全世界5, 500万ユーザーを突破、急成長のアプリ『LINE』を展開するNHN Japan株式会社 舛田淳氏に、今後のLINEが目指す世界、そして企業によるLINEのマーケティング活用の未来についてお聞きしました。


サービス開始からわずか1年強で全世界5, 500万ユーザーを突破、破竹の勢いで成長を続ける『LINE』。
今回は、前回に引き続き、LINEのマーケティング分野を統括するNHN Japan株式会社 舛田淳氏に、お話をお聞きしてきました。
舛田氏が語る、今後のLINEが目指す世界、そして企業によるLINEのマーケティング活用の未来とは?
前回記事:全世界5, 500万ユーザーを突破!『LINE』を大ヒットさせたマーケティング戦略とは? NHN Japan株式会社 舛田淳氏【キーパーソンインタビュー】(1/2)
 

LINEを世界の共通言語にしたい

 
-5, 500万人のユーザーをベースに、LINEはこれからプラットフォーム化を目指すとのことですが、既存のSNSのような「タイムライン」や「マイページ=ホーム」を持つと、今までのLINEと見える世界が変わってくるのではないでしょうか?今後、LINEが目指している世界はどんなものなのでしょうか?
LINE 舛田氏スマートフォン上のコミュニケーションを一手に担い、最終的にはLINEを世界の共通言語にしたいと思っています。iPhoneとか、Androidとか、そういうレベルにLINEを持っていきたいですね。最近「あとでLINEするね」という会話を聞くようになりましたし、また、アーティストがLINEという言葉を歌詞の中に入れてくださったり、オリンピック選手の方々がチーム内のコミュニケーションツールとして使ってくれたりしていますが、そのようにLINEを「文化」にしていきたいんです。
よく、「SNS化することでLINEはだいぶ変わりますね」と言われますが、私たちは変わらないと思っています。なぜなら、LINEのコアバリューはあくまで「知り合い同士のコミュニケーション」「強いキズナ」であり、タイムラインができてもそれに変わりはないからです。LINEの場合は、「友達の友達」は「友達」ではないのです。FacebookやTwitterは、「友達の友達」は「友達」なので、さらに「友達」を増やしていきましょうというものだと思いますので、LINEとは役割が違うと考えています。
現在進めているプラットフォーム構想は、元々「LINE +」というコードネームで実施していました。この「LINE +」というコードネームは、つまりLINEの基本的価値はそのままにしておいた上で、色々なサービスを足していきましょう、ということです。ですので、今の知り合い同士のグループ通話やメッセージのシンプルさは、まさにコアバリューとしてそのままであり、その上で機能を拡張するということ。その拡張する機能の一つとして、タイムラインであるとか、ホームであるとか、LINE Channelというものがプラスされてくるということなのです。あくまでもメッセージが基本機能なので、LINEを開くといきなりタイムラインが開くような形にはしていません。
 

企業のマーケティングプラットフォームとして

 
-次に、企業のマーケティング活用についてお聞かせください。今、企業の人たちはどうしたらLINEに入っていけるかを考えていると思います。今後、LINEでは企業のマーケティングプラットフォームとしてどのような計画や見通しを立てているのでしょうか?
できるだけ多くの企業にLINEをマーケティングに使って頂きたい、インフラになりたいという思いはあります。
よく「公式アカウントも無料で掲載されるようにしてもらえないか」と言われるんですね。でも、現時点では、そうしても誰も得しないのではないかと思うのです。今の時点で無料解放したとしても、その集客はまた企業の皆さまに自分でやっていただかなくてはならない。それならば、別にLINEでなくても、TwitterやFacebookでよいのだと思います。
もちろん、そんなに遠くない未来にローカルビジネスなどにもお使いいただけるように持っていきたいとは思っています。また、将来的にはAPIをオープンにする可能性もあると思っています。でも、私たちはまだ企業のマーケティング活用に対するノウハウも積んでいないですし、プラットフォーマーとして成熟していない。ユーザーのマインドもそこまでには達していないと思うのです。今はまだLINEが枠を作って、その枠に出て頂いた企業には責任を持ってユーザーをお届けするステージだと思っています。また、リアルグラフを扱っているので、そう簡単にはフルオープンにするべきではないとも考えています。
私たちが目指しているのは表面的なエンゲージメントではありません。マーケティングの最終目標は、エンゲージメントを深めて、高めて、あくまでも「コンバージョン」につなげることです。LINEによって、その最終的なアクションに繋がるプロセスがより短縮化できれば良いかな、と。ローソンさんの企業アカウントで実施したクーポンは、まさにそのような考え方です。アカウントとお友達になって頂いて、そこでユーザーがクーポンを発行してお店に行くことで、他の買い物も見込むことができます。実際に、ローソンさんの事例はかなりうまくいっていますね。
 
