21世紀初頭のインターネットやSNSの発達は、人々の生活に大きな変化をもたらしました。今ではすっかりモノやサービスを買う際にはECがメインチャネルとなり、個人がSNS上で大きな影響力を持つことも当たり前になりました。
この2つのニュースタンダードによって、P2Cという新しいビジネスモデルが近年台頭してきています。
今回はP2Cに関して、D2C・インフルエンサーマーケティングとの違いやメリット・リスクから成功事例までご紹介します!
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P2Cとは
P2C(P to C)とは、Person to Consumerを略した言葉で、影響力のある個人が消費者に対して商品やサービスを直接販売するビジネスモデルのことです。
フォロワーを多く抱えるインスタグラマーやチャンネル登録者数を多く抱えるYouTuberなどのいわゆる「インフルエンサー」が、自分のブランドを立ち上げ、フォロワー向けに販売するビジネスモデルのことを指します。
P2Cの特徴として
- 個人がオリジナルの商品やサービスを企画・製作するところから関与していること
- メインの集客・販売チャネルは、個人のSNS(Instagram・YouTube・Twitter・ブログなど)やオンラインサロン、メルマガであること
- 個人から、ブランドや商品への思いやこだわり・製作秘話を紹介するコンテンツが発信され、広告として機能していること
などが挙げられます。
P2CとD2Cの違い
P2CとD2Cの違いについてご紹介します。
D2C(D to C)は、Direct to Consumerを略した言葉で、企業が消費者に対して商品やサービスを直接販売するビジネスモデルのことです。なお、P2Cは、D2Cから派生して2020年頃に台頭してきたビジネスモデルです。
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P2CとD2Cの違いは、販売する主体が個人であるか、もしくは企業であるか、という点です。また、P2CとD2Cの違いを言い換えると、商品の企画開発に個人が大きく関与しているのがP2Cであり、企業が主体となって商品が作られているのがD2Cとも言えます。
したがって、この2つのビジネスモデルは、卸や販売代理店を通さず、ECサイト等を用いて直接顧客に向けて販売している点では共通しています。
P2Cとインフルエンサーマーケティングとの違い
では、大きな影響力を持つ個人が商品を販売するという観点で、似た手法であるインフルエンサーマーケティングとの違いはなんでしょうか。
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インフルエンサーマーケティングは、商品を販売するための一つのマーケティング手法を指しますが、P2Cはビジネスモデルそのものを指します。したがって、言葉の粒度が異なります。
インフルエンサーマーケティングは、企業がインフルエンサーに商品を提供し、インフルエンサーのSNSチャネル等を通じて、自身のフォロワーに対して商品を紹介してもらうマーケティング手法です。
メリットとして、企業からの発信ではなく、生活者が信頼してフォローしているインフルエンサーの言葉や表現で、自社の商品やブランドの魅力を伝えられる点が挙げられます。
しかし、商品やサービスの企画設計から個人が関与しているP2Cに比べると、商品紹介が表面的な内容にとどまってしまう傾向があります。P2Cはインフルエンサー本人が、企画設計から販売まで全てに関与するため、商品の魅力や商品開発に至った背景など、よりリアルで深い情報をフォロワーに伝えることができます。
P2Cが生まれてきた背景
P2Cのビジネスモデルが生まれてきた背景には、どんな変遷があったのでしょうか。
従来は、企業(メーカー)が「卸→小売」を通じて、消費者に届けるビジネスモデルがメインでした。しかし、ECが発達し消費者に直接販売することが可能になりました。
今ではECでモノやサービスを購入することが一般的になり、ECを用いた直販モデルも大きな市場になっています。そこで、生まれたのがD2Cモデルです。
D2Cモデルは、ECでモノを買うことが一般的になった社会の在り方に加えて
- モノが溢れる社会の中で、消費行動は機能的価値ではなく情緒的価値が重要視される傾向に変わってきたこと
- アドテクの進化により、よりパーソナライズした広告出稿が可能になり、企業が販売チャネルとして直販モデルを費用対効果の高い状態で構築しやすくなったこと を要因に、よりビジネスモデルとして確立されてきました。
