世界最大級のデジタルマーケティングイベント「ad:tech tokyo 2012」1日目からSMMLabが参加したセッションの内容をレポートします!
こんにちは、SMM Labの藤田です。
10月30~31日に東京国際フォーラムで開催された日本最大級の国際的デジタルマーケティングカンファレンス、第4回「ad:tech Tokyo(アドテック東京)」。
1日目はFacebook Mark D’Arcy氏と、ユニリーバ Babs Rangaiah氏のキーノートに続いて、「ソーシャルメディア」をメインテーマにしたAトラックの3セッションに参加しました。「ブランドエクイティ(資産価値)」、「マスメディア」、「SoLoMo」をキーワードに、多彩なスピーカーが語った「マーケティング」の今と未来をご紹介します。なお、本セッションには、SMM Lab運営母体であるアライドアーキテクツ株式会社代表の中村も登壇させていただきました。
[A-1]傾聴とエンゲージメント:
ソーシャルメディアでブランド・エクイティはどう創られるか
パネリスト(写真向かって右より)
廣田 周作氏
株式会社 電通
プラットフォームビジネス局 開発部
須田 伸氏
フェイスブック
マーケティングマネージャー
中村 壮秀
アライドアーキテクツ株式会社
代表取締役社長
風間 公太氏
株式会社良品計画
WEB事業部コミュニティ担当
モデレーター(写真中央)
大柴 ひさみ氏
ジャムジャパンマーケティング
マネージングメンバー
企業はソーシャルメディアを活用して「ブランド」の資産価値を高められるのか?がテーマのセッション。まずはソーシャルメディアの活用を開始して3年になるという良品計画の風間氏から、企業が「ソーシャルメディア」を活用しはじめる段階を越え、実際の運用の中で「価値」が問われる時期がきているのではないかと疑問が投げかけられました。
アライドアーキテクツ 中村が「ソーシャルメディア活用は短期的に効果が見え難い。最初の半年位は投資になる中で、どう価値を見い出していくか、辛抱が続く。長期的な視点が重要」と答えると、電通 廣田氏は「代理店としては、今まではキャンペーンごとなど短期的なお手伝いだったが、ソーシャルメディアをブランドの資産にしていくには長期的なお付き合いが出来る信頼関係が作れるかが重要」だとし、Facebook 須田氏は、「Facebookにおいてビジネスは、マーケティングが発明される前の地元コミュニティーでの会話に立ち戻るというのがコンセプト。ソーシャルメディアが何かを理解するためには、実際に家族や友だちと会話すること。」と語りました。
「ソーシャルメディアを特別な新しいものととらえて、そこだけで通じるような数字を作っても、経営層にはなかなか伝わらない。メディアの価値として伝えていくことが必要。無印良品では今まで紹介出来なかったようなニッチな商品でも、ソーシャルメディアでは会話のきっかけになり、実際Twitterで紹介した商品をきっかけに来店してくれるお客様も増えている。どんな投稿をすれば会話が生まれるのかを徹底的に考えることが必要だと思う。経験的にはコンテンツ7割、タイミング2割、コピー1割という所感で、テクニックではなく何を語るかというコンテンツが一番大切。また、ソーシャルメディアではポジティブな声が集まりやすいので、それを社内で共有することでモチベーションの喚起が出来ている。」(風間氏)
「ワイングラスブランドのFacebookページでは、いきなりワイングラスの話ではなく、まずはワインのある日常生活の豊かさを提案し続けていったことが結果的に共感を得て、有料セミナーに足を運んでくれるようなファンが増えている。また一人で始めた小さなエプロンショップがファンを巻き込んで成功している事例もあるように、ソーシャルメディアは規模の大きさではなく、得た共感の大きさが成功に繋がっていく。」(中村)
「ソーシャルメディアでの訴求は一方方向ではなく双方向。発信者の振る舞いや想いが正直に伝わっていく。押し付けるのではなく愛されるための発信が大切。どこにどういうメッセージが伝わったか。指標がない、あるいは指標が多すぎるというのが課題だと言われているが、逆にいろいろあるから、目的に沿って指標を持ちやすいのでは?ずっと同じ指標を追うのではなく、ステージによって指標を変えていくというのも必要だ。」(廣田氏)
「作り込み過ぎたコンテンツよりも気軽な会話の積み重ねが大切。そして聞く力が求められている。コミュニティを日々運営していると自分たちのブランドへのユーザーの気持ちが行間から感じられるはず。これからのマーケターは行間部分、気持ちの距離、などを商品開発や、ビジネスのオペレーションに活かしていくことが大切になる。」(須田氏)
