UGC 増やし方

企業ではなく、一般生活者によって制作・生成されたコンテンツであるUser Generated contents = UGC。
特にInstagramの台頭と共に、SNSなどに投稿された写真や動画はUGCとして注目され、様々な企業によってマーケティング施策に活用されています。

今回はこのUGCについて、改めて「なぜ注目すべきなのか」、どんな価値があり、どのように活用していけばいいのか、について考えていきたいと思います。

「広告が嫌われている」時代こそ、重要性が増す「UGC」

インターネット通信環境の改善、接触デバイスの多様化と個人化。生活者が接触する情報は増え、同時に生活者がデジタル上で広告と接触する機会は増え続けています。

また、広告面を提供するデジタルメディアも、広告配信面や対応クリエイティブの種類、ターゲティング機能など、様々な改善を行い、生活者によりたくさんの広告を届ける努力をしています。

一方、広告施策において新規の手法や媒体が増えることにより、広告施策を設計するマーケターの業務は煩雑化。特にSNS広告など新しい広告メディアが登場し、ますます「メディア」ごとに適した施策設計が求めらるようになりました。
しかしながら現状は、全ての広告施策において、適切なコミュニケーション設計が行われているとは言えません。

その結果、近年、特にデジタルマーケティングの分野において「広告は嫌われている」という言葉を多く目にするようになりました。

一般社団法人 日本インタラクティブ広告協会(JIAA)が発表した調査でも、メディア別の広告イメージについては、特にインターネット広告において「しつこい・不快」「邪魔な・煩わしい・うっとうしい」「いかがわしい・怪しい」など、ネガティブな印象の回答が目立っています(※1)。

そして、こうした広告に嫌悪感を抱く生活者の間で、信頼できる情報としてその重要性が高まっているのが、非広告コンテンツである「SNS上でのリアルな口コミ=UGC」です。

例えば、自分が知りたい情報をハッシュタグを活用してInstagramやTwitterの中で検索したり、その口コミを後押しとして購入を決定したりする生活者は増加しているという調査結果が出ています。
生活者にとってUGCは広告よりも信頼しやすく、商品購入やサービス利用のきっかけを作るコンテンツだと言えるでしょう。

とはいえ、インターネット広告施策の全てが嫌悪感を持たれているわけではありません。

ボイスコム株式会社(東京都千代田区)が行なった調査によると、インターネット広告が表示された際に行なったことは何ですか?との問いに対し、「意図的に広告をクリックした」という回答者は2020年3月時点で、28%でした。また、広告について調べた(12.4%)、広告の商品を購入・利用した(5.8%)など、この結果からは必ずしも広告そのものが嫌われているというわけではないことが推察されます(※2)。

大切なのは一貫して、「生活者が嫌悪感を持たない、生活者の立場にたった広告施策設計」です。この点でも、生活者の立場から生成されたコンテンツであるUGCは大いにその力を発揮するでしょう。

今、UGCに注目すべきなのは、こうした生活者にとって信頼できる口コミコンテンツとしてのUGCニーズの高まりと、企業のマーケティング活動への有用性の高さがあるためなのです。

マーケティングコンテンツとして価値を発揮する「UGC」

では具体的に、UGCにはマーケティングコンテンツとしてどんな価値があるのでしょうか。

①クリエイティブ量の担保

Instagramが台頭したことにより、ソーシャルメディア上には毎日世界中で生活者によるハッシュタグを活用したUGCがたくさん生まれています。
一方、マーケティング施策の多様化や煩雑化によって、コンテンツの量と種類の担保はマーケターにとって重要な課題となっており、UGCはこの課題を解決するのに役立つものとして注目されています。
実際、SNS広告を中心としたデジタル広告のクリエイティブや、広告LP、ECサイト、メルマガや同梱物のコンテンツなど、様々な場面でUGCを活用する企業が増えています。

②生活者目線のクリエイティブ

また、UGCは実際に商品を使ったりサービスを体験したりした生活者のリアルな口コミが現れたものです。
広告がもつ「押し付け」に嫌悪感を抱く生活者が増える一方で、UGCの「生活者目線」という特徴は、受け入れられやすく、信頼できるコンテンツという価値をもっています。特にSNS広告においては、フィードに馴染みやすく、嫌悪感の少ない広告クリエイティブとして活用されています。

③商品開発や施策改善のヒントになる

加えて、UGCを商品開発や、マーケティング施策の改善に活用する企業もみられます。例えば、自社の商品に対して企業が感じている価値と、実際の購入者が感じる価値との間にギャップがあるという現象が起きることは少なくありません。また、商品の活用方法など、企業側だけではその発想に限界があることもあります。

UGCは、生活者が本当に価値を感じていること、商品を実生活のなかでどう使っているのかというリアルな心理や行動を知る大きなヒントとなります。
特に近年注目を浴びているD2C型のビジネスモデルでは、UGC活用を積極的に取り入れ、「顧客の声」を起点として商品開発に乗り出す企業も出ています。

SNSを重視し、顧客の声を起点に商品開発からコミュニケーションまでを行うD2Cコスメパイオニア・DINETTEのインタビューはこちらから。
D2Cは原価度外視の初期投資がカギ。DINETTE尾崎氏が語る新しいコスメブランドの形とは?

