「インハウス」という言葉を最近耳にすることが増えた、という方もいらっしゃるかと思います。今回はこの「インハウス」について、マーケティングの文脈での意味や意義、注目される背景などを解説します。
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そもそもインハウスとは
インハウスは、「社内・企業内の」という意味を持つ言葉で、しばしば「内製化」とも言われます。企業活動において、業務を社外に委託、発注するのではなく、社内で遂行している状態を指して使われている言葉です。
また、規模の大きな企業において、一部の業務をグループ企業が請け負っている場合でも、広い意味でのインハウス、と捉えることができます。
マーケティングにおけるインハウス
マーケティング活動においても、インハウス化(内製化)を進める企業は散見されています。2020年にDIGIDAY[日本版]が実施したアンケート調査では、“「ほぼ内製化しているが、一部外部を利用」がトップで42%。次いで「内製化の部分と外部の利用は半分程度」29%、「100%内製化」14%”という結果がでている(※)など、ここ数年でマーケティングにおけるインハウス化(内製化)は浸透してきていることがわかります。
インハウス化が行われているマーケティング施策の例としては、以下のような業務が考えられます。
SNS運用
今や企業のマーケティング業務において欠かすことのできないものであるSNS。自社アカウントを利用したコミュニケーションに取り組んだことがない、という企業はほとんどいないのではないでしょうか。
「商品やブランドを知ってもらうため」、「ユーザーやファンとコミュニケーションをとるため」、「自社ECへの送客など実際の売上向上を目指すため」、など企業やブランドによって使われ方は様々ですが、自分たちのもつ情報を手軽に発信する手段として、SNSアカウント運用は利用されています。
特にSNSはリアルタイム性なども求められるため、インハウスで運用することで迅速な対応がしやすいというメリットがあり、SNS運用をインハウスで行っている企業も多くみられています。
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オウンドメディア運用
BtoC、BtoB問わず、様々なビジネス形態のマーケティング活動で利用されているオウンドメディア運用。
オンラインでは
- 自社サイト
- 自社メディア
- オンラインセミナー
- メールマガジン
オフラインでは
- パンフレット
- カタログ
- 会報誌
などが主な施策例となっています。SNSアカウント同様、自社のノウハウなどを発信することで潜在顧客との接点醸成や既存顧客との関係深化など様々な成果が期待できるオウンドメディア運用は、広告依存からの脱却施策としても近年注目が高まっています。
オウンドメディア運用など、コンテンツマーケティングについてご興味のある方はこちらの記事もご参考ください。
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デジタル広告運用
デジタル広告運用も、インハウスで行われる場合が多いマーケティング施策の一つです。デジタル運用型広告においては、広告戦略の策定から広告媒体選び、ターゲティング設定、LPを含めたクリエイティブ制作など行う業務は多岐にわたります。
そのすべてをインハウスで行う企業もありますし、一部を外注して運用を行っている企業もあります。
インハウス化することによって、SNS運用同様スピーディーに施策のPDCAを回すことができることもあり、インハウス化が進みやすい施策であるといえます。
もうすぐ下半期。残りの2024年広告市場にどう向き合うべきか。
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※)DIGIDAYリサーチ:インハウス化は、日本でも確実に根付きつつある|DIGIDAY[日本版]
インハウスがマーケティングで注目されている背景
では、企業においてマーケティングのインハウス化が進む背景にはどのようなものがあるのでしょうか。
①専門的な知識や技術を補うためのツールが増えた
ナイル株式会社が行ったマーケティング業務の内製(インハウス)化に関する調査によると、マーケティングの内製化を希望する理由として最も多かったのは「人的リソースがあるから(64.1%)」となっています。
これは昨今、「MAツール」「動画制作ツール」「キャンペーン管理ツール」など、専門的な知識や技術を補うためのツールが増えているということもひとつの理由です。こうしたツールを活用することによって、業務にあたることができる担当者の幅も広がり、また工数の削減により一つの業務あたりに必要なリソースが下がってきたのです。
マーケティング業務に使えるツールについて以下の記事もご参考ください
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②マーケティングにおいて「運用する」という思考が定着しつつある
XやInstagramなどのSNSプラットフォームを筆頭に、マスメディアよりも取り組む障壁の少ない施策として注目されてきたデジタル広告市場。デジタル広告をはじめとしたデジタルマーケティングでは数値的な成果をリアルタイムに確認できることから、これらの結果をもとに改善をしていく、という考え方が浸透してきました。
また、単純に出稿金額や媒体、ターゲットを改善するだけでなく、クリエイティブやLPなどに手を加え、「運用することが大切である」という流れが定着しつつあります。
こうした運用に取り組むにあたり、社内にノウハウが蓄積されやすいインハウス化はますます注目されています。加えて、施策スピードをあげることができるため、運用の効率化につながると考えられています。
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インハウス VS 外注、それぞれのメリットデメリット
このように注目が高まるインハウスマーケティングですが、もちろんメリットデメリットがあります。インハウスと対比されて語られやすい外注とのメリットデメリットを比較してみましょう。
インハウスのメリット&デメリット
<メリット>
①顧客や商品に対する理解が深まる
インハウスでマーケティング施策を行うことで、直接的に顧客のインサイトやニーズに触れる機会がこれまで以上に増えてきます。また、そういったインサイトやニーズに適した施策を意識しながら自社の商品を見つめ直すことで自社商品に対する理解がより深まるのです。
ニーズとはまた違う!顧客「インサイト」とは?
