ソーシャルメディア・マーケティング(以下SMM)に積極的に取り組んでいる企業の担当者に、現場でのSMM活動について聞くインタビューシリーズ【企業担当者に聞くSMM最前線】。今回は、化粧品通販を手掛ける株式会社アイムの担当者に、Instagramの投稿写真をECサイトのコンテンツとして活用するマーケティング施策について聞きました。
株式会社アイム HC事業部 事業部長 兼 国際部 部長
山下 省三 氏
スキンケア化粧品シリーズ「ライスフォース」などの通販を手掛けている株式会社アイムでは、近年、UGC(User Generated Contents=ユーザー生成コンテンツ)を活用したマーケティング施策に力を注いでいると言います。そこで今回は、Instagramに投稿された「ライスフォース」に関連する写真をECサイトのコンテンツとして利用することで、コンバージョン率(以下CVR)や直帰率の改善に成功した事例について、株式会社アイムの山下省三部長に詳しくうかがいました。
UGCは「消費者のリアルな体験や感想が伝わる」
「RICE FORCE(ライスフォース)」国内ECサイト
http://www.riceforce.com/
——通販事業の概要と取扱商品について教えてください。
山下氏:当社はスキンケア化粧品シリーズ「RICE FORCE(ライスフォース)」を中心に、化粧品、サプリメント、食品、美容雑貨などの通販を手掛けています。国内事業が中心ですが、2010年からは海外への販売も強化しており、各国のリゾートホテルやスパのアメニティとして「ライスフォース」を展開しているほか、現地の化粧品カウンターや越境 ECによる販売も行っています。現在は世界51カ国への出荷実績があります。越境ECは多言語対応のECサイトやFacebookページなどを活用して海外のユーザーを取り込んでいます。
——近年はUGCを活用したマーケティング施策に力を入れていると聞きました。取り組みの内容を具体的にお聞かせいただけますか。
山下氏: Instagramに投稿された「ライスフォース」に関する写真を収集し、「ライスフォース」のECサイトに掲載しています。ユーザーが撮影した写真を、ECサイトのクチコミコンテンツとして活用する試みです。写真からショッピングページにリンクを貼り、購買導線も作りました。2015年11月に日本語のECサイトで開始し、2016年6月からは英語のECサイトでも同様の取り組みを始めました。Instagramの投稿写真を集める際は、特定のハッシュタッグがついた画像を自動で収集できる、アライドアーキテクツの「ブツドリソーシャル」を利用しています。
インタビュアー:
アライドアーキテクツ株式会社 マーケティング事業本部
「ブツドリソーシャル」プロダクトマネージャー
久保田 潔
導入ページの直帰率が115%改善。 ヒートマップにも明らかな成果
——UGCを開始した狙いは。
山下氏:ユーザーボイスは通販の古典的な販促手段ですが、企業が宣伝用に制作したクチコミではなく、消費者が生活の中で撮影した写真を使うことで、より高い販促効果を発揮するのではないかと仮説を立てました。UGCは消費者のリアルな「体験」や「感想」が伝わりやすいのが特徴です。消費者に商品の消費シーンを想起させたり、共感を呼んだりしやすいのではないでしょうか。
また、UGCを活用することで、ECサイトに掲載する写真の制作コストを従来よりも抑えることが出来ます。スマートフォンの普及に伴い、ECサイトにおける画像の重要性が高まる中、撮影コストを下げつつ、魅力的な写真を増やしていけるUGCは非常に有効だと考えています。
——UGCをECサイトに取り入れたことで、売り上げなどへの成果は上がっていますか。
山下氏:日本語のECサイトは、ABテストなどのLP改善施策を重ねる中で見えてきたUGC活用の仮説がうまく当たり、実施前の約1.6倍に高まりました。英語のECサイトもCVR以外に直帰率が115%改善するなどの効果が出ています。
「ライスフォース」の海外向けECサイト(左)と同ページのヒートマップ(右)
ページ下部のUGC掲載部分が赤く、注目度が高いことが分かる
例えば、英語のECサイトのヒートマップ分析を実施したところ、Instagramの投稿写真を掲載した場所は、他の場所と比べて非常に良く閲覧されていることがわかりました。写真は言語の壁を超えますから、商品のことを海外の消費者に理解してもらう上で、Instagramの投稿写真はとても有効だと感じています。
掲載写真のクリック率を計測し、販促効果を最大化