「アメリカではもう“ソーシャルメディア”は特別なものではない。オンライン・オフラインの垣根が無くなってきてシームレスに感動を分かち合う時代になった。だからこそ人間が持っている“人とシェアしたい”、“一緒に楽しみたい”という根源的な欲求を考えることが、コンテンツのヒントになるはず。」(大柴氏)
ソーシャルメディア活用によってブランド「資産」を構築していくには、自らの哲学に立ち返り、「何」を語るのかを考えることこそが重要。あらゆるメディアを駆使して獲得したブランドイメージは、消費者の期待を超える経験を提供した時に、ブランド価値の向上が実現すると締め括られました。
[A-2]
マスメディア×ソーシャルメディア:
「マス」「ソーシャル」から生まれる最適キャンペーンとは
パネリスト(写真向かって右より)
鹿毛 康司
エステー株式会社
執行役 宣伝部長 / クリエイティブ・ディレクター
原 浩生
日本テレビ放送網株式会社
編成局メディアデザインセンターメディアクリエイション部主任
長澤 秀行
株式会社サイバー・コミュニケーションズ
代表取締役社長 CEO
坂井 康文
サントリーホールディングス株式会社
広報部デジタルコミュニケーション開発部長
モデレーター(写真一番左)
徳力 基彦
アジャイルメディア・ネットワーク株式会社
代表取締役社長
テレビ番組制作、ネット広告配信、メーカー広報、メーカーCM制作というそれぞれの立場から、ソーシャルメディアとマスメディアの関係が語られたセッションでした。
まず、ソーシャルメディアの普及による変化について、サントリーの坂井氏が「ソーシャルメディアのおかげで、世の中のコミュニケ—ションが活性化しているのではないか?」と投げかけると、日テレの原氏は、「テレビ番組がソーシャルメディア上でイベント化され、一緒に盛り上がるというテレビの新たな楽しみ方が生まれてきている」と語り、エステーの鹿毛氏は「CMだけで完結せず、ソーシャルメディアで調べたり話したりされるように、CMの作り方が変わってきている」と話しました。
鹿毛氏が「以前はオンエアの後に井戸端会議で話されていたような会話が、今はソーシャルメディアで語られている」と言うと、CCI 長澤氏は「さらにスマホやタブレットなどによって放送後ではなく、リアルタイムでソーシャルメディアが併用されるようになり、今までブラックボックスだったテレビに関するデータが可視化されてきた。マスメディアが話題の基点となり、ソーシャルメディアによってクチコミが広がっていく構造が見えてきている。そしてキャズムを超えたソーシャルメディアはリアル店舗の棚押さえにも影響を及ぼすようになってきている」と語り、サントリー坂井氏からはマスメディアの補完として、ソーシャルメディアを活用したソフトバンクとのコラボ施策の事例が紹介されました。
また、マスメディアとソーシャルメディアをどのように組み合わせるのかという議論では、鹿毛氏が手書きメモを公開し、「消臭力」のCMが好感度No.1に選ばれるまでの制作の裏側にある緻密なプランニングを紹介しました。
これを受けて原氏が「テレビ局も強いクリエイティブをしっかり作らなければならない。番組の中で完結するだけでなくて、メディアデザインやコミュニケーションデザインとして、ただのリーチメディアとしてだけではなくトータルデザインに関わっていかないと。」と語ると、長澤氏は「これからは外部の人間もどうトータルプランニングに入っていくか?ストーリー設計、解析ができない限り入り込めないのでは?クライアントがどこまで中でやるのか、どこを外に出すのか?」と問いかけました。
「トータルプランニングには部署間の連携が必要だが実際には中々難しいのでは?」(徳力氏)という質問に、坂井氏は「現場レベルの繋がりの中での成功体験が大切」と答え、デジタルな肌感を持つ若い世代への期待を語りました。
原氏からは、「マスメディアがファンタジーであるとしたら、ソーシャルメディアはもっとリアルで生々しいもの。二つの連携を考えると、フィルタリングせずにオンエアするぐらいのチャレンジが必要かもしれない」と、今後の課題も挙げられました。
「ソーシャルメディアというとテクニックの話になりがちだが、実は女性を口説くのと一緒でハートの問題。人を口説くのに手の内を明かす必要はない。基本はコミュニケーション」という鹿毛氏の発言に会場から笑いが起きる場面もあり、マスメディアとソーシャルメディアの融合は、まだまだ手探りではあるものの、着実に新たな段階に来ていることを予感させる内容でした。
[A-3]
『SoLoMo Marketing』:
SoLoMoマーケティングとは何か、これからのマーケティングをどう変えるのか?
