オルビス記事 OGP

媒体単価の上昇、Googleのアップデート・Yahoo!の機能表示制限・ITPによる脱Cookie依存、各媒体の審査厳格化。近年のデジタル広告市場は今、激しい変動の中にあります。

特に最近は、「成果の出るクリエイティブパターンや広告手法の移り変わりが激しい」「現場の改善手法にも限界を感じており、新しい打ち手や方法がないか模索している」という声もよく聞かれます。

そこで今回は、オルビス株式会社 マーケティング戦略部 新規戦略グループにて、EC事業の新規顧客獲得を担当している照井真規子氏に、新規顧客獲得広告およびLP施策において日々のどのような工夫を行っているのか、現場のリアルなお話をお伺いしました!

※本記事は2020年11月18日(水)にアライドアーキテクツ株式会社が開催したセミナー「オルビス & エーザイの現場の裏バナシ!ECの新規獲得を飛躍させる広告・LPのリアル」の内容を編集したものです。

オルビスECの新規顧客獲得を担当、「CPO重視」でダイレクト広告を運用

-まずは照井さんのご担当を教えてください。

私はオルビスのEC事業における新規顧客獲得をミッションとする部署で、運用型のダイレクト広告を担当しています。

20代後半~30代の方をメインターゲットとしたエイジングケア用スキンケア商品「オルビス ユー」や、クレンジング商品「オルビス オフクリーム」などが主力商品です。

ORBIS U(オルビス ユー)ブランドサイト
ORBIS U(オルビス ユー)ブランドサイト:https://www.orbis.co.jp/brand/orbis_u/

-新規顧客獲得にあたり、見ている指標と頻度を教えてください。

デイリーで最も注視している数値は「CPO(Cost per Order=本商品の受注1件あたりにかかった広告費)」です。他にもインプレッションやCPM、クリック数、コンバージョン件数やCPAもデイリーでチェックしていますが、商品を購入いただく新規のお客様を獲得することがミッションですので、CPOが最も重要な指標であると考えています。

LTVは毎日変わるものでもありませんので、確認する頻度は月に一回程度です。ユニットエコノミクスを見て、次にどのメディアに注力するか等の戦略を決めています。

-CPOの目標値や許容値はどのように定めていますか?

CPOの目標値や許容値は、メディア毎の転換率やLTVを見ながら、ユニットエコノミクスの観点で商材別に定めています。目標値を基準にデイリーでCPOの数値をチェックしますが、必ずしも「この数値を超えたらその要因を深く分析する」という運用はしていません。日によって多少数字が上下することはありますから、あくまで全体感で見て気になるところを深堀るようにしています。

フロント商品に関してはできるだけ許容CPOを維持したい一方で、広告を出稿しインプレッションを伸ばすことで、指名検索数が増えることもあります。よって、多少CPOが上振れても、許容CPOから大きく外れない限りは良しとする場合もありますね。

照井真規子氏
オルビス株式会社 マーケティング戦略部 新規戦略グループ 照井真規子氏

2018~2020年の3年間で広告出稿媒体が変化

-ここ数年で新規獲得広告を出稿する媒体にはどのような変化がありましたか?

オルビス出稿媒体の変化
オルビス株式会社の2018年~2020年にかけての出稿媒体の変化

まずSEMに関しては、この2年で社名検索のボリュームが増えています。2018年にオルビスのリブランディングを行ったのですが、その成果が出てきていると感じています。

Facebook広告は基本的にInstagramが中心ではありますが、安定して獲得できています。Facebookはとにかくクリエイティブ本数を多く入れてどんどん回していくのが勝ちだと考え運用しています。

この1年で最も獲得効率が上がってきたのがInstagramです。代理店さんと一緒にクリエイティブに注力した結果が出てきています。Instagramユーザーの広告への抵抗感が減ってきた感覚もあり、ストーリーズ広告からの獲得も多くなっています。

また、コロナ禍によりYouTubeの視聴者が増えたと聞いたため、今年からYouTube広告にしっかり取り組むようになりました。商材によってはヒットし始めています。他メディアと比較してCPOが格段に安いというわけではありませんが、他メディアと同じように獲得できる兆しが見え始めているところです。

さまざまな媒体がありますが、やはりその時々のよい媒体を探していくのが大事ですね。商材毎にメディアとの相性がありますし、見せ方をどう設計するかで効果は全く異なってきます。従来とは違う方向性のクリエイティブが突然ヒットすることもありますから、一つの方向性で運用してみて合わないから「この媒体は良くない」と判断するべきではないと思います。

また、常に新しい媒体の情報にアンテナを立てておくことも大切です。同業界で横のつながりや代理店さんから、どんなに小さい媒体の情報でも集めるように努めています。

(参考)アライドアーキテクツ株式会社がEC企業17社に取ったアンケート結果。
最もコンバージョンが獲得できた広告媒体が、2018年~2020年9月の間に大きく変遷していることが分かる。

広告媒体の変化
アンケートの詳細はこちら:https://smmlab.jp/article/ec-directmarketing-real/

各媒体の掲載面を意識、月に100本以上のクリエイティブを出稿

-広告に使用するクリエイティブはどのような体制で用意しているのですか?

