくと企画が立てやすいと思います。
 
①参加者に必ずやってもらいたい体験の核 × ②余白として許容することで、より企画が面白くなる範囲
 
①としてどのような体験を設定するかは、「本当に伝わってほしい体験の核」にしぼりきることが大事です。あれもこれもとよくばるとどんどん参加や伝達のハードルが高まり、②の余地が少なくなってしまい、その結果として全体の盛り上がりを損ねることにもつながります。
 
 

ポイント3 「インフルエンサー」依存の企画は継続性や広がりに注意すべき

 
ソーシャル系の企画を立てる際に陥りがちな落とし穴がもうひとつあります。いわゆる「インフルエンサー」と呼ばれる層の起用方法です。
 
後述するKPIの設定とも絡みますが、ソーシャルメディアでの施策は、広告施策と異なり、事前にリーチを確実な形で予約できるわけではありません。そのため、あらかじめなるべくフォロワーの多い「インフルエンサー」と呼ばれる層の方に投稿してもらうことを企画に組み込んでおくことがよく行われています
 
例えばつい最近でもこんな記事が出ていました。
 
インスタグラマ―によるPR投稿、2015年7月から2016年12月の間に急増【THECOO調査】
http://markezine.jp/article/detail/26395
 
この時注意したいのは、このインフルエンサー層を金銭だけで起用してしまうと、契約で決められたコミュニケーション以上のことを行うことが難しくなってしまうという点です。
 
インフルエンサーと呼ばれるような人気がある投稿者には当然多くの企業からの依頼が集中します。契約で決められた期間または回数が終わるとそのインフルエンサーは、次の会社の依頼に対応するということも多くあります。
 
こうした層の投稿だけに頼るプランをしてしまうと、ポイント1であげたような「投稿することの自然さ」「面白さ・目新しさ」などによるオーガニックな投稿を軽視することにもつながり、結果キャンペーンが終わったら「有名な人に投稿してもらった」こと以外は何も残らなかったということにもなりかねません。
 
これを避けるためには、飛びぬけた人気ではなくとも企画分野に関心の深い投稿者層、フォロワー数の分布で「中間の層」に数多く参加してもらえるような設計がお奨めです。こうした層はまさに、「企画に投稿することが自然」な層になるため、自発的、継続的な投稿を見込みやすく、かつ他の投稿者の投稿にも反応してもらいやすいからです。
 
キャンペーンのリーチを考える際には、下記の各層がどれくらい参加し、層ごとにどれくらいのリーチになるのかをイメージしておくとよいと思います。
 
①フォロワー分布でトップ層
②フォロワー分布で中間層
③フォロワー分布で最下層
 
トップ層に頼りすぎる企画は安定性に欠け、最下層が多すぎても広がりにかけますので、「中間層」の動向が重要になってくるというわけです。
 
 

ポイント4 投稿されたソーシャルコンテンツを、自社コンテンツとして活用可能か

 
冒頭で申し上げたように、投稿系の企画だけでマス広告やリーチ系メニューと同等のリーチを達成することは簡単なことではありません。
 
ここで作ったコミュニケーションの価値をさらに高いものにするためには、「投稿されたソーシャルコンテンツ」を一時的なものに終わらせないイメージを持っておくのがよいでしょう。
 
・広告主のオウンドメディアで紹介する
・広告主のソーシャルメディアカウントで紹介する
・店頭施策に活用する
・営業用の社内ツールに使う
・PRのエビデンスとして使う
・広告の素材として使う
 
など様々な用途がありますが、最近では「投稿されたソーシャルコンテンツ」を「広告出稿」に利用する流れが注目されているようです。
 
【参考】
UGCを活用すると広告効果がアップするのは何故? 広告が嫌われる時代のクリエイティブ
http://markezine.jp/article/detail/25786
 
インフルエンサー投稿、いかに運用型広告で活用するか?:エンゲージメント率が100倍という結果も
http://digiday.jp/brands/bypassing-creative-how-agencies-are-turning-influencer-posts-into-programmatic-ads/
 
