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動画広告市場が拡大し続けています。2020年の動画広告市場推計値2,954億円に対し、2024年には6,856億円にまで拡大すると推計されており(出典:株式会社サイバーエージェント、今後デジタル広告で継続的に成果を出し続けるにあたり、動画広告の攻略は大きな鍵の一つになると考えられています。

そこで今回は、動画クリエイティブ制作ツール「LetroStudio」を提供しているアライドアーキテクツ株式会社の藤田佳佑が、動画広告市場が拡大している背景と2021年の動画広告トレンド、お勧めの動画広告クリエイティブの作り方を解説します。

※本記事は2021年4月6日(火)に株式会社デジタルアイデンティティとアライドアーキテクツ株式会社が共催したセミナー「CPAが1/2に改善?!成果が出る動画広告クリエイティブとこれからの広告運用PDCA〜脱Cookie依存が求められるデジマの変革期を乗り越える〜」の内容を編集したものです。

動画広告市場が拡大する背景

スマートフォンの普及や高度なデジタル環境の整備により、誰もが気軽に動画に接触するようになりました。特に2020年以降は新型コロナウイルスの影響による巣ごもりを余儀なくされ、生活者の動画視聴時間はさらに伸びています。人々の生活において動画を見ることが馴染み深いものとなり、自然と動画形式の広告も受け入れられやすくなっていると考えられます。

また、ここ数年の急激なデジタルマーケティング環境の変化も動画広告市場が拡大する要因となっています。

広告市場年表

EUの一般データ保護規則(GDPR)の施行など世界的な個人情報保護の流れを背景に、2017年9月にAppleがサードパーティのCookieを対象にSafari上のトラッキングを制限するITP(Intelligent Tracking Prevention)を発表しました。

それに端を発し、各社がCookie制限を強化。2020年1月にはGoogle Chromeもターゲティング広告のために使用されるサードパーティCookieの提供を今後2年間で段階的に規制すると発表、これからはリマーケティングに頼らない広告配信手法にどう対応していくかが各社の課題になっています。

また、生活者の消費体験を損なわない有用性の高い広告体験を追求するために、各プラットフォーム社が広告関連の規制を強化。

2017年12月のGoogleによる通称「健康アップデート(※)」や、2019年5月のYahoo!によるアフィリエイトサイトを含む成果報酬型サイトに関する広告掲載基準の変更、2020年8月のYahoo!によるコンプレックスを表現した広告への審査基準の強化など、従来の広告のやり方を大きく揺るがすような変化がありました。

(※)医療や健康分野の情報に関してより信頼性が高く有益な情報を上位表示させる対策

これらを背景に、広告主各社による媒体別広告予算の振り分け方にも変化が生じています。

以下の図は、化粧品や健康食品などをECで販売する通販業界の有名企業17社に「もっともコンバージョンが獲得できた媒体」についてのアンケートを取った結果です。2018年は多くの企業がアフィリエイトからもっとも多くのコンバージョンを獲得していましたが、2019年からそのバランスが変化、Instagram広告やYouTube広告などファーストパーティーデータを持つSNS媒体の比重が増加し、2020年には全ての媒体がほぼ等しい結果になっています。

そして、これらの伸びてきた媒体が力を入れている配信手法の一つが動画というわけです。Instagramストーリーズに代表されるように各媒体が表現の幅を広げる中で、生活者とのコミュニケーション手段の一つとして動画の存在感が増しているのです。

最もコンバージョンが獲得出来た広告媒体

動画広告と静止画広告の効果を比較!3つの事例

では、動画広告は静止画広告に比較し、成果につながりやすいのでしょうか?具体的な事例を3つご紹介しましょう。

・妊活サプリ「ベルタ葉酸マカプラス」|(株式会社ベルタ)

妊活サプリ「ベルタ葉酸マカプラス」を提供する株式会社ベルタは、Facebook/Instagram広告において、価格訴求をメインにした静止画クリエイティブと静止画の一部を動かす動画クリエイティブを出稿し、A/Bテストを実施しました。その結果、静止画クリエイティブに比べて動画クリエイティブはCVRが1.1倍、CPO改善率が11%となり、高い成果を出すことができました。

<静止画広告の一例>

BELTA
商品写真+価格訴求をメインにしている。

<動画広告の一例>

商品写真+価格訴求をメインにしたクリエイティブに、キラキラとした動きを加えている。

・女性専用の暗闇フィットネスジム「EXPA」(RIZAP株式会社)

