D2C ベンチマークアンケート

現在、注目を浴びている「D2C」。企業は今、D2Cというビジネスモデルにどのような期待を寄せているのでしょうか?また、日本ではどのような企業が「D2Cブランド」としてベンチマークされているのでしょうか?

そこで今回は、2020年2月27日にオンライン形式で実施したセミナーイベント「D2C最前線」に参加したマーケター約110名に、現在の「D2C取り組み状況」と「注目しているD2Cブランド」を聞きました。

D2Cは一時的な「バズワード」ではない!参加者の8割が「すでにD2Cに取り組んでいる」もしくは「今後取り組み予定」と回答

今回は、各企業のD2C事業への取り組み状況を探るべく、セミナーイベント「D2C最前線(※)」の参加者にアンケートへの協力を依頼、111名の方にご回答いただきました。

(※)セミナーイベント:D2C最前線とは?
株式会社SUPER STUDIOとアライドアーキテクツ株式会社が共同で開催したセミナーイベント。2020年2月27日にWeb上でのライブ配信形式で実施された。D2C最前線の各セッションレポートはこちら

まず、D2C事業への現在の取り組み状況を聞いたところ、39%が「すでにD2Cに取り組んでいる」、38%が「今後事業として取り組み予定で情報収集している」と回答しました。D2Cに興味を持ち今後の可能性として情報収集をするだけでなく、実際にD2C事業を進めている(あるいは進めるために具体的に動いている)企業が多いことが分かりました。

D2C 取り組み状況

D2Cに取り組んでいる理由、または取り組む予定として情報収集している理由に関しては、「事業を拡大するために」「商品を長く使ってもらうために」必要と考えているという回答が3分の1を占めました。一時的なバズワードとして「D2C」に注目しているのではなく、自社の課題を解決するために「D2C」に取り組んで行かねばならないと捉えられていることが分かりました。

D2C事業に興味を持つマーケターに「ベンチマーク」されているブランドは?

では、そんなマーケターの間では、現在どんな「D2Cブランド」が注目されているのでしょうか?今回の調査対象者111名のマーケターの中から複数名が「参考にしたい」もしくは「ベンチマークしている」と名前を挙げた全20ブランドをご紹介します。

まず、圧倒的に多くのマーケターから名前が挙がったのが「BULK HOMME」「BASE FOOD」の2ブランドでした。

①BULK HOMME(株式会社バルクオム)

「メンズスキンケアブランド世界シェアNo1」をビジョンに掲げ、「メンズビュ―ティという新たな価値を確立させるため、日本だけではなく世界を牽引するブランドになる」を揺るがない信念とする「BULK HOMME」。

2013年に創業以来、快進撃を続けており、現在はオンラインストアのほか、全国1,000店舗以上の小売店・ヘアサロンでも販売、2017年の台湾を皮切りに中国、韓国、香港にも進出、近くフランス・イギリスでの展開も発表されています。2019年には、世界608ブランドがエントリーした「Cosmoprof Awards 2019」のHair Product部門で「THE SHAMPOO」(シャンプー)がグランプリ受賞するなど、国内外で数多くの賞を受賞する快挙を達成しています。

同社の徹底的にこだわりぬいたプロダクト作りや、ブランドの世界観をしっかりと維持しながらもさまざまなデジタルマーケティング手法に果敢にチャレンジする姿勢は、多くのマーケターからの注目を集めています。

②BASE FOOD(ベースフード株式会社)

「主食をイノベーションし、健康をあたりまえに」をミッションとし、「栄養のインフラ」を目指す「BASE FOOD」が展開する「完全栄養の主食のサブスクリプション」は、忙しい現代人の生活にマッチし、販売開始から約3年で、完全栄養の麺「BASE NOODLE(ベースヌードル)」と、完全栄養のパン「BASE BREAD(ベースブレッド)」の日本国内累計販売食数が100万食を突破(2019年9月末時点)しました。

クラウドファンディングから始まった同社が大切にしているのは「明確なミッション」「それに共感してくれる人の熱量」。同社は「BASE PASTAがここまで広まってきたのは、自分たちがなぜこれをやっているのかをきちんと伝えることで、共感してくれたメディアの方々、一流のシェフやアスリートの方々、SNSなどで広めてくれるお客様たちから、想定以上の機会をもらってきたことが大きい」と分析しています。
(引用:https://www.shopify.jp/blog/success-story-basefood

