ワコール 動画コンテンツ

メディア接触環境の変化や5Gの到来などを背景に、動画コンテンツに対する需要が高まる中、デジタルマーケティング領域でも「動画化」の動きが加速しています。一方、こうした「動画化」については、コストやリソース面から躊躇する企業も少なくありません。

アライドアーキテクツが2020年に実施した調査によると、97%の企業が「動画の重要性が増している」と認識している一方、「現在動画を活用している」企業は28%に留まっています。「一度も動画を活用したことがない」企業も約40%にのぼり、動画は大事だと分かっているけれど、制作も大変でなかなか踏み出せない実態が浮かび上がってきます。

そこで今回は、認知~ファン化まで、マーケティングファネルの各フェーズにあわせて「動画」を上手に活用している株式会社ワコールの原敬寛氏に、目的別動画の制作方法や制作時の注意点、制作後の活用方法やKPI設定など、動画活用を成功させるためのポイントを詳しく聞きました!

動画は「目的」ではなく「手段」

-ワコールがマーケティングに「動画」を活用する理由を教えてください。

動画はあくまでも弊社のマーケティング上の「目的」を達成するための「手段」の一つと捉えています。動画を活用することそのものが「目的」になってしまうのは本末転倒です。目指すゴールによって、動画によるコミュニケーションの方が適しているなら動画を活用しますし、静止画でも十分に伝わるのであれば静止画でもよい、というのが基本的な考え方です。

例えば、弊社商品の丁寧な縫製工程を伝えたい場面では、静止画よりも動画の方がお客様への理解も促進しやすく、視覚的にインパクトもあるので、動画コンテンツを活用しています。

一方で、運用型のデジタル広告では追う指標によっては動画よりも静止画の方が適している場合もあります。動画も静止画も両方試してみて、静止画の方が効率が良ければ当然そちらに予算を寄せていきますし、動画の方が良い場合も同様です。

マーケティングにおける動画活用の第一歩として、まずは目的を明確化すること、そのコミュニケーションでどんな状態の人にどんな変化をもたらしたいのかをきちんと事前に描いておくことが大切だと考えています。

認知~ファン化まで、目的別動画活用方法

-目的別に、動画をどのように活用しているか教えてください。

弊社では、認知~ファン化/推奨まで、マーケティングファネルの各フェーズにあわせて動画を活用しています。

目的とコンテンツ ファネル

(1)認知:商品/サービスを知り、興味を持ってもらう

認知/興味フェーズでは、まずは「商品/サービスを知ってもらい、興味を持ってもらう」ことが目的ですので、ブランドイメージや世界観が伝わる動画を制作、サイトへの埋め込みやWEB広告などに活用しています。しっかりと認知や興味を取ることが目的ですから、動画のクオリティにはこだわり、広告会社などと一緒に、丁寧に制作しています。

KPIとしては、「インプレッション数」「再生回数」「ユニーク視聴者数」など「どれだけ見られたか」も見ていますが、予算規模によっては「認知リフト」「検索リフト」「広告想起率」などもきちんと測るようにしています。見られるだけでは十分でなく、その上でどんな態度変容を促したのかが重要だと考えています。

動画・CMはこちらから
https://wacoal.gallery.video/

(2)比較検討:商品/サービスの価値を知り、判断してもらう

比較検討フェーズでは、弊社の商品の価値を知り判断してもらうことが目的ですので、検討してくださっている方の背中を押すような商品説明動画を制作しています。既に興味のあるお客様が対象になるので動画のクオリティは一定程度を保てればよいと思っており、テンプレートを用いて簡単に動画を制作できるツールを利用し、インハウスでの動画制作にチャレンジしています。ツールを使うことで、社内の誰が動画を作っても一定以上のクオリティが担保でき、費用を抑えて制作できることが魅力です。

KPIとしては、施策によって異なりますが、「平均再生時間/率」「滞在時間」「エンゲージメントスコア」「好意度リフト」「EC遷移」「店舗検索遷移」「購買意向リフト」などを見ています。

  
動画が埋め込まれているサイト: https://www.cw-x.jp/spobra/navi/res_r03.html
 

(3)ファン化・推奨:商品/サービスを通してもっと好きになってもらう

ファン化・推奨フェーズでは、ワコールのことをもっと好きになっていただけるような企業活動紹介動画、啓発動画、How To 動画などを制作しています。

KPIとしては、「エンゲージメント率」「シェア数」「平均再生時間/率」「サイトの滞在時間」「エンゲージメントスコア」「好意度リフト」などを見ています。

例えば、弊社ではファン施策の一つとして「大人の工場見学」というサイトを公開、ワコール広報・宣伝部が「普段は見られない工場の内部」を取材してお客様に工場の様子や働く社員のインタビューをお届けしておりますが、このサイト内にも動画を埋め込んでいます。

ブラジャーが出来上がるまでの過程はほとんどが手作業であり、その職人の技をお伝えしたいのですが、静止画だとどうしても内容が伝わりづらいのです。例えば「型紙に沿ってカッターを走らせます」などテキストでお伝えしてもあまりイメージが沸きません。一方で、動画を活用すれば「こんなに細やかで繊細な作業なんだ」と一目で理解いただくことができます。