——Instagramに投稿された、さまざまな写真の中から、ECサイトに掲載するものを選ぶ際の基準を教えてください。
山下氏:集めた写真の中から、ブランドイメージに合致したものを選び、用途に応じて最適な写真を掲載しています。ECサイトに掲載した写真のクリック・スルー・レート(以下CTR)などを個別に計測し、販促効果を分析しながら、写真の差し替えや配置替えを随時行っています。「ブツドリソーシャル」はCTRの計測や、写真の差し替えなどを管理画面で操作できるため、こうした柔軟な施策が実現しました。たくさんの写真を低予算で収集し、効果測定を行いながら最適な写真を選択できることは、「ブツドリソーシャル」の大きなメリットだと思います。
——Instagramの投稿写真を使用する場合、著作権はどのようにクリアしているのでしょうか。
山下氏:例えば、「ライスフォース」に関する写真をハッシュタグ付きで投稿してもらうキャンペーンを行い、事前に二次利用の許可を得た上で写真を収集することもあります。キャンペーン以外では、インスタグラム上に魅力的な写真があれば、投稿者に許可を取って使用します。
UGCは越境ECでも効果を発揮
——海外展開にも力を注いでいらっしゃいますが、越境ECにおけるUGCの可能性については、どのように分析されていますか。
山下氏:「ライスフォース」の化粧品を知らない外国人に商品の魅力を知ってもらうためには、ECサイトを訪問したユーザーに、少しでも長くサイトに滞在してもらうための仕掛けが非常に重要だと考えています。その点で、UGCは直帰率の改善に役立っていいますから、効果的なのではないでしょうか。繰り返しになりますが、写真であれば言語に関係なく、商品の利用シーンを伝えることができますから、越境ECでも効果を発揮すると思います。
——英語以外のECサイトにInstagramの写真を活用する計画はありますか。
山下氏:現在、各国向けに展開している越境ECのサイトの再構築を検討しており、将来的には英語のサイト以外にもInstagramの写真を活用する可能性はあります。
——「ライスフォース」の越境ECにおいて、ECサイトのコンテンツ作りで工夫していることを教えてください。
山下氏:海外向けのクリエイティブの制作は、代理店を通じて現地のクリエイターに依頼しています。現地の消費者のニーズを理解しているクリエイターが制作した方が、成功確率が高いと判断したためです。ただ、これまでたくさんの失敗も経験してきました。どんなクリエイティブが現地の消費者に受け入れられやすいのか、また、どの媒体に出稿すれば効果が高いか、試行錯誤の連続です。アジアでは日本製の化粧品は比較的人気が高いですが、それ以外の地域、特に欧米の消費者に日本の化粧品を買ってもらうのは簡単ではありません。そうした現状を打破する一つの方法として、UGCが有効なのではないかと考えています。
——最後に、UGCを活用したマーケティング戦略の今後の計画についてお聞かせください。
山下氏:現在、Instagramの投稿写真はPCサイトにしか掲載していませんが、今後はスマートフォンサイトにも積極的に活用していく計画です。スマートフォンのECサイトでは、文字よりも写真が重要です。UGCをスマホサイトにも活用することで、一層高い効果を発揮するものと期待しています。また、将来的には、Instagramに投稿された画像をFacebook広告などの素材として活用するなど、さらなるUGCの可能性を探っていきたいと思っています。
<プロフィール>
山下 省三 氏
株式会社アイム
HC事業部 事業部長 兼 国際部 部長
株式会社アイム「RICE FORCE」ブランドサイト
http://riceforce.net/index.html
「RICE FORCE(ライスフォース)」国内ECサイト
http://www.riceforce.com/
「RICE FORCE(ライスフォース)」海外向けECサイト
http://en.riceforce.com/
インタビュアー:久保田 潔
アライドアーキテクツ株式会社
マーケティング事業本部
「ブツドリソーシャル」プロダクトマネージャー
記事構成・執筆:渡部 和章
ライトプロ株式会社
http://writepro.co.jp/
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「ブツドリソーシャル」の詳細&お問合せはこちら
https://www.aainc.co.jp/service/vtdr/
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