同社のミッションを大切にする姿勢や、SNSや独自コミュニティ「ベースフードラボ」を通じて顧客との対話を繰り返す姿は、D2Cブランドのあり方として大変参考になります。

ここからは、ほぼ同数を集めた全18ブランドを一挙にご紹介します。

③BOTANIST(株式会社I-ne)

2015年の発売以来累計販売本数5,000万本を突破、快進撃が続くシャンプーブランド「BOTANIST」。ネットから始まった同ブランドは、今やどの小売店でも目にするメジャーなブランドの一つとなっています。

シンプルながらも「ネット上で映える」パッケージで、モデルやスタイリストなどを中心にInstagram上で大きな話題となり成長してきた同社。華やかに見えるその裏には、緻密なターゲット戦略、考え抜かれた価格設定、徹底してデータに基づくダイレクトマーケティング戦略などがありました。
(参考:https://netshop.impress.co.jp/node/5936

たった5年でここまで大きなブランドに成長させた同社の戦略は、D2Cブランドのお手本として多くのマーケターから注目されています。

④MEDULLA(株式会社Sparty)

サイト上で診断を受けることで、自分だけのカスタマイズシャンプーを創れる「MEDULLA(メデュラ)」。9つの質問に回答するだけでカルテを発行、約3万通りから自分にあったシャンプーが処方、自分の名前が入ったボックスに入れられ、サブスクリプションモデルで定期配送されます。

デジタルマーケティングだけでなく、さまざまなリアルイベントを通じて直接ブランドの価値観を伝え、また顧客の声を聴くことも大切にしています。

⑤DUO(プレミアアンチエイジング株式会社)

2010年に販売を開始したアンジエイジング商品、DUO(デュオ)「ザ クレンジングバーム」は、2020年2月には販売個数1,300万個を突破した人気商品です。発売当時は市場にほとんどなかったクレンジングバームをクレンジングの人気カテゴリーに押し上げたことで知られる同社は、同じコスメ通販業界の多くの担当者に参考にされています。

⑥ORBIS(オルビス株式会社)

言わずと知れたポーラ・オルビスグループのオルビス株式会社。「カタログ通販ビジネス」から「ブランドビジネス」へー自らを「第二創業期」と称するオルビスは、自らの提供する価値を「スマートエイジング」であるとし、それを体現するプロダクトとして「オルビスユー」を投入。同商品は、発売から1年で異例の販売累計460万個を突破する人気商品となっています。
(参考:https://agenda-note.com/career/detail/id=2422&pno=1

また、肌への機能が認められた特定保健用食品「ORBIS DEFENCERA(オルビス ディフェンセラ)」も好調で、2019年1月の発売から約1年で約115万個、約29億円の売上を記録したことも話題に。「飲むスキンケア」という新しい提案が生活者に受け入れられ、多くの雑誌などでコスメアワードを受賞しました。
(引用:http://corp.orbis.co.jp/info/pdf/200214.pdf

⑦FUJIMI(トリコ株式会社)

無料肌診断をもとに、個々の肌に合ったカスタマイズサプリを提供するブランド「FUJIMI(フジミ)」。2018年4月の創業以来、すでに40万人もの肌診断データを蓄積しており、そのデータを顧客とのコミュニケーションや新たな商品開発に活かしています。

同社は、コンプレックス訴求やマイナス訴求になりがちなサプリメントを、「このサプリメントを飲んでいる自分が好き」「このブランド素敵だから買ってみよう」という意識に変えていきたいとしており、パーソナライズ戦略に加えて、商品のデザイン性、シンプルさなども徹底的に追求していきブランド化していく必要があると語っています。

⑧N organic(株式会社シロク)

株式会社サイバーエージェントの100%子会社、株式会社シロクが展開する国産品質オーガニックコスメ・化粧水「N organic」。

発売以降急速に実績を伸ばす同ブランドを支える、サイバーエージェントグループによる巧みなデジタルマーケティング手法は、多くのマーケターの参考になります。

⑨北の快適工房(株式会社 北の達人コーポレーション)

もともとは北海道の特産品を販売していた同社のものづくりの原点は、「流行商品」ではなく、品質に満足して何度も使ってもらえる「実用商品」を作ること。「びっくりするほど良い商品ができた時にしか発売しない」を明言するほど、こだわりの商品開発を行っています。