パネリスト(写真向かって右より)
高柳 直明
全日本空輸株式会社
業務プロセス改革室 イノベーション推進部 サービスイノベーションチーム
佐藤 俊介
サティスファクションギャランティード プライベートリミテッド
最高経営責任者
池田 紀行
株式会社トライバルメディアハウス
代表取締役社長
井口 尊仁
頓智ドット株式会社
取締役会長 兼 CMO
モデレーター(写真一番左)
野口 龍彦
株式会社mediba
広告事業本部 広告事業管理部 部長
Social、Mobile、Local(Location)という3つの頭をとった「SoLoMo」というキーワードは、アメリカではすでに実践段階に入っていますが、日本ではまだ注目され始めたばかりのため、まずはSoLoMoとはなにかという定義からスタートしました。モバイル先進国であり、高速回線が一般化している日本では、ユーザーはすでに意識せずともSoLoMoを実践しているともいえる中で、企業のマーケティングはどう変わるのか?どうやって活用していくのかがテーマでした。
トライバルメディアハウスの池田氏は、現状のSoLoMoはチェックインクーポンによる来場、来店促進が主流になってしまっていて、販売促進の側面ばかりが注目され、このままだと面白くない世界になるのではと危惧。そもそも友人や知人のチェックイン情報が共有・拡散されるパワーがあるのかということ自体が疑問であり、なぜユーザーがスマホでチェックインするのか?その行動の裏にある思い、動機、文脈を汲み取ることが必要だと語りました。
アジアを拠点にブランドビジネスを展開するサティスファクションギャランティードの佐藤氏は、「アジア諸国はまだ通信回線が遅く、位置情報を活用出来ていない状況があるが、モバイル環境が発達している日本には大きな可能性があるのではないか?」と、 日本ならではのSoLoMo活用に期待を寄せましたが、頓知ドットの井口氏はプラットフォーマーの立場から、現在の位置情報を利用したサービスは情報の共有はできるが、現実の行動を喚起するまでに至っていないと語り、ネット完結型ではないロケーションサービスの進化を課題に挙げました。
モバイルを活用した搭乗システムや自社のポイントプログラムのソーシャル化に積極的に取り組むANAでは、それぞれのサービスを融合し、新たな需要を喚起する点に期待しているという高柳氏に、池田氏は顧客IDとソーシャルのIDを紐付けるCRM的な取り組みが急速に進んでいくに従って、SoLoMoにはどれだけ実店舗に人を呼べるかというだけでない新しい価値が生まれるのではと語り、企業はソーシャルメディアとリアルな消費者行動を関連づけて考える必要があることを示唆しました。
モデレーターの野口氏は、今後はソーシャルメディアでスポットへの関心をどうやって喚起するのか?その関心をどうチェックインという行動に繋げていくのか?チェックインをするための意味付け、動機付けが、SoLoMoのマーケティング活用のポイントになっていくのではないかと結論付けました。
3つのセッションに参加して、日本でも企業のマーケティングにおけるソーシャルメディア活用が、導入段階から活用段階に進化していることを実感しました。ただ、実践的な経験が増えていく中で見えてきた課題をどう解決するかや、今後の戦略・戦術といった展望をどう考えるかといった、より具体的な行動が求められ始めている今だからこそ、実は本質に立ち返る必要があることを考えさせられました。
キーノートはじめ各セッションで度々耳にした「Authentic=本物」というキーワードは、コミュニケーションがフラットで透明になったソーシャルメディアの世界で、企業がマーケティングしていくために一番必要なことを端的に表現していると思います。商品・サービスは元より、ブランドの存在意義から消費者との関係性まで、企業活動の全てにおいて「Authentic=本物」であるということを、改めて考えるヒントがあったAトラックの3セッションでした。
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