「UGC」を活用したマーケティング事例

続いて、実際にUGCを活用したマーケティング施策の事例をご紹介します。

事例①Instagramフィードに馴染むUGCを活用したUGC広告でCTR、CPAが改善|株式会社バルクオム

メンズコスメブランドとして成長を続けるバルクオム社。同社ではInstagram広告のクリエイティブにUGCを活用しています。

同社がUGCを活用した広告クリエイティブに魅力を感じる1番の理由は「フィードに馴染むクリエイティブ」であることだと言います。
成果もでており、改善前の「プロダクトの洗練性を訴求するクリエイティブ」とUGCを取り入れた改善後のクリエイティブでは、CTRが165%、CVRは407%改善し、CPAは約1/3に削減されました。

またUGCの活用によって効率のよい、いわゆる「勝ちパターン」のクリエイティブを探すためのPDCAをスピーディーに回すことができ、その勝ちパターンをアレンジしてさらなる効果改善にも繋げることにも成功しています。

バルクオム LP UGC
画像参照:バルクオムの事例で解説!Instagram広告成功のための3つのキホン|Letro
同社では効果のよかったUGCを活用したクリエイティブにハッシュタグ風のテキストを加えCTR110%、CVRは約1/2に削減した。

同社の成功事例から考察する、Instagram広告施策を成功に導く秘訣についてはこちらの記事をご確認ください!
バルクオムの事例で解説!Instagram広告成功のための3つのキホン|Letro

事例②UGCとキャラクターの融合で顧客接点を創出|損害保険ジャパン株式会社

大手保険会社の損害保険ジャパン株式会社ではオリジナルキャラクターのジャパンダを軸に、UGCを活用したInstagramアカウントを運用しています。

同アカウントでは、開設以来様々なキャンペーンを実施。キャンペーンで寄せられたハッシュタグ投稿をストーリーで紹介するなど、UGCを起点としてフォロワーと積極的なコミュニケーションに取り組んでいます。

損保ジャパン Instagramアカウント
同社のInstagramアカウントでは、ストーリーズやフィード投稿で積極的にUGCを活用し、フォロワーとの交流に注力している。

UGCとキャラクターの融合という新しさに加え、同社のブランドイメージを伝えていくような投稿テーマを軸に活発なコミュニケーション設計で、効果的なブランド訴求に成功している事例です。

同社が行うInstagram活用戦略の詳細については、こちらのインタビューをぜひご覧ください!
【ジャパンダをファンとの架け橋に】損保ジャパン日本興亜が実践する、Instagramを通じた新たな顧客コミュニケーション戦略とは?

このほかにも、InstagramにUGCを活用している企業アカウント事例をこちらでご紹介しています。
UGCを上手に活用したInstagram企業アカウント事例10選!+活用方法も解説!【クリエイティブテック・ノウハウ公開】|Letro

事例③EC上の「ついで買い」を促進させるUGC活用法|株式会社鈴木ハーブ研究所

ハーブ由来の成分を配合した化粧品の開発・販売を行う鈴木ハーブ研究所では、同社のECサイトをはじめとして、積極的にUGCを取り入れています。

なかでも、ECサイトで商品購入後の顧客に対して表示する「あわせ使いのご紹介ページ」にUGCを掲載。購入商品をおすすめ商品とを併用しているユーザーの声を掲載することで、クロスセルの発生件数を最大2倍にすることに成功しています。

同社がこの取り組みを始めたのは、「複数商品を併せて使ってくれているお客様の声による訴求は、クロスセルの促進につながる」という仮説があったためです。

この取り組みの成功によって、同社はその仮説の正しさとUGCの有効性を再認識。今後は既存顧客の継続率向上を目的としたコミュニケーションコンテンツにもUGCを活用していきたいと語っています。

同社の取り組み事例の詳細はこちらから。
EC上の「ついで買い」発生件数が2倍に!クロスセルを促進するUGC活用法とは?|Letro

このほかにも、顧客に商品を送付する時の同梱物や、顧客に送るメルマガに活用するなど、UGCはマーケティングコンテンツとして様々な使い方をすることができます。煩雑化するマーケティング施策設計のまさに救世主のような役割を担うことがUGCには可能なのです。

ニューノーマル時代のマーケティングの鍵を握るのも「UGC」?