写真アプリがなかった時代は、ユーザー投稿で広告に使えるクオリティのものを期待するのはかなり難しかったと思われますが、写真アプリの流行により、一般ユーザーの投稿でもかなりのクオリティのものが出るようになってきました。「広告」が広告として成立するためには、ぱっと見でも目を引く必要があり、ビジュアルの持つ役割は極めて重要です。
 
また、ソーシャルメディアのフィードが、広告が出せる面として整備されてきたこともこの流れの背景には大きいです。ソーシャルメディアのフィードは、ガチガチに作りこんだコンテンツが流れる場所ではなく、むしろ一般の生活者の投稿が流れる場ですので、スタジオでプロがとったクオリティでなくても目を引くことは十分に可能で、むしろそれくらいの方が掲載面への馴染みがよかったりするようです。
 
 

ポイント5 適切なKPIの設定をしておかないと続けられない

 
これはソーシャルの企画に限らないポイントで、既に聞き飽きたという方も多い部分かもしれませんので最後に持ってきました。やはりまずはとにもかくにも購買ファネル上で、ユーザーにどのように動いてもらうことが企画の目的なのかを決めることが大事です。
 
もしキャンペーンの目的が「購買」のみなのであれば、写真アプリ上にいる層にわざわざリーチしなくてもよいケースも多いので、本当に写真アプリで実施する必要がある企画か再考すべきだと思います。例えば購買意欲が高い層に検索エンジンやレビューサイトでリーチを増やす余地がある場合などはこれに該当します。
 
また、もしキャンペーンの目的が「幅広い認知」のみなのであれば、これも例えばマス広告やネット広告のリーチ系のメニューで対応できてしまうので、「投稿キャンペーン」という形式が適切であるか再考の必要があります。
 
一定規模の層にブランドや商品への心理的距離を縮めてもらうには、写真アプリでの投稿キャンペーンという形式は適切だと思います。ある程度認知ある層にソーシャルで追加接触できると、ブランドへの関心がぐっと高まったり、購買につながる率が明確に向上することは以前の記事でもデータをご紹介した通りです。
 
この場合、効果の考え方は次のようになります。
 
①ソーシャルコンテンツの質 × ②リーチ量 = ③ブランドリフト量
 
リーチについてはかなり定量化して評価できるようになってきたと思いますが、ゴールであるブランドリフトの程度を定量化するのはなかなか難しく、購買などの数値評価できる指標以外はいまもアンケートに頼るしかないようです。
 
アンケートはアンケートで、恣意性が入り込むのを排除しづらい側面もあるため、私たちはリーチしたユーザーが返してくれるリアクション、特にコメントなどの定性評価可能なものをピックアップしてレポートさせていただくことが多いです。
同様に①のコンテンツの質も定量化することはなかなか難しいため、ポイント2で想定した投稿内容を評価基準として、定性的に評価することが多いです。
 
なお、いまでもたまに投稿キャンペーンのKPIを「投稿数」に設定していらっしゃる企業様をお見受けしますが、これはお奨めしません。質の悪いコンテンツや、リーチのない投稿だけが増加しても、ブランドリフトにはつながらないからです。
 
 

さいごに

 
ざっとソーシャル、特に写真アプリでの投稿企画の考え方を見てきました。
 
チェックすべき領域とそれぞれで考えるポイントを表に整理しておきましたので、ぜひ企画検討時に使ってみてください。
 
写真アプリでの投稿企画チェックリスト
 
なかでも特に「投稿の動機」と「投稿の内容」をきちんと設計することができれば、コンテンツの質は必ず良くなりますので、ここを怠らないことが大事だと思います。
 
 


<筆者プロフィール>
阿部 樹
阿部 樹 (Tatsuki Abe)
ヴァズ株式会社取締役。ウェブ系コンサルティング会社、事業会社を経て、190万ダウンロードを超える人気料理写真アプリ「SnapDish」を運営するヴァズ株式会社にジョイン。事業開発担当として食品・飲料メーカー様のクチコミ構築支援にあたっている。
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