忙しいビジネスパーソンの「弱み」を攻めろ!?【「オウンドメディア」の話をしよう(3)】
*本記事は「日経BPコンサルティングスタッフルーム」からの寄稿を、SMMLabが一部編集してご紹介しています。
 

前回(第2回:「おしゃれな誌面」や「きれいなWeb」では戦えない)は、オウンドメディアにおける「媒体コンセプト」の重要さと、最新のオウンドメディアには、「機能が明確なソリューション媒体」が求められていることをお話しました。つまりは、媒体コンセプトそのものにソリューションを組み込めればベスト、というわけですが、実際のプロジェクトでそこへたどり着くまでには、膨大な量のブレーンストーミングと、チーム自らでダメ出しし、破棄したアイデアシートの山が避けて通れません。今回は、具体的な事例をご紹介しながら、コンセプト作りの実際についてお話します(全5回)。
 


 
忙しいビジネスパーソンの「弱み」を攻めろ!?【「オウンドメディア」の話をしよう(3)】
 
X社から、会員誌創刊のお話をいただいたのは数年前。店頭でお客様に無料配布する雑誌スタイルの媒体は既にお持ちでしたが、新たに会員向けの媒体を創刊したい、とのことでした。
 
X社では、同社の商品・サービスの利用頻度が高いお客様を会員組織化していて、利用額や利用頻度に応じてポイントが貯まる仕組み。一定以上のポイントをお持ちのお客様、すなわちX社の最も大切なお得意様たちに、新しい会員誌を届けたいというわけです。もちろん、目的は“ブランド・ロイヤルティの向上”です。
 
媒体コンセプトの構築に当たって、X社から提示された前提条件は3つありました。
(1)既に持っている店頭配布の媒体より、上級の媒体にすること
(2)お客様のご自宅に郵送するので、ご家族にも読んでいただけるライフスタイル誌であること
(3)X社が届ける意味のある媒体、コンテンツであること
 
 
安直な発想をすれば、高級志向の家庭向けライフスタイル誌にして、誌面のところどころにX社の商品・サービスをからめた記事を載せれば、一応、上記の3条件はクリアしたことになります。しかし、そうした仕掛けのPR誌は世の中にたくさんありますし、家庭向け高級ライフスタイル誌は書店にあふれていますから、このプランが、新たに読者を惹きつけるものとは思えません。
 
何より、媒体コンセプトそのものが漠然としていて、何のために発行するのかがハッキリせず、X社がお客様を“コアなファン化”あるいは“サポーター化”していく推進軸にはなり得ません。実は、前提条件の3番目である「X社が届ける意味」こそが、媒体コンセプトの出来を左右する最も重要なキーなのです。
 
 

コンセプト作りの基本は「読者を知る」こと

 
コンセプト作りの基本は「読者を知る」こと
X社のお得意様は、その大半がビジネスパーソンです。しかも、30代、40代の働き盛りが中心。その中でも、特に忙しい方々と言ってもいいでしょう。まずは、この人たちが、どんなライフスタイルを持ち、どんな家庭を築いているのかを知ることから始めました。
具体的には、周囲のツテを頼りに、X社のお得意様と同じ条件を持つビジネスパーソンにコンタクト。1人1~2時間の時間を取っていただき、個別にインタビューを行っていったのです。出版社が新雑誌を創刊する際、コンセプトの確認・修正のために、想定読者の聞き取り調査を行いますが、まさにそれと同じ作業です。
 
十数人のインタビューが終わり、それぞれの聞き取り内容をキーワードに要約、人数分の結果カードを会議室で並べてみると、予想もしていなかった共通項が見えてきました。何だったと思います?
 
仕事に忙しい30代、40代のビジネスパーソンという条件は同じでも、ライフスタイルは十人十色です。衣食住という暮らしの基本スタイルからして幅が広いですし、旅とか趣味といった遊びの要素となるともうバラバラ。そんな中で、唯一、全員から共通してポロリとこぼれた本音が、“家族への負い目”でした。
 
日々、仕事に忙殺されているビジネスパーソンにとって、十分な家族サービスができないことは共通する悩みです。特にこの年代であれば、お子さんは保育園、幼稚園から小中学生といった親とのスキンシップが大切な年頃。家族を大切に思い、家族と過ごす時間をたくさん取りたいのに、仕事が忙しくて思うにまかせない。ちょっと後ろめたいなあ、というのが期せずして一致した皆さんの気持ちだったのです。
 
 

「家族サービス」をサポートする媒体!

 
「家族サービス」をサポートする媒体!
ここまで来れば、もうお分かりでしょう。調査の結果を踏まえ、私たちが構築した媒体コンセプトは、
お客様の家族サービスをサポートし、
時にはお客様に代わり、
X社がご家族にサービスする媒体
──です。
 
こうすることで、媒体が提供する価値が明確になりますし、X社がお得意様に届ける積極的な意味も出てきます。同じようなジャンルの記事であっても、市販のライフスタイル誌とは切り口で差別化できます。「家族サービス」をテーマに、イベントなどへの展開も可能です。そもそも「家族サービス」をコンセプトに据えられるのは、オウンドメディアならではでしょう。X社には、とても喜んでいただきました。
 
 
以上、媒体コンセプトの作り方をご紹介しましたが、次回は、同じような媒体コンセプトが競合する中で、差別化が可能な編集企画の作り方についてお話します。
 
 
 


 
ソーシャルメディアが成熟期を迎え、企業のマーケティングでは今後、より「コンテンツ」が重視されるようになると考えられます。
そこでSMMLabでは、日経BP社の各種メディア編集部出身者を中心に運営されているコンテンツメディア『日経BPコンサルティング スタッフルーム』から、コンテンツマーケティングに関する有益な記事をピックアップしてご紹介することにいたしました。コンテンツ制作のプロによる専門性の高い情報を、ぜひご参考ください。
 
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日経BPコンサルティングは、企業のコミュニケーション活動をサポートする会社です。「調査・分析力」と「編集力」をクルマの両輪とし、それぞれ<お客様を知る><お客様に伝える>ことのプロフェショナルたちが、クライアント企業のために幅広い活動を展開しています。
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<ライター紹介>
能勢 剛氏能勢 剛
日経BPコンサルティング 取締役・企画出版本部長
「日経トレンディ」「日経おとなのOFF」など、市販3誌の編集長を経て現職。
趣味は、自転車、カヌー、パラグライダーなど、乗れるものは何でも。好物は、ウイスキー、ワイン、日本酒、ビール、紹興酒など、アルコールの入っているものなら何でも。
 



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