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「中国語ばかり聞こえてきて日本じゃないみたい」「本当に」
そんなやりとりが耳に飛び込んでくる東京・銀座の歩行者天国。
・・・といっても日本語の会話じゃありません、カメラをぶら下げた中国人旅行者同士の感想です。ひと昔前、ハワイやグアムから帰ってきた友人に「どうだった?」と聞くと「日本人だらけ。お土産屋さんの店員も日本語だよ」など返ってきましたが、きっと今、中国でもそんな旅行話が盛り上がっているのでしょう。
今回は訪日客の多くが利用する「旅行関連」のサイト群を見ていきたいと思います。
 

中国からの訪日客どのくらい?

 
VISIT JAPANプロジェクトの発足は2003年。当時年間500万人台だった訪日外国人旅行者の数を1,000万人に増やすことを目標としていました。2013年には1,000万人突破し、昨年2016年には2,000万人も軽やかに超えてしまいました(2,404万人)。
●訪日旅行促進事業(観光庁)
来日促進の取組み効果に加え、円安の影響、そして中国の空前の海外旅行ブームが重なったことも大きな要因です。
 
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中国からの旅行者が年間国別訪日客数でトップに躍り出たのは2015年のこと。
2016年にはさらに増え、中国人旅行者(含む香港)と台湾人旅行者の数をあわせた中国語圏の旅行者数は、訪日客数総数の半分以上となります。
●日本政府観光局(JNTO)「訪日客数の推移(2003年~2015年)」<PDF>
ちなみに上の表を見るとおわかりいただけますが、中国大陸からの旅行者数が急増しているとは言え、台湾人旅行者数も相当なもの。台湾からは毎年のように来日するリピーターも多いので、東京・大阪・京都など主要観光地以外の場所では、台湾からの個人旅行者が上回っているところも多そうです。
せっかくなので、直近での推移も見てみましょう。
●日本政府観光局(JNTO)「統計データ(訪日外国人・出国日本人)」
上記ページ内の「国籍/月別 訪日外客数(2003年~2017年)」に国別・月別推移が掲載されています。
中国からの訪日客数が前年比2倍以上となった2015年の伸び率がもっとも高いのですが、ここ半年もまだ2桁台の伸びとなっています。
 

年月 訪日客数 前年同月比
2016年10月 506,159 13.6%増
2016年11月 432,802 19.2%増
2016年12月 427,462 23.2%増
2017年01月 630,600 32.7%増
2017年02月 509,100 2.0%増
2017年03月 50,900 2.2%増

 
ちなみに2017年2月の伸び率が小さいのは中国旧正月が2月から1月にずれ込んだため。中国では「春節」が日本の正月にあたり、その前日から7日間が休みとなります。来年2018年は2月16日が春節です。
●中国の旧正月(春節)基礎知識と2017年最新情報(All About [中国] )
日本側からだけでなく、送り出し側の調査データも見てみましょう。
●中国旅游研究院、携程旅行网发布《2016中国出境旅游者大数据》(中国旅游研究院)
こうした調査データは様々なところから出ており、調査主体や方法によって数値も変わってきますが、上記レポートは結構興味深い数字が並んでいるので、訪日中国人に関連する業務に携わっている方はぜひご一覧ください。
「出境(旅)游」とは海外旅行のことです。2016年に中国から海外へ旅行した人の数はのべ1.22億人、日本の総人口に匹敵する数となりました。中国全体の人口から考えると1割ほどです。この数字には中国大陸から台湾を訪れている相当な数の旅行者はおそらく含まれていないので、それが加わるとさらに数字は伸びそうです。
国土も広大で長い歴史を持つ中国は、国内にも大規模な観光スポットを多数抱えており、当然、海外旅行だけでなく国内旅行も大いに盛り上がっています。旅行に使った費用は、16:84で圧倒的に国内旅行が多くを占めています。
さらに旅行出費を国別に見た場合には
 
1 タイ(泰国)
2 日本
3 韓国
4 アメリカ(美国)
5 モルディブ(马尔代夫)
 