2020年、世界中で新型コロナウイルスによる感染症が流行。あらゆる場所で「人」や「モノ」の移動が制限され、我々の生活や意識、価値観は大きく変わりつつあります。

アライドアーキテクツが実施した消費者アンケート調査でも、コロナショックを機に生活者の意識や行動の変化をみることができます。

(※)調査概要
調査名称 : 新型コロナウイルス感染症拡大以降の「新しい生活様式」における、消費者のSNS利用実態調査
調査主体 : アライドアーキテクツ株式会社
調査時期 : 2020年7月11日~7月19日
調査方法 : モニプラ(アライドアーキテクツ株式会社)でアンケート調査を実施
調査対象数:4,069名(アンケート回答完了人数)
※設問ごとの有効回答数を「n=」で記載しています。
※本調査の内容を転載・ご利用いただく場合は「アライドアーキテクツ株式会社調べ」とクレジットを記載してください。

例えば、90%のユーザーがコロナ禍を経た現在、これまでと同じ時間SNSを利用、もしくはSNSの利用時間が増加していると回答しています。

ニューノーマル コロナ 調査

また、SNSの利用時間が増えたと回答したユーザーは、「趣味・好きなことに対する情報収集:59%」、「世の中のニュースのチェック:59%」、「友人との会話:24%」を目的としてSNSを活用していることがわかりました。

さらに、「外出する時間を減らすために、事前にSNSでサービス内容やクチコミを検索・収集することが増えた:30%」、「通販やデリバリーを利用する機会が増え、サービス内容・クチコミ・申込をSNSを通じて検索・収集することが増えた:28%」となり、ニューノーマル時代における買い物の情報収集源としてSNSを利用する生活者が増えているのです。

ニューノーマル コロナ 調査

この傾向は特にInstagramやTwitterをよく使うユーザーに多く見られました。InstagramやTwitterなど、UGC活用施策との相性が良いSNSにおいて、生活者のなかでUGCの需要が高まっていることがうかがえます。

ニューノーマル コロナ 調査

加えて、今後のSNSの利用目的についても尋ねたところ、70%のユーザーが今後SNSを「商品やサービスに関する情報収集やクチコミの検索」に「積極的に利用したい」「利用したい」と回答。

ニューノーマル コロナ 調査

60%のユーザーが今後SNSを「商品やサービスの申し込みや購買」に「積極的に利用したい」「利用したい」と回答しました。

ニューノーマル コロナ 調査

ニューノーマル時代においては、SNSは単なる「情報収集源」だけでなく、「購入の場所」としての役割を果たしていくでしょう。UGCを活用したマーケティング施策は効率的な販売促進の鍵を握る重要なものとなりそうです。

アンケート結果について詳しく解説した記事はこちらです。
4,000人の消費者データから考える、「ニューノーマル」時代のマーケティングで大切な3つのこと

そしてもう1つ、ニューノーマル時代のマーケティングで見逃せないキーワードは「LTV」です。

EC企業の中では、コロナ禍以前から顧客の新規獲得が厳しくなって来たということがしばしば言われていました。これは、インターネット広告におけるCPC(クリック単価)の上昇傾向からみても明らかです。

その中で、注目されるようになってきたのが「LTV」=顧客生涯価値の向上を重視し、1人の顧客と長く継続的な関係を築きながら売り上げをあげていくという考え方です。

特に、コロナ禍を経て生活者の実店舗利用が減少傾向にあることや、コロナショックによる不況の長期化が懸念されることから、EC企業だけではなく様々な企業などにとって、顧客接点の創出とその関係性の維持は大切になってくるでしょう。

今さら聞けない?「LTV」とは何か。なぜ重要なのかをわかりやすく解説した記事はこちらです!
「LTV」とは?~今さら人に聞けないマーケティング用語をおさらい!

この「LTV」を高めていくマーケティング施策を行う上でも、UGCを活用した施策は注目されています。

例えば、食品系D2C企業のパイオニアであるベースフード社では、中心に「顧客の声」を置くことを重視したマーケティング施策展開に注力。

顧客との接点を維持し、顧客の声を聞きながら商品やマーケティングコミュニケーションを改善して顧客体験を進化させる「運用型のマーケティング」に取り組んでいます。

同社ではUGCをはじめとした顧客の声を積極的に取り入れることで顧客との関係性を強固なものにし、さらにその熱量の高いファンから生まれるUGCをコンテンツとして活用することで、新規顧客との接点創出にもつなげています。

BASE FOOD社が取り組むマーケティング施策について詳しく知りたい方はこちらをご覧ください。
【施策の中心にはいつもお客様の声】BASE FOODから学ぶ、顧客との繋がりを生かした「運用型マーケティング」のススメ

このように、「LTV」の重要性が高まる中で、顧客のリアルな声であるUGCを生かしたブランド作りや、UGCを発生させるコミュニケーションは、LTVの向上にも寄与する施策の1つとなっています。

ニューノーマル時代のマーケティング施策の鍵を握るこの「UGC活用施策」。ぜひ、今後もご注目ください。