女性専用の暗闇フィットネスジム「EXPA」を展開するRIZAP株式会社は、Facebook/Instagramにおいて動画広告を配信。EXPAのコンセプト「女性の可能性を広げる」を動画で情緒的に表現することで、静止画広告配信時と比較しリターゲティング配信はCPA1/2に、オーディエンス配信ではCPAを1/5に削減することに成功しました。

<動画広告の一例>

・毛穴おそうじスプレー「エマルジョンリムーバー」(水橋保寿堂製薬株式会社)

水橋保寿堂製薬株式会社は、Instagramストーリーズにおいて、お客様がInstagramで商品を紹介した写真とクチコミを組み合わせた動画を配信したところ、静止画広告配信時と比較しCPA改善率50%の成果を上げました。

このように動画広告を配信することで静止画広告よりも効果を上げた事例も多く存在します。一方で、まだまだ静止画クリエイティブの方が効果を出せる場合が多いことも事実です。

静止画クリエイティブを動画クリエイティブに切り替えることで、必ず単体の広告効率が良くなるわけではありません。動画クリエイティブは、あくまで広告全体の効率を改善する上で持っておくべき有効な引き出しの一つと考えるべきでしょう。

SNS動画広告で成果を上げるポイントについて解説した記事はこちら
SNS動画広告の成功事例で解説!成果につながる動画クリエイティブ制作のポイント

動画広告制作現場が抱える課題

動画クリエイティブの制作には、静止画の制作と比較して時間もコストもかかります。それにも関わらず「動画にすることで必ず静止画に勝てる」わけでもないため、動画の制作に時間やコストを投資するモチベーションを保ちにくいことがあります。

また、動画も静止画と同様に、広告出稿が進むに連れてクリエイティブは摩耗していきます。動画だから摩耗スピードが遅くなるというわけでもありません。高速でPDCAを回すことが重要なデジタル広告運用において、動画を量産することの負荷は高いと考えられがちであり、動画の構成アイデアや素材も枯渇しがちになります。これらの理由から、「動画広告は割に合わない」と諦める広告主も多いのが現状です。

実際に、アライドアーキテクツが2020年12月にマーケター向けに行った調査では、回答者の約40%が「制作費が高い」「作れる人がいない・足りない」ことを動画制作の課題として挙げています。次いで「ノウハウがない」「時間がかかる」「素材がない」という回答が多く見られました。

動画政策における課題

2021年の動画広告トレンド

動画をデジタル広告運用の一つの手として持っておくことが重要である一方で動画制作へのハードルが高い現状を踏まえてお勧めしたいのが、静止画の勝ちクリエイティブを元にした派生動画クリエイティブの活用です。

以下の図をご覧ください。まずはAdobeなどを用いてデザイナーの方が制作した静止画クリエイティブから効果が良いものをピックアップし(下図左)、オファー部分など静止画の一部のみを動かす動画を制作します(下図①)。その動画をさらにLINE用にLINEカラーの緑色とスタンプを使用したパターンを作ったり(下図②)、コピー違いのパターンを作ったり(下図③)することで、一つの勝ち静止画クリエイティブから三つの動画クリエイティブを制作することができます。勝ち静止画ベースの動画制作&A/Bテストのため、新しい構成のアイデアを生み出し続ける必要もありません。これからはこのような動画クリエイティブを活用した広告出稿が増えていくのではないでしょうか。

静止画勝ちクリエイティブ活用
すでに手持ちの静止画クリエイティブの一部を動かしたり、コピーテキストやカラーを変えたりすることで、バリエーションを増やすことができる。

動画広告クリエイティブの作り方

このような静止画派生動画クリエイティブは、ツールを使うことで簡単に制作することが可能です。

私たちが提供している動画制作ツール「LetroStudio」では800を超える動画テンプレート、多彩なスタンプバリエーションを揃えており、既にお持ちの静止画クリエイティブを用いて、1本あたり15~30分程度で誰でも簡単に派生動画を制作することができます。先ほどの3パターンの派生動画クリエイティブも、最大90分程度で用意が可能です。デザイナーの方の時間を使う必要もありません。

そして、低負荷で動画の制作が可能になるため、摩耗することを前提に動画を量産できるようになります。勝ちクリエイティブのバリエーションに「動画」という選択肢を持てるようになり、一つの勝ちクリエイティブの摩耗時間を延ばすことにもつながります。

これからもデジタル広告を取り巻く環境は大きく変化していくと考えられます。その中で、動画を一つの手として持っておくことは大きな強みになるはずです。動画は難しいからと諦めることなく、ぜひチャレンジしていただきたいと思っています。