こんな順番となっています。
モルディブは、日本でも新婚旅行・ダイビングのメッカとして大人気の島国ですが、中国でもやはり空前のモルディブブーム。以前は観光客の大半を占めていたヨーロッパ諸国からの旅行者を抑え、ダントツの1位に躍り出ています。
この記事では他に、団体旅行(跟团游)と個人自由旅行(自由行)の比率や、宮崎駿監督作品「もののけ姫」の舞台モデルともいわれる屋久島ウォークなど体験型旅行についても書かれています。
富裕層に限られますが、2016年は「全面的防癌検査」などを受けられる「医療旅行(医疗旅游)」も一気に増えたそうです。携程を通じての手配は5倍となり、ひとりあたりの費用も非常に大きなものとなっています。そのトップ国も日本。このあたり、今後さらに受け入れ態勢が整えば、もっと伸びてくる部分かもしれません。
 

旅行ガイドコンテンツも充実!中国の主要旅行予約サイト

 
2017年1月に「第39次中国互聯網絡発展状况統計報告」が公開されました。それによると、航空チケットやホテルその他旅行サービスをネット予約するインターネットユーザーの数は2.99億人に達しておりインターネットユーザー全体の40.0%。前年比でも15.3%の伸びとなっています。モバイルからの利用者も2.62億人で37.7%。
●第39次中国互聯網絡発展状况統計報告(中国語/PDF)
空前の国内外旅行ブームの中、オンライン旅行予約サイト(OTA/オンライン・トラベル・エージェンシー)も大躍進しています。大手サイトは国内外のツアー販売や航空チケット・ホテル予約だけでなく、旅行情報サイトにユーザーの旅行記投稿まで兼ね備えた総合サイトとなっており、そのコンテンツの豊富さ充実度には驚かされます。
 
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●携程旅行网(携程旅行網/シエチョンリューシンワン/Ctrip)
http://www.ctrip.com/

まずは中国最大の旅行予約サイトの「携程旅行網」。1999年に上海で設立され、2003年にはナスダック上場。トップページをじっくり見ていただけるとだいたいどういったサービスを提供しているか理解できると思います。ツアーやホテル・航空チケットだけでなく、鉄道チケット、海外レンタカー予約やアミューズメント施設などの入場券販売などもすべてこのサイト上で行うことができ、中国国内でのシェアは非常に高く、私自身もよく利用していました。
中国のオンライン旅行予約サイトは、エージェンシーとしての役割だけでなく、「旅行ガイド」コンテンツが非常に充実しているのも特徴です。
 
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タイトルロゴ下の青いメニューバーにある「攻略」をクリックしてみてください。「攻略」や「指南」は旅行の場合「ガイド」といった意味で使われています。
●携程旅游攻略
日本の旅行会社サイトにも、もちろん一定量の旅行情報コンテンツはありますが、それだけを見に行く価値があるほどではないことも多いでしょう。携程旅行は違います。攻略トップページ右側にありますが、1億8千万人の会員を有し、彼らからの積極的な情報・写真・旅行記投稿もあり、巨大なソーシャル旅行メディアとなっています。
 
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まずは日本を見てみましょう。
●2017日本旅游攻略(携程攻略)
「日本热门(熱門)目的地」を見ると、日本で人気の高い観光地が並んでいます。右上の「更多日本目的地」をクリックしてみてください。現時点では325の都市が掲載されています。
県別に観光スポットを探すこともできます。
私は千葉県在住で、成田空港と東京ディズニーランドを除くと、それほど外国人に知られたスポットはないと思うのですが、どうでしょう。
●2017千葉県旅游攻略(携程攻略)
見ると「成田山新勝寺」「マザー牧場(妈妈牧场)」などが登録されています。
私の地元の香取市の観光スポットも複数登録されていました。日本国内でもさほど知名度ある場所ではないのでびっくりですが、情報は少なく説明文も一行ほど。登録をすればコメントや写真も追加もできるので、今度時間ができたら、いちユーザーとして地元情報の増強を図りたいところです。
 
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●日本旅游遊記(携程攻略)
「游记(遊記)」は旅行記です。
携程攻略の利用ユーザーが自分の旅行記を投稿できるコーナーになっています。日本だと「4travel.jp」やじゃらんnetの「みんなの旅行記」などが同様の旅行記プラットフォームですね。
日本の旅行記は、現時点で1万6000編以上掲載されていました。膨大な数ですが、旅行の日数(行程天数)や時期(出発時間)、さらには子連れか友達と一緒か、あるいはカップルかなど同行者分類で絞り込むこともできます。
「遊記玩法(旅行スタイル)」には「美食」「省銭(節約旅行)」「購物(買い物)」なども。
 