また、同社はデジタルマーケティングに非常に強いことでも知られています。運用は外部に委託せずインハウスで実施、またマーケティングのシステムを自社で開発するほど力を入れています。国内だけでなく、「Facebook広告を用いて海外からの売上を4カ月で30倍に延ばす」など、海外向けマーケティングの好事例としても注目すべきです。
(参考:https://www.goodfind.jp/articles/1401

⑩Mediplus(株式会社メディプラス)

創業15年で売上約80億円の化粧品ブランド「メディプラス」は、オールインワンの「メディプラスゲル」を中心に成長。近年は、創薬ベンチャーを買収、通販だけでなく実店舗への展開も強化するなど、競争が激化するオールインワン市場で勝ち抜くための新たな戦略を展開しています。
(参考:https://netshop.impress.co.jp/node/6147

また、戦略の一つとして、メディカルホームケアに共感してくれる層を増やすことを目的に、「肌と心のストレスオフ」「オフ活理学などの専門家の監修のもと、「ストレスオフ」の普及に努めていることにも要注目です。

⑪MANARA(株式会社ランクアップ)

累計販売本数1,000万本、ホットクレンジングゲルで有名な「マナラ化粧品」は、「会える通販」をめざし、「1000meet up」企画として1年間で1000名の顧客に会うプロジェクトを実施。月に5〜6回のペースでリアルイベントを開催し、様々な顧客と直接交流する機会をもっているそうです。

「ネット通販」の枠を超え、顧客との直接の対話を大切にする同社の取り組みは、長く愛されるブランドの作り方として大変参考になります。

⑫ALOBABY(株式会社N&O Life)

「メイドインジャパン」のベビースキンケア商品「ALOBABY」を展開するN&O life社。2013年の創業当初から「メイドインジャパンブランドをグローバルブランドにしていく」をビジョンとしており、ジャパンブランドの「安全・安心」を活かしやすい商材であるベビースキンケアからスタートしたそうです。

現在は、「ALOBABY」に加え、女性向けのオーガニックスキンケアブランド「HALENA(ハレナ)」や、オーガニックシャンプーブランド「SINCE beaute(シンスボーテ)」なども展開。自社ECだけでなく、各商材の特徴あわせて楽天やAmazonなどのチャネル展開も重視した運営を行っています。

⑬FABRIC TOKYO

店舗で短い時間で体のサイズを測定、データはクラウドに保存され、その後はいつでもネットで気軽にスーツをオーダーすることができる「FABRIC TOKYO」のオーダースーツサービス

同社が目指しているのは「洋服の提供」ではなく、「古く非効率となってしまっている旧来から続くアパレル業界の仕組みをテクノロジーによって現代社会に最適化すること」。古くからあるアパレル業界の仕組みを同社がどのように破って新たな常識を作っていくのかが注目されます。

⑭ALL YOURS(株式会社オールユアーズ)

インターネット時代のワークウェア」をコンセプトとし、「仕事中はストレスがなく、ちゃんと見えて、日常生活ではリラックスして、気にせず着られる」洋服を提供している「ALL YOURS」。そのロゴは「大切なのは世界の中心でも自分中心でもなく『あなた中心』であること」を表しており、「色落ちしない黒いパンツ」「しわにならなくて丸洗いできるセットアップ」など、使う人のことを一番に考えた洋服作りを行っています。

年間を通じて購買型クラウドファンディングを行っており、「# 着たくないのに毎日着てしまう」シリーズには累計3000万円以上の支援が集まり、話題となっています。
(引用:https://camp-fire.jp/projects/view/75069

⑮Foo Tokyo(株式会社Next Branders)

肌へのストレスを徹底的に排除したパジャマやウェアなど上質な「リラックススタイル」を提案するD2Cライフスタイルアパレルブランド「Foo Tokyo(フー トウキョウ)」。人がリラックスした時にゆっくりと息をはく「ふぅ」がブランド名の由来とされています。

日本のいいものを日本のブランドが使って世界に発信する」にチャレンジ、オールジャパンの生産体制で、最高品質の商品提供にこだわっています。
(参考:https://www.readytofashion.jp/mag/news/foo_tokyo_kuwabara_2018/

⑯17kg(株式会社イチナナキログラム)

インスタグラムと相性のいい商材として「韓国レディース服」に着目、立ち上げられたブランド「17kg」。「社員の平均年齢が22歳」と若いメンバーにより経営される同社は、売上前年比500%もの急成長を果たしています。
(参考:https://ecnomikata.com/original_news/22653/