その年ごとのテーマや、その時々の季節にあったコピーをチーム一丸となって考えており、それに沿ったクリエイティブを代理店さん主導で制作していただいています。

本数としては、全媒体あわせて月間100本を超える広告クリエイティブを常時回している状況です。媒体によって面のサイズが違いますし、また例えばFacebookで当たったクリエイティブがLINE広告では視認性が悪くてまったくヒットしないなどもありますから、各メディアの掲載面を意識してクリエイティブを制作しなければならないと考えています。

(参考)アライドアーキテクツ株式会社がEC企業17社に取ったアンケート結果。
半数以上の企業が広告バナー・LP内の画像・CRMメール内の画像などを、月21本以上制作している。ダイレクトマーケティング業務では非常に多くの制作物が必要であることが分かる。

1か月のクリエイティブ数
アンケートの詳細はこちら:https://smmlab.jp/article/ec-directmarketing-real/

-ここ最近で、成果が出る広告クリエイティブに変化は見られますか?

生活者による広告の捉え方が変わってきていると感じています。コロナ禍により店舗に行けずECサイトで購入する方が増えていますが、ECで販売されているスキンケア商品は非常にたくさんあり、選択肢が溢れている状態ですよね。そのような中、企業から一方的に「この商品がいいですよ」とお伝えしても信頼性に欠けてしまい、それだけだと購入いただけないと感じております。

2018年のリブランディング前は、「新規トライアルセットの内容はこんなに豪華でこんなに安いんですよ」というクリエイティブの見せ方も実施していました。リブランディング後は、よりお客様の信頼性を高められるクリエイティブや広告を作ることに注力しています。弊社は自社商品への愛がとても強いので、何も考えずに広告クリエイティブやLPを作ると、押しつけがましくなってしまうのです。企業から愛を伝える場合は、広告ではなく顔が見えるPRが行う方が適していると考えています。

オルビス株式会社 照井真規子氏
オルビス株式会社 マーケティング戦略部 新規戦略グループ 照井真規子氏

LPには、商品情報だけでなく情緒的なコンテンツも戦略的に配置

-次に、広告の受け皿となるLPの作り方や運用方法についてお聞かせください。まず、LPにさまざまな情報を掲載していますが、その順番はどのように決めていますか?

まずはファーストビューに、商品のベネフィット、ファーストオファー(LPの中で最初の商品へのご購入導線)、ランキングサイト受賞歴などの権威コンテンツを掲載、ページ冒頭で簡潔に商品の情報を伝え、スムーズにご購入いただけるよう工夫しています。

ここから下の箇所は、商品をより詳しく知りたい方やまだ悩まれている方がスクロールしてご覧になるところだと考えているので、「ここちを美しく。」というオルビスのブランドコンセプトや、商品を利用いただいた方のユーザーボイスなど、より情緒的なコンテンツを掲載するようにしています。

オルビスのブランドメッセージ
LP内にて、オルビスのブランドメッセージ「ここちを美しく。」を表現している。

本来であれば、最初からこうした情緒的な要素も分かってご購入いただく方が本商品購入の転換率も良いと思います。ただし、LPの冒頭にそれを持ってきてしまうと、ユーザーさんによって興味関心度合いが異なりますので、離脱されてしまう可能性も高いのではないかと考え、ファーストオファーよりも下に掲載しています。

その次に掲載しているのがユーザーボイスです。中でも、現在力を入れているのがリアルなお客様のUGCコンテンツを表示する箇所です。UGC活用ツールLetroを利用し、お客様のアカウント名も表示した状態でリアルな口コミコンテンツを掲載しています。

企業からの一方的な情報だけでなく、こうした一般のお客様の口コミがあることで信頼性が増し、実際にCVRも向上しています。また、UGCの内容を見て、お客様が弊社の商品を手に取っていただいたときにどのように感じたかを把握することも大切にしています。

UGC活用ツール「Letro」を利用し、LPにリアルなユーザーボイスを掲載している。

-LPの検証はどのように行っていますか?

まず、ファーストビューは常にA/Bテストを行いながらより良いデザインを探っています。広告のクリエイティブ制作にあたり季節ごとにコピーを考えていますが、LPにもその考えを反映させています。やはり、広告クリエイティブとLPの整合性が取れないとユーザーさんのモチベーションは下がりますから、きちんとメッセージやトーンを合わせることを意識しています。

ユーザーボイスも色々なコンテンツに差し替えて、A/Bテスト検証をしています。特にリアルなUGCを掲載している箇所では、LPの流入元となる広告出稿先メディアによってUGCの並べ方や表示の仕方を変更するなど、さまざまなテストを行っています。また、表示方法の検証とあわせて、同じく最適なUGCの内容についても検証しています。やはり、流入元のメディアごとにユーザーの属性や状態も異なりますから、どの広告施策からどんなユーザーさんが入ってくるかを意識した運用が大切だと思います。

また、動画を中心にしたLPなど、新たなチャレンジも実施し色んな軸でPDCAを回しています。

(参考)アライドアーキテクツ株式会社がEC企業17社に取ったアンケート結果。
新規獲得LPの改善施策としては、ファーストビュー検証と口コミやUGCの掲載・検証がトップに並んだ。

LPの改善施策
アンケートの詳細はこちら:https://smmlab.jp/article/ec-directmarketing-real/

新たな媒体や施策にもチャレンジ、オルビスブランドの持続的成長を目指す

-今後の展望についてお聞かせください。

リブランディング以降、メインターゲットである20代後半から30代の方々をしっかり獲得できるようになってきました。ただし、ずっと同じ媒体で獲得し続けていくことにはもちろん限界があると思っています。今後も新たなメディアや施策にもチャレンジし、また場合によっては層を拡げていくことなども視野に入れながら、オルビスブランドを持続的に成長させていきたいです。