-一方で、ユーザーにとっては企業からのプッシュ通知が多くなることへの懸念もあるかと思います。またせっかくお友達になってもプッシュを切られてしまうケースも出てきているのではと思いますが、その辺りはどのようにお考えですか?
確かに、LINE企業アカウントの強力さは、「数字」も連れてきてくれますが、当然やりすぎるとあまりよろしくないという状況は出てきています。今まさに、私たちも企業の皆様と相談しながら、どのような間隔(ペース)でやればよいのかを試行錯誤しているところです。
また、当然それはコンテンツによっても変わってくるものだと思っています。例えば、先日まで「五輪ニュース」という公式アカウントを開設しており、そのアカウントでは1日にかなり多くの数を配信しましたが、退会率は非常に少ないものでした。一方で、一日一回しかプッシュしないものでも、ユーザーにとって有益でないと判断されるものであれば、退会していくものだと考えています。ですので、単純にプッシュをすればよいという話ではなく、ユーザーにとって有益なコンテンツをいかに出していけるかが非常に大切だと思います。
 
-最後に、LINEが将来的に目指す企業とユーザーのコミュニケーションのあり方、エンゲージメントのあり方についてご意見をお聞かせください。
LINE 舛田氏現在、LINEの公式アカウントは「ユーザーのコミュニケーション」の中に企業が入っていくというスタンスですので、何かしらユーザー側にメリットがあることが大切です。それはクーポンでなくても、例えばOne to Oneマーケティングや、お客様センターのようなものかもしれません。今まで、CRMとして色々なソリューションがあったと思いますが、将来的にはLINE上でオーダーが受けられて、サポートが受けられて、クレームも入れられて、キャンペーンもできて、という形態もありえるのではないかと思っています。
そして、LINEでどのようなマーケティングを行うかを、最終的には企業側が「哲学」として選択して、ユーザーとリレーションを図っていただけるようになる状態を目指したいですね。
そのために、この下半期で私たちがやるべきことは、LINEクーポン、LINE占い、また将来的にはLINEコマースなどのカテゴリーを作って区画整理をし、その中で企業の皆様がうまくビジネスを回せるようにすることだと考えています。そして、私たちも学びながらルールを作り、ユーザーの方々とも「ここまでならいいよね」とか、「これはやめて欲しいんだ」とか、コミュニケーションを取りながらバージョンアップさせていきたいですね。
 
<編集後記>
サービスインから1年ほどであっという間にスマートフォン上のコミュニケーションに欠かせない存在となった『LINE』。その大ヒットの裏側には、非常に緻密で丁寧なマーケティング施策があったことを知り、非常に驚くとともに、改めて「ヒットのためのコツコツとした土台作り」や「ファンから学ぶ姿勢」の大切さを実感させられました。ソーシャルメディア上でユーザーの声を常に観察、対話を繰り返し、即座にサービスに反映させていく姿勢は、これからの必須事項となっていくのではないでしょうか。今後のLINEが、ユーザーそして企業のプラットフォームとしてどのように進化していくのか、とても楽しみです!(SMM Lab 小川)
 
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プロフィール
舛田淳氏
NHN Japan 株式会社
執行役員 Chief Strategy&Marketing Officer
ウェブサービス本部 事業戦略室 室長
『LINE』:http://line.naver.jp/ja/
インタビュアー:藤田 和重(アライドアーキテクツ株式会社 SMM Lab)
文:小川 裕子(同上)
 
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