独自の世界観とストーリーをもったスタートアップ企業が、自社を応援してくれるフォロワーと濃い関係性を保ちながら、着実に成長していくためのビジネスモデルとしても非常に優れており、多くのスタートアップ企業がD2Cモデルで成功を収めてきました。
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そして、D2Cモデルを販売する主体として、個人がブランド自体や、商品・サービスを作ることができるようになったP2Cというビジネスモデルが生まれてきました。
P2Cが今注目されている理由
P2Cが今注目されている理由を三点ご紹介します。
一点目は、SNSの台頭により、個人が大きな影響力を持つ時代になった点です。個人のファンやフォロワーは、個人で作成したコンテンツを発信し繋がっているため、広告で繋がる場合とは異なる「濃い関係性」を築いている点が特徴的です。
加えて、影響力を持つ個人が抱えるファン・フォロワーは、その多くがミレニアル世代(1990年〜1995年生まれ)や、Z世代(1996〜2015年生まれ)です。彼らの購買傾向として、インターネットを活用したECショップでの購買傾向があるため、P2Cのビジネスモデルが注目されています。
二点目は、個人が手軽に開設できるネットショップが増えたことです。
Shopifyに代表されるデザイン性なども作り込むことができるサービスを用いて、個人がショップを開設することができるようになりました。
BASEやSTORESなど、月額固定費が無料のサービスなども存在しています。それぞれの目的や事業規模に応じて、様々な形でネットショップを開設することができるようになりました。
三点目がD2Cの隆盛を起因とし、OEMメーカーの増加・P2Cを支援する専門サービスの誕生など、P2Cビジネスを行うための環境が良くなっているためです。
ネットショップを用いて、個人がビジネスをスモールスタートする際には、小ロットでの商品製造を発注できるOEMメーカーの存在がとても重要です。近年のビジネス環境の中で、OEMメーカーの需要が増え、発展してきています。
また、最近は個人がブランドをもつP2Cのビジネスモデルにおいて、ブランド立ち上げなどを支援する代理店も生まれてきています。吉本興業所属のお笑い芸人かまいたちさんは、先日オフィシャルファンクラブ「OMAETACHI(おまえたち)」の開設を記念した、会員限定のTシャツなどを販売しました。
その際には、P2C Studio株式会社(UUUMグループ会社 /本社:東京都港区、代表取締役社長:重本 隆之、以下、P2C Studio)が、UUUM所属クリエイターがグッズを販売するオンラインストア「MUUU」での知見を活かし、サポートをされているとのことです。
(引用:P2C Studio株式会社(UUUMグループ会社)、吉本興業所属 かまいたちのオフィシャルオンラインストア「OMAETACHI STORE(オマエタチ ストア)」の運営を開始〜インフルエンサーECの知見を活かした物販ソリューションを本格提供開始〜)
D2Cモデルでの告知から販売までの運用で磨いた知見を活かし、P2Cモデルにおいて最適化した販売戦略を企画〜実行まで支援する代理店も今後増加していくのかもしれません。
P2Cのメリットとリスク
P2Cのビジネスモデルをここまでご紹介してきましたが、より具体的なメリットとリスクをご紹介します。
最大のメリットは、広告費用を最小限に抑えられる(もしくは不要である)点です。ブランドを立ち上げたことの告知・ブランド立ち上げの背景や商品に対する想いなどを、コンテンツにし、無料で数万〜数百万のフォロワーにリーチすることができます。販売開始前から、既に自分のファンを多く抱えており見込み顧客がいる状態です。この繋がりは、広告経由での新規のつながりではないため、企業側が出す広告やPRよりも、ユーザーの心を掴みやすい関係性である点が特徴的です。
また、見込み顧客数やユーザーインサイトを想像しやすい点も挙げます。フォロワー数で見込みが立つ点や、今までのインフルエンサーとしての活動の中で、ユーザーに求められているニーズへの解像度が高まっているケースが多いため、ファンにとって需要がある商品を企画立案しやすいことが考えられます。
ここまで、メリットをお伝えしてきましたが、P2Cモデルにはもちろんリスクもあります。
一点目は商品の品質管理の観点です。インフルエンサーは、ブランド立ち上げのプロフェッショナルではないため、売れる商品を企画設計する点において、難易度が高い点が挙げられます。
二点目は、売上規模がインフルエンサーのフォロワー数に大きく依存する点です。個人の発信で万が一炎上してしまった場合、ブランド商品の売り上げも大きく左右されることとなるでしょう。