若い感性を活かし、ソーシャルメディアを駆使して成長を続ける同社の戦略には、たくさん学ぶべき点があります。

⑰北欧、暮らしの道具店(株式会社クラシコム)

「卓越したコンテンツ力」×「EC」を展開、「コンテンツマーケティング」のお手本としても大変有名な「北欧、暮らしの道具展」。輸入商品の小売ECからスタートした同社は、コンテンツマーケティングを駆使して人気店となり、現在は物販売り上げの4割がオリジナル商品、公式Instagramアカウントのフォロワー数は91万人にも及んでいます。

また、同社は、そのメディアの強みを生かし、「BRAND NOTE PROGRAM」という広告事業(タイアッププログラム)も展開。2019年には、新しい広告プランとして、同社がYouTubeなどで発表しているオリジナルドラマ「青葉家のテーブル」とのスペシャルタイアッププランも発表しています。
(参考:https://markezine.jp/article/detail/30551

⑱タマチャンショップ(有限会社九南サービス)

「ニッポンのおかあちゃんになりたい!」をコンセプトにさまざまな食品を販売する、宮崎県都城市に本拠地を置く自然食品屋「タマチャンショップ」。そのブランドネームも店長の母親の実名から取られています。

2004年に小さな椎茸農家が始めたECショップは、たまたまテレビで取り上げられた商品を取り扱っていたことをきっかけに注文が増えはじめ、今では楽天のショップオブザイヤ食品ジャンル賞を2年連続で受賞するほどの規模に成長しています。多くのクレームが寄せられるような事態が発生した際も顧客への丁寧な対応を続けたことが信頼につながり、今の成長につながったと分析されています。(参考:https://netshop.impress.co.jp/node/1276
地方の農家発ブランドショップの成長モデルとして大変参考になります。

⑲NOSH(ナッシュ株式会社)

糖質30g以下・塩分2.7g以下で高たんぱく質の食事を専属の料理人が調理し、冷凍で提供するサービス「NOSH(ナッシュ)」。美容のためのダイエットだけでなく、「生活習慣病」を予防するための食事としても注目が集まります。

NOSH の会員は約15,000人で、直近では月間生産量は20万食にまで達しているそう。2019年12月には複数社から合計4.6億円の資金調達もしており、これからのさらなる拡大が見込まれます。
(参考:https://thebridge.jp/2019/12/nosh-series-b-round-funding

⑳よなよなエール(ヤッホーブルーイング株式会社)

ファンマーケティング」を実践する企業として必ず名前が挙がる「ヤッホーブルーイング」。ソーシャルメディアアカウントの運営、ビール醸造所見学ツアー、数千人のファンが集まって同社の商品を楽しむ「超宴」、また2015年頃からは年に数回「よなよナイト」という名称で「オンライン飲み会」も開催するなど、ファンマーケティングを同社のマーケティング戦略の中心に置いています。

ファンを満足させるコンテンツを提供し続ける同社の姿勢は、長く愛され、選ばれるブランドづくりのお手本として大いに参考にすべきでしょう。

注目されるブランドに共通するのは徹底的な「顧客視点」

今回は、D2Cに向き合うマーケターから注目されている20のD2Cブランドをご紹介しましたが、どのブランドにも共通しているのはとにかく徹底的に「顧客視点」に立った商品作り、ブランド体験の提供、マーケティング施策の実行をしていることです。

物や情報があふれる今の時代に選び続けてもらうブランドになるためには、顧客が思わず語りたくなるオンリーワンの商品、顧客体験を損なわない垂直統合されたサプライチェーン、デジタル上の顧客反応に基づいた高速なデジタルマーケティング施策の推進、顧客の声を即座に反映した商品や売り場づくりなど、変化の激しい現代にあわせたビジネスの展開が必要であり、それこそが現在、多くの企業が「D2C」モデルに注目する理由なのではないでしょうか。

「D2C」は「自社で製造した商品を、デジタルマーケティングやソーシャルメディアを駆使して、自社ECにて消費者に直接販売すること」と定義されることが一般的ですが、必ずしもその型に当てはめることだけが正解ではありません。もっとも大切なことは、今回ご紹介したような先行D2Cブランドの事例も参考にしながら、自社ならではのD2Cモデルを構築していくことと言えるでしょう。