KPIとしては、このサイトの滞在時間や埋め込んだ動画のエンゲージメントスコアを見ていますが、ヒートマップを見ると、ユーザーは動画を埋め込んでいる箇所に目を留めており滞在時間の向上に寄与していることが分かりますし、またエンゲージメントスコア(一視聴あたりの平均視聴完了率)は99%で、閲覧した方がほぼ最後まで見てくださったというデータが出ています。

実際に取材に訪れたメンバーが驚いた工程をiPhoneで撮った簡単な動画ではあるのですが、サイトを見に来ていただいた方の目に留まり、また最後まで見ていただけるコンテンツとして、サイトのKPI改善に大きく貢献しています。

大人の工場見学 ヒートマップ
(左)「大人の工場見学」サイト内に埋め込まれている動画 (右)「大人の工場見学」サイトのヒートマップ:赤枠の箇所に動画が埋め込まれており、熟読されていることが分かる

成果につながる動画を作るためには、事前のオリエンテーションが大切

-実際に動画を制作する際のポイントを教えてください。

まず大切なのは、動画を制作する前にきちんと「動画を作る目的」「訴求のポイント(動画を通じて何を伝えたいのか)」、「ターゲット」を明確にすることです。訴求のポイントも可能な限り一つに絞り、ターゲットも「20~30代女性」など広くするのではなくもっと具体的にした方がよいのではないでしょうか。

また、動画をどこでどのように活用するかを踏まえて、媒体に適した動画を制作することも大切です。例えばYouTube広告で配信する場合と、Twitter広告で配信する場合で、適切な動画の画角(横長/正方形/縦長)や動画の尺(長さ)、動画に音声やテロップが必要か?などの条件が変わってきますから。各媒体から、「どのような動画が適切なのかというテクニック」が発信されているので、まずはそれに従ってみるのも良いと思います。

外部の広告会社に依頼するときも、このようなポイントをオリエンテーションにてしっかりと伝えて、お互いの理解をすりあわせておくことが大切です。ただし、「こんな動画を制作してほしい」などとあまり細かく指定しすぎると、どこかで見たことがあるような表現や内容になってしまうのかな…とも思います。目的のすりあわせや、媒体・クリエイティブのルールは必要ですが、内容そのものについて縛りすぎないように気を付けています。

ワコール 原氏
株式会社ワコール 広報・宣伝部 WEB・CRM企画課 原 敬寛(はら たかひろ)氏

動画活用の「成功事例」「失敗事例」

-今までの動画活用における「成功事例」「失敗事例」を教えてください。

まず成功事例としては、検索ボリュームの多いコンテンツを「How to 動画化」したことで、検索対応を強化できていることです。

例えば「ブラ 洗い方」「バスト 測り方」でGoogleの「動画」カテゴリの検索上位に表示できており、「バストサイズの測り方」の動画はオーガニックで66万回以上再生されています。

検索エンジン対策として、以前は「テキスト」ページだけが対象になることが多かったですが、今は「動画」や「画像」ページでの検索対策も必要だと思います。また、そもそもYouTube内で検索をしているユーザーも多くいますので、そのニーズに上手く沿うことができていると思います。

再生数

リアルイベントを動画化することで、時間や場所に関係なく多くの方にイベントをオンラインで体感していただけるようになったのも成功事例の一つです。

例えば、以前弊社のWebコミュニティ「MyWacoal会員」向けに工場見学を疑似体験できるリアルイベントを開催したのですが、その様子をダイジェスト動画にしてサイト内で発信しています。実際に参加いただいた方がとても楽しんでくださっている様子を動画で配信することで、イベントの臨場感や様子をよりお伝えできるだけでなく、参加者のリアルな反応や声は従業員のモチベーションアップにもつながっています。

一方で、失敗事例としては「動画施策」に関する予算確保の仕方が挙げられます。これは動画を制作する企業にありがちな失敗だと思うのですが、「クオリティの良い動画を作りたい」と思うあまりに制作費ばかりに予算を使ってしまい、配信費にお金をかけられなくなってしまうことがあります。「せっかく良いものを作っても、見てもらえない」という状況を生まないために、やはり予算の使い方は事前にしっかり決めておくべきですね。

また、動画の目的を考える際に、KPIもしっかり設定しておく必要があります。もともとはECへの遷移が目的だったのに、再生数を稼げたことで満足してしまう…という失敗もありがちなのではないでしょうか。KPIを設定、動画公開後の効果をきちんと測定した上で、次回の改善につなげる…正しい指標でトライ and エラーを繰り返していくことが大切です。

今後は、双方向性のある取り組みにも挑戦

-今後、動画を活用してやってみたいことを教えてください。

今後は、動画を一方的に発信するだけでなく、オンラインコミュニケーションツールを通じて双方向性のある取り組みにもチャレンジしていきます。オンライン工場見学なども面白いかなと個人的には考えています。今後もマーケティング施策における手段の一つとして、動画を上手に活用し、お客様とのコミュニケーションを深めていきたいです。

-原さん、ありがとうございました!


今後の動画市場の規模感は?、動画制作にはどれくらいのコストがかかる?、外部に頼むべき?自社で作るべき?など、動画を活用したマーケティング施策に関する「あるある質問」についてはこちらの記事にもまとめていますので、あわせてご覧ください!
動画を活用したマーケティング施策について、よくある質問10個に答えてみた!【マーケティング施策の「あるある」一問一答】