三点目は、タレントマネジメントの観点で、リソース面も課題を抱えることとなる点です。従来からの発信活動も継続しながら、ビジネスも成長させていくのは容易なことではないでしょう。「なぜブランドを立ち上げるのか?どんな未来があり、どんな状態でありたいのか?」のマインド面(WHY)から、「どのように成し遂げるのか?」「何を提供するのか?」の機能的な側面(HOWやWHAT)まで、ハイレベルなブランド戦略作りを推進していくチーム作りが求められます。
ビジネスを軌道に乗せる活動は、従来のインフルエンサー活動とは一線を画すものですから、インフルエンサーとして「なぜブランドを立ち上げるのか?」に対して、納得感がある状態かどうかが、成功の重要なポイントになってくるでしょう。
P2Cの成功事例5選
P2Cでの成功事例として、5つの事例をご紹介します。
MARINESS
YouTubeのチャンネル登録者数約330万人を誇る大人気の宅トレクリエイター竹脇まりなさんと、夫のダーウィンさんが監修する宅トレブランドです。2021年12月に発売したMARINESS Protein(マリネスプロテイン)はわずか7か月間で25万個もの販売を記録し大ヒットとなっています。
ECのみならず全国7,500の小売店舗に展開しており、コンシューマーブランドを目指して進化を続けています。
話題のブランド「MARINESS(マリネス)」成長の裏側に関するインタビューはこちら
▶P2Cブランドからコンシューマーブランドへ。宅トレクリエイター竹脇まりな監修「MARINESS」×P2C Studioの挑戦
supply the right
人気ファッションアドバイザーのMB氏が展開するブランドです。P2Cのビジネスモデルの代表例といっても過言ではないでしょう。MB氏はYouTubeだけではなく、ブログやメルマガ・オンラインサロンなどもメインの発信チャネルとして活用しております。
中でもメルマガは、個人配信者として堀江貴文氏を超えて個人の有料メルマガ発行数で2位(有料メルマガ総合ランキング|まぐまぐ!2022/1/1時点)をマークするほど、絶大な信頼を男性から得ています。
また、MB氏のブランドは予約販売に特化しており、在庫をなるべく抱えないリスクの少ない運用をしている点が特徴です。
Yunth(ユンス)
美容家/コスメセレクターである千葉由佳さんが立ち上げたブランドです。「アラサーだけど可愛く」をモットーに、自分自身を最大限に楽しむ美容法やライフスタイルを雑誌やSNSで発信しています。おすすめコスメを紹介するインスタライブでは「#ちばゆか買い」現象が起きるほどの人気を誇っており、Yunthも先行予約で即完売するほど話題となっています。
急成長P2Cブランド「Yunth(ユンス)」のインタビューはこちらから!
▶カリスマ美容インフルエンサー千葉由佳のP2Cブランド「Yunth」急成長の裏側
JANTJE_ONTEMBAAR(ヤンチェオンテンバール)
元SMAPの香取慎吾さんのプライベートブランドです。香取さんが出演するBASEのCMを一度は見たことがある方も多いのではないでしょうか。実は、香取さんは以前からプライベートブランドとその店舗をお持ちでしたが、コロナ禍の情勢もあり、BASEを活用したネットショップでの販売を始められたそうです。YouTubeやInstagramなどを活用するインフルエンサーではなく、TVの世界で活躍しているトップアイドルの新しい在り方にもなっています。
R COFFEE BOTTLE
6人組の動画クリエイター「東海オンエア」のメンバーりょうさんが監修するボトルコーヒーです。東海地区(愛知、三重、岐阜の一部)のセブン‐イレブン店舗約1,400店(2022年6月末現在)で販売されており、発売からわずか1週間で20万本を突破、大きな話題となっています。
インフルエンサーがプロデュースした商品がコンビニに置かれ大きなヒットになっている本事例は、個人の力が増している新時代の象徴とも言えるのではないでしょうか。
まとめ
今回はP2Cのビジネスモデルについてご紹介しましたが、いかがでしたでしょうか。
個人がメディアを持つことができ、社会に対して大きな影響力を及ぼす時代のなかで、新たに台頭してきたビジネスモデルでした。
近年は、P2Cを支援する専門代理店も生まれてきており、個人がブランドを持つ流れがますます加速していくでしょう。
筆者も、料理系YouTuberをよく拝見するのですが、気まぐれクック金子さん・谷やんさんが販売した、キッチングッズ(まな板や包丁・エプロンなど)には、非常に興味を持ちました。普段人柄を知っていて、好意度が高い方の想いがこもった商品は「買う理由」があり、愛着もわきやすいですね。
今後さらに発展するであろうP2Cのビジネスモデルについて本内容をぜひご参考ください。