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人気トップの旅行記は、2015年に夫婦で13日間旅した「丸子玩玩」さんの旅行記。なんと閲覧回数は94,000回を超え、コメントだけでも130件以上入っています。なにより、このまま一冊の旅行記本になりそうな詳細解説と美しすぎる写真に驚かされます。城崎温泉で彼らが泊った旅館にはきっと、この旅行記を参考にした多くの人が泊ったことでしょう。
もしインバウンド関連の仕事をされている方がいらっしゃいましたら、ぜひ検索して、自社の施設やサービスについて体験談を書いている人がいないかどうかチェックしてみてください。実は話題になっていたり、わかりにくい点があって質問が多数上がっていたりする可能性もあります。
携程攻略は中国語圏だけでなく、英語・日本語・韓国語など複数言語化もしており、グローバルに展開しています。日本法人も2014年に設立されました。
●Ctrip日本語版
中国への旅行・出張などのホテル予約や列車チケット事前予約などで利用している日本人も多いようです。ユーザーレビュー数も非常に多いので、初めての都市でのホテル探しにも非常に参考になります。機会があれば是非使ってみてください。
 
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●去哪儿网(去哪儿網/チューナールワン)
https://www.qunar.com/

「去哪儿」とは「どこへ行く?」という意味です。中国ネット企業大手の百度の傘下となり、その後2015年に百度と携程攻略が資本提携した際に携程攻略と合併しました。携程旅行同様の総合サイトで、旅行にかかわるあらゆるサービスを予約することができ、かつ旅行ガイドとしても豊富なコンテンツを有しています。
少しだけそのあたりを見てみましょうか。
日本といえば「桜」。リピーターの中には桜の時期にあわせて訪日し、「花見」を主目的にしている人たちも。
 
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●日本花見旅游攻略(去哪儿駱駝書)
この特集ページでは、「日本花見」というタイトルの電子書籍を無料でダウンロードできます。「免费下载骆驼书(免費下載駱駝書)」というところをクリックしてみてください。ページ数は36ページと少ないものの、花見文化についての解説や開花前線の図解、桜の種類、東京都内の桜の名所案内などが、きれいな写真とともに掲載されています。
花見だけではありません。
他都市のガイドブックも同様に無料ダウンロードできます。
ユーザーが投稿する写真満載の旅行記コーナーも非常に充実しています。日本国内の旅行記の写真を眺めているだけでも「中国人はこういうものに興味を示すのか」という新鮮な発見がたくさんあるはずです。ぜひ覗いてみてください。
●2017日本旅游攻略(去哪儿攻略社区)
 
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●蚂蜂窝(螞蜂窩/マーフォンウォー)
http://www.mafengwo.cn/

こちらは「自由行」、つまりツアーではない個人での自由旅行にも重点を置いた「スズメバチの巣」という名前の旅行サイトです。
旅行サイトは往々にして、行きたい場所を「地域」「国」「都市」と下りてゆく作りになってしまうものが多いですが、中国の旅行サイトは目的地がまだ定まっていない人をもナビゲートしてくれる機能が充実しているように感じます。おそらく国土の広さ、国内観光スポットの多さも背景にあるのでしょう。「この季節、何を主目的に、誰と旅するなら、どんな候補地があるか」というところの条件を絞り込みながら目的地を模索するのにも適した構成になっています。
例えばこのページ。
●自然風景旅游地推薦(螞蜂窩)
現在の設定条件は「自然風景」だけですが、これに「6月」「带父母(親を連れて)」など条件を追加していくと、目的地も絞り込まれていきます。
また「旅行攻略」では、去哪儿同様PDF版のガイドブックを無料でダウンロードできるようになっています。
 
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他にも多数のサイトがあります。
基本的に同様のフルラインアップのコンテンツになっていますが、それぞれ特徴や注力しているところも異なりますので、時間があれば中身、特に日本関連の旅行記など覗いてみてください。
●艺龙旅行网(芸龍旅行網)
http://www.elong.com/