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②施策改善が迅速にできる
インハウスで施策を行うことで、外部とのコミュニケーションコストは減ります。また社内ということで共通認識や目線合わせも行いやすく、結果迅速な施策改善を行うことができる可能性が広がるのです。
③知見やノウハウがたまる
社内でマーケティング施策を手動していくことにより、それぞれの施策についての反省や改善の結果といったノウハウが社内に蓄積されていきます。
<デメリット>
①マーケティング担当者が離職するリスク
インハウスでマーケティング施策を実施している場合、担当者が離職してしまえばまた一から人材を育てなくてはいけません。
②人材の育成にコストがかかる
すでにマーケターとしての実績がある人物を採用する以外では、インハウスマーケティングには人材育成が必須です。しかし育成には時間もコストも必要であり、前述の通り育成した人材が離職してしまうリスクも同時にもっています。
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③新しい情報を入手しにくい
マーケティングの内製化を進めていくと、ついつい目線が内向きになってしまうことがあります。また日々の業務に追われている中で、新しい情報のキャッチアップやアップデートが後回しになってしまう懸念もあるので注意が必要です。
マーケティング情報のキャッチアップにはこちらの記事もご参考ください
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外注のメリット&デメリット
<メリット>
①専門性が高くトレンドキャッチアップが早い
外注の場合、その分野の専門家が施策に着手するので専門性が高いというメリットがあります。またトレンドのキャッチアップも早い傾向があります。
②外部からの新鮮な視点で施策が生まれる
外注の場合、社内の事情についての理解が難しい一方で、そういった忖度なしに外部からの新鮮な視点での提案が生まれるメリットがあります。もちろんそれを採用するかしないかというのは依頼主の判断によりますが、アイディアの幅が広がる可能性が高まります。
<デメリット>
①コストがかかる
やはり外注にはコストがかかります。例えば、広告運用を外注した場合、クリエイティブ製作費や広告運用費など、実際の広告費にプラスして支払うべきコストが発生します。
②知識やノウハウがたまっていかない
外注では、結果を把握し改善を依頼することは可能ですが、実際の改善に直接手を出していないという点から知識やノウハウがたまりにくい点があります。
③コミュニケーションのタイムラグが生じて迅速に施策を回しにくい
外注では、外注先とのコミュニケーションがとても重要となります。しかし他社に一度判断を委ねたり、対応をお願いしたりすることで、タイムラグが生じて迅速に施策を回しにくいデメリットがあります。
このように、インハウスと外注にはそれぞれメリットとデメリットが存在しています。インハウス化に着手する前にはこれらを事前によく理解しておくことが重要です。
インハウスマーケティングで気を付けたいコト
マーケティングのインハウス化を成功させるためには、以下のようなことに気を付ける必要があります。
①インハウス化は徐々に行う
マーケティングのインハウス化をいきなり行うとリソース不足に陥ることがあります。そのため、インハウス化は自分たちの行っているマーケティング施策の中から優先順位を決めて段階的に進めていくことが大切です。実際、マーケティングの内製化をおこなっている企業の中でも、「外注がメインで一部内製化している(37%)」と回答した人の割合が、最も多い(※)という調査結果もあります。
※)マーケティング業務の内製(インハウス)化に関する調査|ナイル株式会社
②属人化しないための体制作り
インハウス化のデメリットで述べたとおり、インハウス化には担当者の離職というリスクがあります。もしマーケティングのインハウス化を進めていく中でそれが属人化してしまうと、こういったリスクに直面した場合の引き継ぎなどが難しくなる可能性があります。
社内でノウハウを共有する場を設けたり、業務を分散させるなどの工夫を行うことをおすすめします。
③インハウスで行う業務と外注で行う業務とを区別する
インハウス、外注それぞれにメリットとデメリットが存在します。社内規模や事情に応じて、「どの部分を外注し、どの部分をインハウスで行うか」といった検討をするなど、柔軟な姿勢を持つことが大事です。それぞれの得意分野を把握し、フェーズにあったインハウス化によって、無理なく業務を遂行することが可能なのです。
④マーケティングツールなどを上手に活用する
一見難しそうに思われる施策を効率的にまわしていくためのツールもたくさん存在しています。これらのツールを上手に活用することでマーケティングのインハウス化の効率やクオリティは格段にあがっていくと考えられます。積極的に情報収集を行い、うまく利用しながらインハウスマーケティングに取り組みましょう。
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