●酷讯旅游网(酷訊旅游網)
http://www.kuxun.cn/

●同程旅游
https://www.ly.com/

●欣欣旅游网(欣欣旅游網)
http://www.cncn.com/

●驴妈妈旅游(驢媽媽旅游)
http://www.lvmama.com/

●途牛旅游网(途牛旅游網)
http://www.tuniu.com/

オンライン旅行サイトの他、既存の旅行代理店のサイトもあります。
●中国国际旅行社(中国国際旅行社)
http://www.cits.cn/

●芒果网(芒果網)・・・中国港中旅集団
http://www.mangocity.com/

●春秋旅游网(春秋旅游網)・・・春秋旅行社
https://www.springtour.com/

 
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最後にもうひとつ、ポータルサイトの旅行コンテンツも見ておきましょう。
●百度旅游(バイドゥリュヨウ)
https://lvyou.baidu.com/

こちらは検索大手「百度」の旅行コンテンツです。
航空チケットの販売は資本提携もしている携程旅行網が担い、ページもコブランドになっています。
百度旅游も、旅行の目的地探しから現地情報の収集、他の旅行者の体験談閲覧、グルメ情報に施設チケットの購入と、旅行計画をたて準備をするために必要なものがワンストップで揃っています。
●2017日本旅游攻略(百度旅游)
日本の旅行ガイドもかなり細かい場所までしっかり情報が掲載されており、その土地ごとにどういった特産品やお土産があるかなども丁寧に解説されています。
 
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「行程计划(行程プラン)」では、他の人が実際に作って旅した行程表を参考にしたり、あるいは自分で行程表を作ることができます。地名や行きたいスポット名をクリックで並べていくと「どの程度の日数・時間が必要か」という推奨所要時間もだしてくれ、地図上に線も引いてくれるので、初めての場所を訪れる際、視覚的にさくさく旅行プランを組み立てることができて非常に便利です。
●腾讯旅游(騰訊旅游)
http://ly.qq.com/

●新浪旅游
http://travel.sina.com.cn/

旅行サイトではありませんが、以前グルメを中心とした口コミサイトとして紹介した「大众点评(大衆点評)」も、旅行者にとって欠かせない情報源。このアプリをスマホにインストールしておけば、旅行中の現地で、最寄りのレストランや観光スポットを瞬時に調べ、さらに訪れた人・利用した人達の大量のクチコミ情報も得ることができます。
●無印良品新宿店(大衆点評)
先日立ち寄った東京・新宿の無印良品が、駅から少々離れているにも関わらず中国人旅行者がいっぱいで驚いたのですが、後で見てみると大衆点評で多くの「评论(評論/コメント)」がついている店舗でした。単に店舗の良し悪しだけではなく、ショップであれば「何を買ったか」「いくらだったか」そんな情報も写真付きで事細かに書き込んでいる人もたくさんいます。
評価数やコメントが増えればさらに注目が集まり、ますます多くの人が訪れる好循環につながります。
イベントや展示会にブース出展しての観光PRも大切ですが、実際にネット上で観光地や自治体、施設、店舗などに関してどういった情報が掲載されており、またどんな体験談・評価が書き込まれているのかを確認・研究してゆくことは大切です。名称と簡単な紹介以外書き込まれておらず、「さらなる情報をお寄せください」となっているところもあります。そうした情報ページに、より詳しい解説文章やアクセス案内、魅力的な写真を登録してゆくことで、興味を持ってくれる人も増える可能性があります。
また「観光スポットに関する情報を、来てくれた中国人観光客にも伝えたい」と思った時、もしこれらのサイト内に中国語による詳しい情報が掲載されているなら、そのURLをQRコードにして掲示したり、印刷配布物の中に盛り込んだりするのも効率的で歓迎される方法です。
まずはこれらのサイトを見ながら、どう活用できるか、アイディアをだしてみてください。
 
 


和田 亜希子
和田 亜希子(Akiko Wada)
都市銀行、検索エンジン等を経て2001年独立。企業からの受託でクチコミを活用したマーケティング、アフィリエイト・プログラム導入運用支援などを行うかたわら、「東京ビアガーデン情報館」「台湾温泉ガイド」などの専門サイトを企画運営。主な著書「アフィリエイト・マーケティング実践マニュアル(翔泳社)」「ひとつの ブログで会社が変わる(技術評論社)」「ミニサイトをつくって儲ける法(日本実業出版社)」。


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